第3話 無事、収まるべきところ(※もふもふ)に収まりました♪ ~ 白虎神獣しょんぼり伝説 ~
「ああ、良かったぁ……パイが虎さんに戻ってくれて、本当に良かったぁ……ん~モフモフっ♪ やっぱり最高、このもふもふなしじゃ、もう生きていけないわ~♪」
『解せぬ……解せぬ。神獣、解せぬぅ……』
ほくほくの満足顔をもふもふの毛皮に埋める桃花と、しわっしわの大きな虎顔でしょんぼりする白。
とはいえ桃花の反応からして、人化したままではどうなっていたことか。変化は自由自在らしく、それはそれで凄まじい能力だが、白としては一先ず助かったというところだろう。
『ううむ、女人というのは、分からぬ……それはまあ、誰も彼もが男に傾倒する者ばかりとは思わぬが。……いや、そうか、タオファほどの気高き女人ならば、なおさら。そもそも錬丹術という、そこいらの男には成し得ぬ偉業を身に着けた女人だ、そう容易く色に溺れはせぬということか。さすが、白虎神獣の主に相応しき――』
「……むう~……」
『む? ど、どうしたタオファ。何か、気になることでもあるだろうか?』
縦に幅の広い横腹のもふもふに顔を埋めて呻く主に、虎とはいえ猫科の柔軟さで首を大きく曲げて問う白へと、桃花は答えた。
「パイとお喋りできるのは、なんだか嬉しいし、意思疎通できるのも助かるけれど……最初に出会った頃のパイも、とっても可愛かったのよねえ。まだ一か月と経っていないのに、何だか懐かしく思えて、寂しくなってきちゃうわ……。今のパイは厳格というか、神様らしいというか、何だかエライ雰囲気の喋り方だし……」
『む。そ、それはまあ、我、神獣ゆえな? 信仰、衰えたりとはいえ、名高き四神であるし。実際、エライといえば、そらエライであるし?』
「寂しいなぁ……あの可愛いパイちゃんとは、もう会えないのかなぁ……」
『……い、いやその、我、長生きでもあるし? さすがに良い歳して、誇り高き神獣が子猫のように振る舞うのも、どうかと思う、というか』
「じーっ……」
『いやあの。た、タオファさん? さすがに、その』
「…………」
『…………』
皆までは言わない桃花だが、ゆえにこそ、無言の圧力が強い。
だが、白はまさしく白虎神獣。長き時世を渡り、その一身に多大なる信仰を受けたことすらある、四神が一だ。
神たる獣の、巫山の如きに雄大なる誇り、何者にも侵せるものか――!
『みゅうみゅう♡』
「パイ、か~わ~い~い~♡」
『良いのだ、これで……これが、最良なのだ。タオファさえ、幸せであれば……我は、それで全て、良いのだっ……!』
この日、白虎神獣は一人の女性のために、誇りを捨てた。




