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最初に超えなければならない壁


「わ、ここが本物の、、」


 僕__霧崎光一は、そう校門の目の前で呟き、目を見開いた。何故かって?そう、僕がいるこの場所はかの有名なエリート育成高校、『冥序学園(めいじょがくえん)』の目の前に立っているからだ。


 話は過去に遡り、両親から学力を期待された僕は4年前、この有名校に入学することを夢見て勉強を頑張ってきた。


そして、受験では合格。4年間ずっと夢に見ていたこの学校に、今僕は足を踏み入れた。


 門を通り、教室に行くまでの道のりの中、周りを見渡すと1年生の証である赤いリボンをつけた新入生が沢山おり、僕の胸の高鳴りは増していく一方だった。


1階から2階へ通づる階段を上ると、1年2組の教室が奥に見えた。

 僕は恐る恐る教室の中に入ると、中には既に着いたクラスメイト達が座っていた。僕は『霧崎光一』と書かれている座席に腰を降ろした。


 席に着いて一息ついた時だった。

「ねえねえ」

不意に右手側から声がした。

反射的に顔を其方へ向けると、そこには少女が座っていた。


長い黒髪を方に流し、整った綺麗な顔で僕の方を見つめて笑う彼女の姿はとても魅力的に感じた。


「私は隣の席の天城玲奈(あまぎ れいな)。よろしく。」


彼女は天城玲奈とそう名乗った。

「天城玲奈」

 その名前を聞いた瞬間、周囲の何人かがこちらをちらりと見た。

 ほんの一瞬。けれど、確かに。

(……有名人、なのか?)

「僕は霧崎光一。よろしくね」


 僕が自己紹介をすると、天城さんは前を向いたまま、静かに言った。

「ねえ、霧崎くん。この学校に来られて、嬉しい?」

「え? そ、そりゃあ……。ずっと目標だったし」

 そう答えると、彼女は少しだけ口角を上げた。

「そっか。じゃあ――」

 そこで言葉を切り、彼女は僕の方を見た。

 その瞳は笑っているのに、なぜか温度を感じない。

「早く“この学校の本当の姿”を知れるといいね」

 ぞくり、と背中に冷たいものが走った。

「え……?」

 聞き返そうとした、その瞬間。

 ――ガラッ。

 教室の扉が乱暴に開き、鋭い視線をした教師が入ってきた。

「着席しろ。これより、冥序学園一年の“最初の説明”を始める」

 教室が一気に静まり返る。

 僕は前を向きながら、先程天城さんから言われたことを考えていた。

(……本当の姿、って……?)


教師は教壇に立つと、教室全体を一瞥した。その目はまるで生徒一人一人を"物"としか見ていないように感じた。


「改めて言う。ここは冥序学園だ。」


「この学園では、成績・実技・能力全てを総合し決める、『序列』がある。」


教室のあちこちで、息を飲む音がした。


「序列はAからEまで。君たちには、入学時点で仮ランクというものが振り分けられている」


(仮、ランク...)


「今から出す端末に、自分の仮ランクが表示されている」


先生が合図をすると、机の中から薄いスマホのような端末が一斉に起動した。

僕は震える手でその端末を手に取った。


画面には、名前とおおきくアルファベットが映し出されていた。


霧崎光一 : D


「D..か」


僕は不安になり周りを見渡すと、誇らしげな顔や周囲に自慢をしている者、…そして、青ざめたような顔が見られた。


そんな中で、ふと天城さんの端末が視界に映った。



天城玲奈 : A


その結果に僕は少し納得していた。

何故なら彼女は僕に話しかけていた時から、一際異彩を放っていたからだ。そして、この学校のことも、詳しく知っているような発言をしていた。


「─粛に。ランクは学園内での生活に多大な影響を与える。Aランクは制限が一切無く、Bランクは通常の校則通りだ。DとEは───特に気をつけろ。」


その言い方に、僕には妙に引っかかった。


「そして、明日からはランク戦を行う。これは模擬ではない。本物の、バトル形式のランク戦だ。」


その声を聞いた途端、クラス全体が騒ついた。


「怪我をすること、についてはこちらも対処をする...だが、再起不能になった者には何の対応も無いからな。それを含めての序列だからだ」


「だが、そんな序列もランク戦では変わることがある。それが吉と出るか凶と出るかはお前ら次第だ。俺はお前らに期待しているからな」


「覚えておけ、ここは序列重視の学園だ。とにかく上を目指せ」




そう言い放ち、先生は教室から出ていった。


教室がザワついていた。

先程まで明るかったクラスは一気に騒々しくなった。


その時、隣から声が聞こえた。


「Dランク...なんだ」


天城さんだった。責める口調ではなく、ただその事実だけを確認するだけの声。


「う、うん......」


僕がそう答えると、彼女は不思議そうに首を傾げた。


「なんでだろう。私には霧崎くんが弱そうには見えないのに」


彼女のその言葉に、僕は安心よりも恐怖を感じた。

(何を基準にそんな事を...)


「まあ、まだ仮ランクだし!上がることもあるよ」


「生き残れたら、だけどね」



そう言った彼女の表情は、嘲笑うよう不気味に微笑んでいた。その瞬間、僕は確信した。


この冥序学園はただのエリート育成校じゃないこと。


そして、隣に座る少女は


最初に超えなければいけない"壁"なのだと。



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