表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編】どっちが

はぁ。もうマジ最悪。

 どんだけ束縛強いのよあの男。別れて正解だったわ。


 ホント自分でも笑っちゃうくらい男運ないわね私。


 でもその男がまともなやつかどうかなんてさぁ、そんなのわかる?

 え、みんなどうやってんの?

 私が知らないだけ? やばい男かどうかわかるオーラでも観えてんの? フラン●ランから発売されてた?


 もう恋愛するの怖いんですけど。

 でもだからって諦めるわけにいかないっていうか、でもこのままだとまた引っ掛かりそうだし……。

 彼を知り己を知れば百戦殆からず……だもんね。



「――え?……紹介とかじゃなくて?」


 友人のA子は不思議そうな顔をしていた。

 私が次に目をつけていた男と、A子が知り合いだったのが都合がよかった。

 ちょっと調べて欲しい――そう伝えたのだけれど、そんなに変なこと言ったかしら。


 あ、もしかして私が何もしないと思ってる?

 もちろん私の方でも調べを進めてるわよ。でも何事もさ、多角的な視点から検証する方が精度は高まるでしょ?

「え、うん、まぁその……り、理屈は分かるけど……」

 自宅の住所はもちろん、実家の住所、それにご両親のお仕事、年収は調べたし、彼の好きな食べ物や色、趣味、体はどこから洗うか――ぷっ。彼ったらね、おへそから洗うらしいわよ。

「あ、ははは……。も、もうそこまで調べてるなら、私、力になれるかなぁ~……なんて……」

 もちろん。こんなのはうわべだけの情報だわ。知ろうと思えば誰だってわかることだし、彼のパーソナルを表すような情報ではないもの。

「そ、そうかな……そうかなぁ?」

 でも男なんて、女が気を許した途端、それまで見せてこなかった一面を見せるものなの。だからお願い、あの男にもっと近づいて色々調査してほしいの。

 もちろん、頼まれてくれるわよね。ここのフレンチのコース、私が払ってるんだから。

「あ、いやその、それだったら私も払うし……」

 あ、ごめん、大丈夫。優しいA子のことだから気を使うだろうなって思って、すでに払ってるのよ。




 それから半年の間、A子は実に細かく情報を引き出してくれた。

 普段家に帰ったら何をしているとか、休みの日の過ごし方、交友関係……。

 ちゃくちゃくと情報が集まってくる。

 どんな時に笑ったとか。涙もろくてあんな映画でも泣いたとか。意外と味にはうるさくて、少しダシを変えただけなのに、お味噌汁を一口啜ったらすぐに気づいたとか。

 会社の愚痴とか全然言わなくて、むしろA子の話をいつも聞いてくれるとか。

 寝顔が可愛いとか。ちょっと寝相が悪いけどいびきはかかないとか。


 うん、かなり情報が集まったわね。これなら問題なさそう。

 そろそろA子に紹介してもらおうかしら。


 ――あら? メッセージ?


 ……。


 さすがA子ね。

 私が言う前に「彼のことで話があるから会えない?」だって。

 ちょっと仲良くなりすぎてるから、私に紹介する時寂しくならないかなって心配だったけど、これなら大丈夫そうだわ。ほら、旅行中に預けたペットが相手に懐くみたいな。

 でもよかったぁ。もしあの男に情が沸いてたら、A子のこと躾けなきゃと思ってたから。そりゃそうよね、もしそうだとしたら略奪愛だもの。私も友人をそんな形で失いたくないから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ