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祖父(episode42)

お爺さんは血統主義ではありませんが八洲八家にはそれなりに、それ以外の平民には身分をわきまえる様にという感じです。ティアはまあ元々貴族ですしね。

 テレビでしか見た事無いような黒塗りの高級車が連なってやってきた。たくさん車あるんだねー。


 車が一斉にドアを開けて、その中から一台だけ、かなりお年を召されたお爺さんが杖をついて出て来た。見かけは年寄りだけど、老いてなお盛んみたいな覇気は感じる。


 そのお爺さんはうちの前に来ると、部下にドアを開けさせた。あれ? お邪魔しますとか無しに入ってくるの? とりあえず様子見ようかな。


「お父様?」

「おお、諾子なぎこじゃないか。元気しとったか?」

「もう、くるなら連絡くれれば良いのに」

「ここはうちの、四季咲しきざきの隠れ家じゃぞ? 四季咲の当主たるワシが来たところで問題はあるまい」

「そうよね。ごめんなさい、使わせてもらってます」

「いいんじゃよ、いいんじゃよ! どれ、ワシの可愛い孫はおるかの?」


 お爺さんは相好を崩してキョロキョロする。そこに龍二さんを見つけた。


「お、お義父さん、ご無沙汰してます」

「おうおうおうおう、まだ生きておったか泥棒が」

「いやあの、先日にお薬を言付けましたよね?」

「そうじゃったかの? ワシ、最近耳が遠くなってきてのう」


 どうやら龍二さんとは折り合いが悪いらしい。女性なら大丈夫って事なんだろうか?


「じいちゃん」

「おお、タケルか? 大きくなって。龍二の奴に似とるのは癪ではあるが、大事な孫じゃからなあ」

「もう子供じゃあないし。それからサクヤは居ないよ」

「うむ、知っておる。この間うちに来たからな」


 どうやらサクヤっていうタケルの妹はおじいさんに会いに行ったらしい。なんの用事かは分からないけど。まあ私なんて顔も分からないし。


「貴様も居たか」

「はい、お目汚しを」

「ふん、本来貴様の如き身分はワシに拝謁すら許さん……のだが、まあでも、タケルに嫌われたくは無いからのう」


 お爺さんが凪沙を批判しようとしたあたりでタケルがお爺さんを睨みつけていた。どうやらタケルはお爺さんに寵愛されてるらしい。


 さて、最後は私の出番だ。私に対してはどう出るかは分からないから一通り終わったあとに挨拶することになったのだ。


「お爺様、お初にお目にかかります。私は錬金術師であり、魔法使いのティアと申します」


 頑張って練習したカーテシー。礼儀作法に世界は関係ないんじゃないかと思うんだ。優雅な挨拶、マナーは優雅な行動に宿るって言うしね。私が言った!


「これはご丁寧に。薬師様、あなたのおかげで一命を取り留めることが出来ましたわい」

「えっ?」


 どうやら先日の血液浄化薬、このお爺さんが使ったらしい。で、どうやらこのお爺さん、秘密裏に入院して治療をしていたらしいんだけど、症状が進行するばかりでどうしようもなかったそうだ。


 そこで私の血液浄化ポーションに目をつけた訳だ。龍二さんが。龍二さんは仕事柄、秘密にしてたはずのお爺さんの病状を知っていたらしいんだ。それだけでもかなり優秀だよね。


 そして、私の薬を直ぐに持って行ったらしい。そして、私のポーションは一時的な血液浄化だけでなくて、芯から浄化してしまい、病が完治してしまったという訳。よく飲むことを承諾させたよね。


「こやつめ、ワシが飲むのを躊躇っていたら、「お義父さんを殺したら私が妻に恨まれてしまいますから」って言いよった。諾子の名前を出されたら飲むしかあるまい」

「お父様」

「それで薬師の方には是非とも礼を言わねばと思いましてな。なんなら四季咲の元で贅沢な暮らしをしていただいても構いませんぞ」


 ニコニコ笑っているが目が笑ってない。これは私を確保して、他にも薬が必要な人に売って儲けようとかしてる目だ。怖い怖い。


「いえ、タケルが良くしてくれますから」

「そうですか、タケルが。のう、タケルや。この子なら結婚しても構わんぞ?」

「じいちゃん!」

「いえ、あの、その、凪沙に売約済みの物件はちょっと」

「ティア!?」


 凪沙、大丈夫。私は凪沙のタケルを盗ったりしないからね。そもそも好みでもないし。


「面白いお嬢さんじゃ。改めて自己紹介しよう。四季咲が当主、四季咲莞児しきざきかんじじゃ。よろしゅうの、お嬢さん」

「はい、ティア・古森沢です」

「古森沢に持ってかれてしもうたか。惜しいのう」


 惜しいと言ってる割には楽しそうである。実はこの状況も楽しんでるのでは?


「そうそう、伽藍堂と清秋谷の小僧どもには手出しするなと命じておいたぞ。まああそこはどちらも末端がきかん坊じゃからな。どれくらい抑制になるかはわからんが」

「もうひとつ、妖世川、でしたっけ?」

「おうおう、それなんじゃが、ちと一件だけ付き合って欲しいんじゃよ」


 なんか申し訳なさそうな顔で言ってきた。あれ、もしかして、これって断れない系? いや、断るのは構わないよね?


「実はの、アフリカにあるワシも出資しとるダイヤモンド鉱山でな、毒の水が出とるらしいんじゃ。それの原因を究明したいということで」

「お断りしても?」

「ティア?」

「もちろん構わんよ。これはな、ワシのお願いなんじゃよ。その鉱山は元は諾子が持っとったものでな」


  諾子さんが持ってた鉱山って。いや、意味がわからないし。持ってたの、鉱山?


「お父様、その鉱山というのはもしかして」

「前にお主が救って欲しいと泣きついたところじゃな」

「お父様……」

「数年のうちにタケルかサクヤに譲渡しようと思っとったんじゃが今のままではなあ」


 そんな事を聞かされたら尽力するしかないんじゃないかな? というか日本にいるよりかは良いと思うの。


「わかりました。私に何が出来るかは分かりませんが、水が原因なら何とかできるかもしれません」


 毒水がどんなものかは分からないけど水門の魔法なら何とかなるかもしれないしね。いや、まあそれ以前にパチンコ屋は良いのかって話ではあるけど、そっちは龍二さんが話してくれるらしい。助かります。えっ、凪沙とタケルも来るの?

ちょっと、なんで、タケルは危ないからダメじゃとか言ってるんですか!

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