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幕間〜とある女神の誤魔化し〜

おい女神

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ。甘藷さつまいもをつまみ食いに行ったら世界が歪んで繋がってるのが発覚した。何を言ってんのかわかんねーと思うが。私も何をされたのかわからなかった……いや、私がされたわけでは無いし、歪みは修正したんだけど。頭がどうにかなりそうだった……白昼夢だとか夢遊病だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ……もっと恐ろしいもの(次元崩壊)の片鱗を味わったぜ……


 こんにちは、しがない中間管理職そうぞうしんの女神です。いつも忙しくて辛い。比較的手のかからない一番から十番までの世界を適当に見回った後、十一番に行く前に少し休みを取りたくて第十三世界に甘藷を取りに来ました。いや、これはこの世界にあった食べ物で、非常に効率よくエネルギーが摂取出来る作物としてAI達にも人気の植物だったのよ。バイオエタノールとかいうやつ。


 で、人間が生きていた頃は救荒植物として育てられてたそう。甘くて美味しいと評判だったわ。まあ順番が逆で、救荒植物として育てられていたのをバイオエタノールの原料として流用したら効率が良かったって話なんだけど。直ぐにサトウキビに取って代わられるかもと思ったけど、生育条件の違いから甘藷は手軽に手に入るバイオエタノールの原料として重宝したのよね。


 まあ女神たる私にはその辺の枝葉末節はどうでも良くて美味しい蒸し甘藷が食べたくてここに来たってわけ。秋は食欲の季節だからね。えっ? そこには秋も何も無いだろうって? 大丈夫、私の管理世界のどれかは秋なんだから!


 そんな事を考えながら芋掘りを楽しんでいたらいきなりティアちゃんとキューちゃんが現れたの。あれ? まだ夜になってないよね? 二人で白昼夢でも見てたの? それとも二人揃って夢遊病?


 だから何してたのか聞いたら二人揃って触手と戦ってたって。いや、そんな偶然あるの?って思ってたのよ。だから二人とも夢見てるのかな。夢はお布団でねって寝かしつけようとしたのよ。私も甘藷食べたかったし。


 そしたら「湖にお互いの顔が映った」なんて言うじゃないですか! 歪みですよ、歪み! 世界が歪んで繋がってるんです。まだ繋がってた場所があったなんて。こんな事してる場合じゃない。という事はこの白い部屋の第十三世界とも繋がってる可能性が……


 私は自分の顔色が青くなっていくのがわかった。だって、バレたら、始末書ですよ! 減給処分まで行くかは分かりませんが、職務怠慢なんてネチネチ言われるに決まってます! 重役しこうしんの方々が言わなくても御局様の先輩創造神がいびって来るに決まってます! 私だって新人がやらかしたらネチネチ言いますもん!


 バレる前に何とかしなければ。私は明らかに狼狽して「どどどど、どこですか!?」なんてどもってしまったが、二人は事も無げに教えてくれた。大丈夫、まだ私のミスはバレてない。


 アフリカのダイヤモンド鉱山の奥に何故か地底湖? 私は森の中の洞窟? 森林暴走オーバーランの原因? しかも触手って海洋生物よね? いや、ヒドラとかクラゲとか淡水生物にも居るんだけど。


 いや、まだだ。まだ歪みと確定した訳じゃない。もしかしたら、たまたま、偶然に、同じ場所で、同じ感じで遭遇したのかもしれない。そうよね、きっとそうよ。よし、まだあわてるような時間じゃな…… 「Ahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!」HI☆ZU☆MI! 歪んでるぅぅぅぅぅぅぅ! 歪み、歪みが、出来てる。えらいこっちゃ、えらいこっちゃ、ガツン!


 そして私の意識はブラックアウトした。再び目覚めた時は頭痛かったしなんかずぶ濡れになってた。ホワイ?


「女神様、あの、早く対処しないといけないのでは?」


 ティアさんのその言葉に私は再起動を果たしました。そうでした!


「そうです! 対処しなくては! 二人とも、ちょっと力を貸してください!」


 ここに第十二世界と第十四世界の住民でそれぞれ違う世界に来ている二人が役に立ちます。この白い世界は二人のもの。二人の管理権限を合わせて第十二世界と第十四世界を繋いでる第十三世界から、湖を排除します。どこに持っていくか? えーとえーと、とりあえずどっかに適当に放り込む!


「ええと、それじゃあ二人の世界とこの湖を切り離すわね。えいっ!」


 大変な事になる前に湖を切り離せて良かった。ええと、湖はどこに行ったかな。あ、第十一世界の樹海に行ったかあ。湖の底には培養槽と管理用AIまであったと思うけど、第十一世界にはAIとか無いから大丈夫よね?


「あー、もう、戻ったら大騒ぎじゃないですか!」

「あ、心配しないで、そこは湖が無かったことになってるから。洞窟の中にタコがいたり、イカがいたりしたのよ」

「もっと不自然では?」


 ティアちゃんの指摘にキューちゃんのツッコミ。この子たちも言うようになったわね。仕方ないので必殺の「幻影だ」で誤魔化すことになりました。いや、夢だよ夢。ゆめゆめ疑うことなかれ。夢見る子どもの夢の夢。


 あとは地道に飛ばした分の空間を補充するだけ。これはティアちゃんとキューちゃんがいればそこまで難しくない。エネルギーと時間は使うけど。やれやれのんびり蒸し甘藷いも食べようと思ったのに飛んだ仕事が増えちゃったわ。まあついでに第十二世界と第十四世界のチェックもやっちゃおう。うんうん、異常なし。


「助かったわ、ありがとう! 最悪世界が滅んだかもしれなかったわ」


 大人しくお礼を言ったのに二人から顔に紅茶をぶっかけられた。確かに美少女のそれはご褒美な世界はあるんだけどさ。


 すごい詰め寄って来られたから一緒に甘藷を食べることにして事なきを得たわ。二人とも納得なのか諦めなのかは分からないけどなんか達観した顔をしてた。


「まあ女神様だもんね」

「そうよね、女神様だもの」


 なんて二人して笑ってたのはいいことなんだろうか。まあ二人とも笑ってたからいいことよね。あ、この白い部屋では現実ではコンマ以下の時間しか経ってないから。精神と時の部屋とかそんな感じね。


 さーて、じゃあ私は仕事に戻り……あれ、御局様? なんでここにいるんですか? はっ? 呼び出し? いや、あの、何かの間違いでは?

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