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薬効(episode41)

ポーションの引き起こす騒動ですね。

 トイレから出てきた諾子なぎこさんの笑顔はツヤツヤとしていた。龍二さんは「いつもより輝いてるね、ナギちゃん」なんてべた褒めしてた。まあ仲良きことは美しきかな。


「あのー、ティア様?」

「どうしたの、凪沙?」


 いきなり様付けなんかされたら気味悪いに決まってる。なんなんだろう?


「あのさ、こう、その薬、身体の悪いものを排除する、薬、なんだよね?」

「う、うん、そうだね」

「もしかしてさ、もしかしてだけど、もしかしてだけど、フレッ……じゃなくて、お腹の周りについた贅肉なんかも、その、排除してくれたりはしない?」


 あー、まあ乙女の悩みだよね。私もこっちの世界に来てからそれは考えたよ。お腹の周りだけ痩せてくれれば胸も大きく見えるからね。えっ、それ以上大きく見せてどうすんだ? もしくは誰に見せるんだ? こまけぇこたぁいいんだよ!


「凪沙、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……脂肪は不要なものにはかうんとされないわ」


 元々の脂肪というものがどうなのか考えたらわかる。脂肪は「三大栄養素」の一つであり、生命活動のエネルギー源であり、組織を構築するための材料である。つまり、人間の身体になくてはならない要素だ。


 諾子さんの得た効果はお腹の中にある老廃物の「宿便」を体外に排出しただけなのだ。すっきりはすると思うよ、うん。


「そんなぁ」


 凪沙はガクンと膝を着いた。ダイエットは一日にしてならず。脂肪は燃焼させるものなのだ。アミノ式とかいう燃焼方法があるって聞いた事あるけど、あれって曲芸だよね?


 というかそもそも凪沙は太ってなんかないし、タケルもきっと今のままがいいって言ってくれるよ。だってさっきお腹チラッってさせた時に見てたもん。


「ええと、ティアちゃん、その薬、売るつもりない?」

「えっ? あ、いや、そうですね。まあ、要望があればと言うか」

「あるわよ! なんなら私が売り込んであげるわ」


 余程感動したのか諾子さんが頻りに売る事を勧めてくる。龍二さんが「段取りをしようか」って言いながら商談をしようとしてくる。これは困った。


「父さんも母さんもやめてくれよ。ティアが困ってる」

「タケル……」


 見かねたタケルが庇ってくれた。いや、私は売ってもいいんだけどね。ただ、まあ、今のパチンコ屋の仕事も好きだからなあ。オーナーには恩返ししないとだし。


「ティア、君が想像してる数百倍くらい馬車馬の様に働かないといけなくなるんだけどそれでもやるかい?」


 タケル曰く、売れ始めたら増産に次ぐ増産で、寝る間も惜しんで作らされるという。あれ? たまに作るくらいって話なのでは? 日産一万本スタート? 無理無理無理無理!


「まあ、ティアちゃんが他に何を作れるかによってはそんなに作らなくてもいいかもだけど」

「ええと、その。あまり大したものは」


 とりあえず栽培促進ポーションを龍二さんに渡す。龍二さんは飲むものじゃないよね?って言ってきたけど多分違いますとしか言えない。


 家庭菜園に行き、ミニトマトを植えて、栽培促進ポーションをドバドバ掛けた。目の前でミニトマトがツルを生やし、実をつけた。


「……」

「……」

「……」

「……やばい」


 植物が早く育つだけだから大丈夫と思ったら思った以上にとんでもなかった。


「これは特に妖世川には秘密だな」

「えっ? なんで?」

「水が出せるだけでなく、植物の成長促進出来るとなれば、間違いなく連れ回されて、砂漠の緑化とかやらされるぞ!」


 砂漠ってあの砂とか岩だらけの地形? あー、土門が強いところならそうなっちゃうよね。あとは火門もかな。どっちも水門の対立相、相剋関係なんで水門の力を強めたら何とかなりそうだよね。えっ、そういう事を軽々しく言うな? 分かりました。


「バレたら妖世川に連れ回されるか、伽藍堂や清秋谷に武器扱いされるかだな」


 おお、やばい。これはますます狙われる理由が増えたってこと? 選択ミスったかなあ?


 ともあれ。一週間もしないうちに包囲は解かれたらしい。龍二さんが手を回してくれたらしい。私の身柄を狙っていた人間は組織の中でも落ち目に属していたヤツららしく、いつの間にやら大人しくなっていた。


 そして私はポーションを一つ作っている。龍二さんに頼まれたのだ。龍二さんはある植物を持ってきてこれで作れないかと訊ねてきた。


【 ヨモギ:傷口にかけると出血が止まり、飲用すればお腹の調子を整え、血液を浄化するポーションを作ることが出来る】


 なんか薬効色々ある葉っぱが来た。まあ作れと言うなら作りますがね。まーぜまーぜ。魔力水を注いで……はいできた。


 龍二さんはその薬を持ってどこかへ出かけてしまった。包囲は解かれていたので仕事に行ってもいいんだけど、まあせめて龍二さんが帰ってきてからにしようと思ってのんびりしていた。


 あ、もちろんのんびりしてる間もタケルや凪沙、そして諾子さんに魔法を教えてたよ。メイは居る時は教えてたけど時々居なくなるんだよね。なんでも隠れ家、ここ以外の場所のだけど、そこのメンテナンスが忙しいらしい。メイドさんも大変だ。なんか疲労回復ポーション作ってあげようかな?


 とか何とか言ってたら龍二さんが帰ってきた。そしてこう言ったんだ。「じい様が来る」と。じい様って誰だろうって思ったら諾子さんが「お父様が!?」って言ってたからきっと諾子さんのお父さんにあたる人、つまり、タケルのおじいさんなんだろうと思う。


 タケルがうげって顔してたし、凪沙はなんかうかない顔だ。やれ、タケル、抱けー、抱けぇぇぇぇぇ!


「大丈夫だよ、凪沙はぼくが守る」

「タケル……」


 あの、タケルさん? 私の身は守って貰えないんですかね? あ、私は会わなくていいのかな?って思ってたら龍二さんが


「ナギちゃんとティアちゃんは絶対出席。タケルはまあ出来たら。凪沙ちゃんはメイと一緒に欠席でも構わないよ」


 などと言ってた。それってつまり、要件は私のポーションって言いません?

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