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第四十九話 真実

真偽の箱、私も欲しい。いや、いらないか。

 見つけ次第排除する様に国内全土に命令が出ている。思ったよりもハードな話だった。いやまあ確かに厄介だけど、魔王とかそういうのは……


「あの、魔王とか魔族軍とかそういうのは居ないんですか?」

「えっ? 魔王って何? まさか教団がなんかしようとしてたの?」

「あ、いえ、なんでもないです」

「なんでも無くはないよ? ほら、話してくれないかな?」

「放さなきゃ話せません!」


 物凄い力で私の手首を取られた。というかエドワード様ってテオドールに比べて貧弱だったと思うんだけど。あ、もしかしてこれ、魔法なの? 身体強化ってやつ?


「……仕方ない。さ、放したよ。話してくれるね?」


 またエドワード様がにこやかに微笑む。いや、もうお腹いっぱいです。イケメンの無邪気な微笑はご褒美ですけど、腹に一物も二物も抱えてるような笑顔はノーセンキューですから!


「ううっ、あの、魔王って存在がいるんじゃないかって勝手に思ってて」

「随分と突拍子も無い事を考えるもんだ。しかも平気で口に出す。本当に君は冒険者なのかい?」

「いまいち自分でも自信はありませんが」


 冒険者ではある。身分証が欲しくて登録したけど、ちゃんと依頼も数多くこなしている。まあ討伐、護衛、採取の三大依頼はあまりやってないんだけど。


「これは、仕方ないね」


 エドワード様が諦めたかのように深く椅子に腰を下ろす。やった、乗り切った。そんなことを考えていた瞬間が私にもありました。


「フレッツ、来てくれ」

「はっ、お呼びでしょうか、エドワード様」

「あの、この方は?」

「ベルガーの孫だね。フレッツ、冒険者ギルドに大至急ということでアリュアスを呼んできてくれ」


 アリュアスってギルドマスターじゃない! ええっ、何でそんなこと。


「かしこまりました。受け入れて貰えない場合は?」

「教団関係だ。キューさんも絡んでいると、伝えてくれ。最優先で頼む」

「分かりました」


 そういうとフレッツさんという方は消えていた。転移なの? いや、転移じゃなさそうだ。普通に静かに部屋から出ていったから自然すぎて分からなかっただけだ。


「さて、アリュアスが来るまでゆっくりお茶を楽しもうか。あ、話してくれる気になったらいつでもどうぞ」


 それからしばらく沈黙の時が続いた。話しかけるにしてもなんか嫌だし、どこから追及されるか分からない。そんな感じで向こうから何も話さないなら私からも話す必要がない。お願い、帰らせてって思いながら待っていた。


「お呼びですかな、代官閣下」

「アリュアス、閣下はやめてくれませんかね?」

「はっはっはっ、ご立派になったものです。それでキューでしたね」

「そうだ。相当に強情でね。少し手荒な真似をしないといけないかと思って君の許可を取りたくてね」


 手荒な真似!? もしかして拷問とか拷問とか拷問とか!? いやぁ、アウシュヴィッツ送りはいやぁ。シベリア送りもいやぁ。ルドン高原送りもいやぁ!


「お二人とも、あまりキューさんを虐めないでください」


 そう言って入って来たのはエレノアさんだ。地獄に女神とはまさにこの事。


「そんなことしなくても私が聞き出してみせますから。ご心配なく?」


 エレノアさん、女神じゃなかった! 私を尋問する気満々だよ! どうしよう、どうしよう、どうしよう。


「エレノア、アリュアスを呼んだのは拷問や尋問する為だけじゃないよ」


「だけじゃない」ってことは含まれてるって事じゃん! いや、これは素直にヤバい。


「もちろん持ってきてますよ。これですね」


 アリュアスさんが取り出したのは小さな箱。これは?


「ああ、真偽の箱を使うのですね」


 エレノアさんが納得したように言う。あの、なんですか、その真偽の箱ってのは?


「嘘を吐いてるのかすぐに分かる箱よ。安心して、痛くは無いから……この箱自体は」


 それって真実を聞き出すのに痛くする必要があればやるってことですよね?


「大丈夫、痛いのは最初だけ。まあ、喋らなかったらだんだん痛さが増す様にするけど」


 ちっとも安心出来ない! こ、これはかなりまずいのでは? 考えろ、考えるんだ、どうするべきか。あれ? 待てよ? 確かティアは早々に自分の正体をバラしたって言ってなかったか? それなら私がバラしても大丈夫かも? いや、いざとなったらどっかに逃げよう。


「あのっ、その、話しておきたい秘密があるんですけど」


 私はやむなく自分の素性について話す事にした。もちろん女神様の事は伏せてだ。というか話しても誰も信じてくれないだろう。蒸かし芋美味しかった。


「そうか、やっと話してくれる気になったんだね。それじゃあ、装置を起動させてもらうよ。大丈夫。本当の事なら痛くしないから」

「分かりました。まず、私はこの世界の人間ではありません」


 箱はぴくりともしない。みんなはポカーンとした顔をして私を見ている。いや、アリュアスさんは箱を見て「マジかよ」とか呟いていた。


「何らかの原因で違う世界からこの世界に飛ばされてきたんです。帰り方も分かりません」


 当然ながら箱は沈黙したままだ。アリュアスさんとエドワード様が訝しんだ。


「アリュアス、この箱大丈夫なのか?」

「大丈夫のはずですが……そうですな。別にエレノアなんて怖くないぞ!」


 ピカピカと箱が青く輝いた。なるほど、嘘を吐くとこんな反応するんだな。


「ギルドマスター? もしかして私のことを怖いと思ってたんですか?」


 あ、エレノアさんのにこやかな微笑みの対象がアリュアスさんに移った。


「いや、別に、エレノアにサボってるのがバレたらいつ凍らされるかとかそういうのじゃないから!」


 ビカビカと青く光る。


「ギルドマスター、あとで、ゆっくり、オハナシ、しましょうね?」

「は、はい」


 ガックリと項垂れるアリュアスさん。エレノアさんは改めて私の方を向いた。


「家を追い出されたというのは嘘?」

「あ、はい。追い出されたんじゃなくて逃げて来ました」


 箱は再び沈黙を保っている。


「逃げて来たってあなた……何があったの?」


 私はエレノアさんに全てを話すことにした。

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