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第五話 着替

そういやこいつバッグとか持ってなかったなって今更。

 私は宿の一室で目を覚ました。あれ? 宿屋だっけ? 違う、冒険者ギルドの宿泊室だ。そういえばそうだった。何はともあれ、ベッドで寝れたのは喜ぶべきことだろう。


 顔を洗おうと水道を探すけど水道なんてない。もしかして、と思い外に出ると井戸がある。そこで筋肉がしっかりとついた男性が上半身裸で立っていた。


「ん? なんだ、あんた? もしかしてギルマスが言ってた保護したやつか?」

「私はキューです。よろしくお願いします」

「こいつはご丁寧にどうも。ラルフだ。副ギルド長をやってる」


 どうやらこよ筋肉男は副ギルド長という偉い地位らしい。でも、ギルドマスターとギルド長ってちがうのかな?


「いや、一応サブギルドマスターってのが正式な名前らしいんだが少し長ぇからな。勝手に縮めた」


 どうやらお茶目な人の様だ。私は顔を洗いたい旨を伝えると、井戸から水を汲んでくれた。これくらいなら念動サイコキネシスで動かせるけどね。


「朝メシは食堂にあるから食いに行くといい。それから掲示板だな。ギルドカードがねえと受けれるものがわからんだろうから受け取ってからな」


 色々と教えてもらい、朝ごはんを食べるべく食堂に行く。食堂では、おばちゃんにパンとスープを渡された。固形物を朝から食べることが出来るのか、などと思ってしまう。


 朝ごはんを食べたら冒険者ギルドの受付に向かう。朝早いけどカウンターの前はごちゃごちゃしていた。私がキョロキョロしていると昨日のベルちゃんさんが手招きしてくれた。


「おはよう、キューさん。昨夜はよく眠れましたか?」

「おはようございます。お陰様で」

「そう、良かったわ。あ、これ、キューさんのギルドカードね。一応一番下ってことでアイアン級からスタートね」


 そう言って鉄で出来たプレートにキュー・リンドと刻まれたものを私に渡してくる。これが、と思いつつ眺めてると、ベルさんが端っこに空いてる穴に紐を通して首からかけてくれた。


「はい、落とさないように気を付けてね」

「ありがとうございます」


 お姉ちゃんってこういうものなんだろうか。私よりも少し年上だもんね、きっと。さて、じゃあ仕事を探そう。掲示板のものを見る。


「ええと、鉄級のものは無いなあ」


 掲示板を眺めているが鉄級に認められているのは戦闘以外である。もちろん、戦闘なんて出来ないし、したくない。


「これかなあ」


 私がやろうと決めたのは薬草採取。この街では魔の森と呼ばれる魔獣のうろつく森の近くにあるから薬草が常に不足気味なんだそうな。


 魔の森だって、こわーいとか思ったけど、あの私が居た森なんだよね。ううん、確かにフィアーベアは怖かったけど。


 あの森なら大丈夫そうだ。ベルさんに言って森に出掛けてきます。ベルさんには森に行くなら他のパーティの人と一緒の方がいいって言われたけど、パーティって森の中でパーティするの?よく分からないけど怖いから勝手に出て来た。


 森までひたすら歩いてもいいんだけど、そうすると薬草を採る時間が少なくなっちゃうから転移テレポートする。一度来た場所だからか、フィアーベアと会った川べりへの転移は上手くいった。まあ少し疲れたけど。でも、転移先に人が居たら困るから目視できないところは転移しない方がいいのかもしれない。


「よし、探すぞ!」


 意気込んで探す。私の鑑定サイコメトリーがあれば楽勝! のハズだったんですけどね。まずは薬草がどれかを一つ一つ確認しないといけない。これはなれたらすぐにできるんだろうなとは思うけど今はダメだ。


 そして私は気付いた。持ち帰る為の装備がないと。ええと、何かないか、と考えて私の着ていた服を持ち帰り用の風呂敷にする事を思いついた。よし、これで勝つる。


 私は転移して門番さんにプレートを見せようとしたら大騒ぎされた。なんで? 別に実験の時は私、裸だったから見られてもなんともないんだけど、どうやらみんなは違うみたい。なんかギルドに連行された。


「お前は何を考えているんだ!」


 ギルドマスターに怒られた。理不尽だ。



「薬草を持ち帰る鞄を忘れたから服で代用した」

「いや、用意していけよ。で、替えの服は?」

「服はこれ一着しか所持していない」

「なっ!? 貴族の子女が服も満足に持ち出せなかったのか?」


 どうやらこの世界の常識では有り得ないらしい。でも、研究所でもこの白い服しか貰えなかったし、他の服なんてないよね。


「わかったわ! ギルマス、今日は私がキューちゃんを連れて帰りますがよろしいですね?」

「うむ、ベルに頼むか。エレノア、君も頼む」

「分かりました。いくつか見繕います」


 そんな感じでベルさんに引きずられるようにギルドを出て、ベルさんの家に。ベルさんの家は普通の家庭で、父親、母親、弟さんがベルさんの帰りを歓迎していた。


「おかえり、ベル」

「ただいま母さん。あのさ、私が小さい頃の服ってまだある?」

「いずれはベンに着せるつもりだったから取ってあるよ」

「冗談だろ!? 母さん、オレ、男だよ!?」

「ベンなら似合うから大丈夫よ」


 ベン君の未来に幸あれ。というか今まで着せられてなかったのが奇跡なのかもしれない。


「さあ、キューちゃん、こっちね。ほら、着て着て」

「えっ? あっあ、ありがとうございます」


 そう言われて倉庫から引っ張り出して来たような服を着せてもらう。動きやすい服だ。なるほど、ベン君が着ても違和感のないパンツスタイルだ。


「良かった、似合ってる。うん、ちゃんと可愛いね」

「は、はあ」


 そうこうしてるとエレノアさんがドレスを持ってきた。いやいや、あの、冒険者にドレスは要らないでしょう! って、なんか目が怖いですよ? えっ? 文句言わずに着てみろって? ううっ、足元がスースーするよう。


 私がドレスを着るとベルさんとエレノアさんが手を取り合ってぴょんぴょんしていた。なんか心がぴょんぴょんしたのかな? 複雑な気持ちだ。そうして二日目の夜も更けていく。あ、今日の分の薬草、まだギルドに出してないよね?

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