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手折られた花、(2)

 

 スカーレットの仕事は主に庭で行われる。子爵夫人付きの古くからいる使用人はスカーレットを目の敵にしていたが、年の近い使用人はスカーレットに同情し、好意的だった。ただそれも一部だけだ。スカーレットの美しさに嫉妬する者、意中の異性の視線を奪われて嫌悪する者が多く、異性はほとんどスカーレットに見惚れ、邪な視線を向けるので信用ならない。



 信用という意味では、子爵夫人の指示がなければ手を出さない陰湿な古い使用人のほうがあるというのが皮肉だ。


 いつも通り、見世物になりながら庭まで辿り着く間、屋敷が慌ただしかったので訪問客は子爵位より爵位が高い貴族なのだろう。


 一度、スカーレットは貴族と思われる男性に助けを求めたが、うまくいかなかった。あの日のことも思い出したくない。スカーレットにとって異性はほとんど恐怖の対象だった。


 広々とした緑地が広がる庭を通り過ぎ、屋敷の裏庭に向かうとそばかすの少女が一目散に駆け寄ってくれる。


「お嬢さま! おはようございます」


 メイドのスーザンはスカーレットがボイエット邸に来る少し前に雇われた明るくて純粋な15歳の少女だ。スカーレットの立場は知っているのに、いつも優しく出迎えてくれる。そして趣味の悪いドレスを隠すように市場で安く出回っている布切れを手縫いで縫い合わせたショールを肩にかけてくれるのだ。


 できるだけスカーレットの身体が隠れるようにと少しずつ布は大きくなり、お尻まですっぽりと隠れるサイズのショールはスカーレットの安心材料になっていた。少しだけ和らいだ表情を見て、スーザンも嬉しそうに笑ってどこにどんな柄の布を足したのか話してくれる。


 他にもメイドはいるのだが、スカーレットに同情してスカーレットとスーザンの関係を見て見ぬふりをしていた。屋敷の主人が来るはずのないシャボンの匂いが漂う裏庭はスカーレットを少しだけ穏やかにさせる。


「さ、お嬢さま。今日もしっかり働きましょう!」


「えぇ。よろしくね、スーザン」


 にっこりと笑うスーザンと共に、洗濯場に向かう。


 メイドたちはスカーレットに気付いていても、挨拶もせずに淡々と仕事をこなしていた。いくつもの籠の中には洗濯物が溜まっており、裏庭に一定間隔で植えられた木にかけられたロープに干していくのがスカーレットの仕事だ。


 スカーレットの肌に万が一でも傷がつくことを嫌がった子爵が許した仕事は洗濯場しかなく、昼が過ぎるまで洗濯を干した後に裏庭の掃き掃除。働くといっても、メイドからすれば貴族の暇潰しにしか見えないだろう。


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