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第四十一話 見張

アイテムボックス持たせたはいいけど使いどころが……

「随分と手際が良くなったわね」

「エレノアさん、そりゃあオレたちだってもうシルバー級ですよ?」

「それもそうね。まあ見る機会なんてほとんどなかったもの」

「エレノアさん、今日はグレイのバカが突っ走らなかったからマシなんですよ」

「おい、ジャニス!」


 なんでこの人たちは目の前で夫婦漫才なんかやってんだろうか? あ、いや、こういう軽さとかが割といい連携の要なのかもしれない。


 アンガーさんはしっかり無口。仕事出来る男みたいな。まあ私はこういうがっしり系はあまり好みじゃないんだけど。サーラさんがみんなに気を配って回復に回ってる。持ち物の確認もしてたからきっとバックアップ担当だ。というかリーダーって本来はこういうのが仕事じゃないのかな?


「さて、そろそろ昼食にしましょうか」


 ジャニスさんが宣言してみんなが食事の用意を始める。私はシチュー鍋を取り出した。


「あ、あなたどうして」

「いや、なんかこう、出来るみたいになってて」


 エレノアさんがこっちに注意してくる。なんかまずいことでもあったのだろうか?


「何かあったんですか?」

「何も無いわ!」


 そしてそのまま森の少し奥に連れて行かれた。


「さあ、説明してもらおうかしら?」

「朝起きたら出来るようになってました!」

「そんなわけあるかぁ!」


 おお、エレノアさんがブチ切れている。ああ、これは正直に言わないと……というか正直に言ったところで内容は変わったりしないんだけど。


「どこかの金持ちの家に盗みに入ったの? いまなら一緒に自首してあげるから!」


 どうやらそういう能力を持ったアーティファクトと呼ばれる品はない訳では無いらしい。たまに発掘されてはオークションに掛けられて、お金持ちが落札していく。


 どうやらエレノアさんは私のこのアイテムボックスを容量拡張された袋的なアイテムだと思ってるらしい。というか個人がそういう能力を持つ事がないんだと。そりゃあまあ慌てますね。


「キューちゃん、あのね、今回の依頼ではそれは使わないで欲しいの」

  「それはなんででしょうか?」

「実は今回のはある商人が森の奥に素材を取りに行くのを光槍ライトニングパイクのみんなに任せようかって試験も兼ねてるの」


 どうやら森の奥には凶暴なモンスターだけではなく、色んな資源もあるらしい。それで商人はゴールド級の冒険者に頼もうと思ったのだが、思ったよりも高かった。そして、金級の場合はギルドの依頼も高価なものが多くなかなか時間はさけない。


 なお、前のグスタフさんはあれでも暇では無かったのだが、依頼をほっぽって時々森の奥に行ってしまうそうだ。本当はクマの仲間なのかな?


 だから商人ギルドからも視察が来て見極めてるって訳らしい。それならその見極める役の人、シノブさんに取りに行ってもらえば良いのに。


「私じゃ無理。荷物が増えると動きが鈍くなる。あと、基本単独行動だから」


 うわっ、シノブさんがいつの間にかそばまで来てる。


「シノブ、あなたこんな所に来て、あの四人の監視は良いの?」

「ん、問題ない。今野営の準備してる」

「あなたは?」

「私には必要ない。携帯丸薬があるから」


 どうやらなんか黒っぽい玉が彼女の晩御飯らしい。ま、まあ、それならいいよね。私は改めてシチュー鍋を取りだして中から宿屋の女将さん特製のボアシチューを……


「あら、美味しそうね」

「そうでしょう」

「なんで湯気が出てるのかしら?」

「中の時間は止まってるので」

「あら便利ねえ……ってそんな訳あるかぁ!」


 本日二度目のそんな訳あるかをいただきました。いや、すいません。なんか。


「時間が止まってる!? しかもそんな大きいものまで入ってるの!?」

「あ、割とするする入りますよ」

「……はぁ、もういいわ。転移だけでもおかしいと思ってたし、特例ね」

「美味しそう」


 私とエレノアさんの会話が終わったら、私の頭の上にいつの間にかシノブさんが載っていた。あの、少し重いんですが。


「美味しそう」

「ええ、女将さんが作ってくれて」

「美味しそう」

「……シノブさんも食べますか?」

「ありがとう」


 そのまま降りてきてくれた。そして何処からともなくスプーンを取り出していた。あの、お皿は……あー、ないんですね。わかりました。私が収納からお皿も取り出す。一応人数分のお皿は用意していたのだ。


「美味しい」

「それは良かったです。エレノアさんも食べますか?」

「……そうね、いただくわ」


 そして三人で食事をした後に四人のところに戻った。どうやら四人も食事を終えた様だ。食べていたのは何かわからないけど硬そうなパンだったと思う。飲み物は水袋の水だ。


「三人とも何処に行ってたんですか?」

「秘密よ」

「もしかして転移で街に戻っていたとか?」

「そんな事出来るわけが……出来ないわよね?」


 聞かれたんで答えてあげましょう。普通に出来ます。まあ街に戻るだけなら。


「街に戻れはするけど、この場所にもう一度正確に戻って来れる訳では無い」


 そう、座標の問題。森の中は目印となるものがないので基本的にランダムなのだ。いや、森の中のどこかには辿り着くけど、何処とは言いきれないんだよ。森の中のどこかに転移出来るのは分かってたから問題は無いんだけど。


 その日はそのまま交代で見張りをすることにして、寝た。私とエレノアさんとシノブさんも交代で見張りをする。


 四人組はグレイ、アンガー、女の子二人らしい。アンガーが女の子二人を起こす役目なのは、グレイが一度寝たら起きないから一番手なのだそうだ。私達はシノブさんが真ん中で、エレノアさんが朝方。私が最初ということになった。エレノアさんは早起きなんだから私に睡眠時間を朝まで取らせたいみたいに言ってた。まあ私もその方が助かる。


 ということで夜にグレイさんと一緒に見張り。グレイさんは持ってる剣のお手入れをしてるみたいだ。鑑定サイコメトリー……うん、悪くない剣みたいだ。よく使い込まれている。

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