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第1星 はじまり

 真っ白な粉雪が深々と降り積もる冬の日。


誰の声かわからない。


でも確かに苦しそうに喘ぐ声が聞こえる。


どうしよう 何も考えられない。


今何が起きているのか、今まで何をしていたのか全く思い出せない。


「ごめんね…×××…」


そう言われた瞬間、僕は我に返った。


肺が凍るように冷たく、体中が強い痛みに襲われる。


思考が停止していた分の出来事が頭に一気に流れ込んでくる。


それと同時に苦しそうに喘いでいる声の正体もわかった。


                         ♦︎ ♦︎ ♦︎

 

今日は酷く蒸し暑い日だ。


様々な種類の蝉が必死に鳴く声が心底不愉快だ。


僕と教授の創った仲間達が旅に出てから約一ヶ月が経った。


もう殆どの日を野宿して過ごして、背中辺りがじわじわと日々痛みを増しているのが、身に染みてよく分かる。


そろそろ平和な村に着く頃だろう。

そこへ行ったら暖かい風呂に入って…柔らかい布団で寝て。


そう考えた時、旅をするにあたって禁物な考えが頭をよぎった。


____嗚呼、僕は一体何をしているのだろう。


生きているかも分からない母親を探し、権力も充実した生活も全て捨て、このような生活を強いられている。


本当にこれは必要なものなのだろうか___と。


そのようなことを考えてはいけないと自分の本能がそう囁くのに、どうしてもやめられない。


これはまずい…この猛暑に頭がやられたとしか思えない。


意識が朦朧として、強い衝撃が体に走る。

耳元で沢山の人が何か言っているのがぼんやりと聞こえる。


昨日はみんなに言われてしっかりと寝たはずなのに、なんだか急に瞼が重くなってきた。


そこで僕の意識はふっ と途絶えた。


                       ♦︎ ♦︎ ♦︎


 今僕は何処にいる?

とても悪い夢を見ていた気がする…。


汗が身体中をつたって気持ちが悪い


石と何かがぶつかり合った音がした後、横たわっている処に軽い衝撃が走る。


ふと瞼を開けると目の前には旅の仲間達の心配そうな、でも僕の目が覚めた安堵の眼差しをして僕の顔をじっと見つめている。


「おい、ドミニク大丈夫か?俺の声、聞こえてるか?」


優しげなカプリコーンの低い声が聞こえる


「ああ…なんとか。何が起こったんだ?」


カプリコーンの問いに僕は答えつつ、何が何だか分からない僕にレオのツンとした高い声が答える。


「ドミはこの暑さにやられて歩いてる途中で倒れたのよ。だから水を飲ませて、残り少ないとぉーっても貴重なお金を使ってドミを今馬車で目的地の村まで運んでるってわけっ!この消費した分のとってもとっても貴重なお金、どうにかして償ってもらうからねっ」


レオにとても迷惑をかけたことが声の調子からしてよくわかる。


「ちょっとレオさん、ドミニクさんは今とても体の調子が悪いんですからっ。直ぐにお仕事の話をなさらないでください。」


この旅の仲間のなかで最年少にしてしっかり者のアクエリアスが天邪鬼のレオにびしっと叱る。


なんだかまだ頭の深いところに靄がかかっているようだ。


基本的なことは分かっても、深い人情などはよく読み取れない。


なんだか酷く喉が渇いてきた。相変わらず太陽は弱った僕に強い日差しを浴びせてくる。


「ちょっとぉ。喧嘩してないで、ドミの体調も考えてくださいっ…ドミ、大丈夫ですか?何か欲しいもの、ありますか?」


おっとりしたヒーリングボイスのアリエスは、持ち前の美形でいつも僕を癒してくれる存在だ。


そうだ。こんな事を考えている場合ではない。


「できれば水を貰いたい…」


先程カプリコーンと言葉を交わした時より少し声が弱々しくなった僕の声を聞いて、アリエスは慌てた様子で水を僕に差し出す。


喉を鳴らして水を飲む様子を見たアリエスは、医療の事に詳しいスコーピオに何かを囁く。


それを聞いたスコーピオは納得した様子で何かの葉を砕いたものを薬箱から取り出し、アリエスに差し出す。


「ドミ、この葉っぱは脱水症?のドミによく効くそうですよ!だからこのお水に溶かして飲んでって、スコーピオ先生が仰ってました〜」


それを聞いたスコーピオが僕に向かってにっこりと微笑む。


スコーピオは教授の設計ミスで声が出ない。


けれど同じように設計された僕を除いた皆はスコーピオから出される電子記号を読み取る事で意思疎通ができるそうだ。


しかし、本当に医療とは凄いものだ。


脱水症を改善する薬、傷を治す薬、体の機能を向上させるポーションなど沢山の人の試行錯誤で、色々な効果のある薬が今尚開発されている。


スコーピオから貰った砕いた葉を溶いた水を全て飲み干すと、病弱なライブラが枕の代わりに使っている分厚い布を差し出した。


「ドミ、大丈夫…?分かるよ…辛いよね。良ければこれ使って。僕は大丈夫だから、少し横になったほうがいい…」


ライブラのいつも弱々しい声に少し励ましの音が含まれるのが、僕の朦朧とした頭でもよく分かった。


そうして貸してもらった布に頭を預け、薬がやっと効いてきた頃に目的地の村に着いたと、無愛想な馭者が一言言ってまた黙り込んだ。


薬の効果が出てきた僕を含む皆は馬車を降り、村に泊まる宿を探しに行った。


次の章へ続く_____


如何でしたでしょうか?

お話気に入ってくださると嬉しいです٩( 'ω' )

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