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第四十話 集団

前に助けてくれたグスタフはあれでもゴールド級なのです。パーティも組んでません。

 出発日。集合場所に早起きしていく。結局、燻製とか作るのめんどくさいなあって思ってアイテムボックスに宿屋の料理を作ってもらって詰めた。もちろん料金はお支払いしましたよ? 女将さんにはそんなに食べられるのかい?って聞かれたけど笑って誤魔化した。


 集合場所には私の他にはエレノアさんが来ていた。朝早いのにお疲れ様です。


「おはようございます」

「あらおはよう。早いのね」

「はい、集合時間に間に合う様にと」

「そうね。みんなあなたみたいにちゃんと来てくれるといいんだけど」


 はぁ、とばかりにエレノアさんがため息を吐いた。どうやら一緒に行く冒険者パーティの人たちはまだ姿を見せてないらしい。まあ姿が見えないのでそりゃそうだとは思ったが。


「エレノア、この子、誰?」


 などと言っていたらエレノアさんの後ろからいきなり声をかけられた。見るとそこには小柄な女性がフードを身に纏って立っていた。


「あなたたちと一緒に行くキューちゃんよ」

「そう。私はシノブ。よろしく」


 シノブとは何やら八洲チックな名前だ。それにそのまんま忍者だよ。アイエエエとかは言ったりしない。だってそういうニンジャではなさそうだもの。


「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 大きな欠伸をしながら彼らが現れたのはシノブが現れてからだいたい三十分くらい経過したところだった。いや、さすがに遅すぎません?


「エレノアさん、ごめんなー。ちょっと朝おきれなくってさあ」

「あんたがいつまでも起きないからでしょ、このバカ!」

「痛てててて、頭に響くから大声はやめてくれよ、ジャニス」


 やって来たのは四人組。前衛っぽい大盾を持った重戦士、身軽だがデカい剣を持った剣士、恐らく回復魔法の使い手の癒し手、杖を持って攻撃する気満々の魔法使い。前衛二人が男で後衛二人が女という男女混交パーティだ。


光槍ライトニングパイクのリーダー、グレイだ。よろしく頼む」

「アンガーだ」

「このバカどもの世話役のジャニスよ。今日からよろしくお願いするわね」

「あ、サーラです。お見知り置きを」


 剣士、重戦士、魔法使い、癒し手の順に自己紹介をされた。どうやらフードの少女の事は知り合いらしく、フードの少女には目もくれないし、フードの少女もこれと言って注意を向けてこない。


 つまり、私だけが皆さんに自己紹介をしなければいけないのですね! ちくしょう、めんどくさい。


「あ、キューです。運び役です」


 私は短く頭を下げた。とりあえずの挨拶が終わってエレノアさんに光槍ライトニングパイクの事を聞いた。新進気鋭ながらバランス良いパーティでメキメキ力をつけてシルバー級に昇格したばかりなんだそうな。


 つまり、この森の調査は銀級の彼らに花を持たせるための出来レース? いやいやそんな事は無いみたい。ちなみにシノブさんは冒険者ではなく、商業ギルドから派遣されてきた傭兵らしい。斥候が必要ということで急遽雇われたらしい。らしい、というのはエレノアさんも知らなかったから。いきなり合流する事になったんだって。


「よーし、じゃあ出発するか。馬車は? 無いと森の奥まで進むのに時間がかかるぞ?」

「それは大丈夫よ、ね、キューちゃん?」


 エレノアさんがこっちを向いてにっこりと笑う。他の人間はどうあれ、この人には逆らいたくない。というかエレノアさんも一緒に行くらしい。なんでも冒険者ギルド側の見届け人らしい。


「あー、それじゃあちょっと準備しますね」


 私は予め用意しておいた魔法陣の描かれたマットを地面に敷く。うん、みんな入れるくらいの大きさだから問題なさそうだね。


「これは一体どんな術式なの?」

「ええと、企業秘密です」


 これ、前世のアニメにでてきた魔法陣を適当に想像して描いたものなんだよね。転移テレポート自体はなくてもできるんだけど、さも複雑な術式のように見せかけたいみたい。


 魔法陣の中に全員入ったので適当に詠唱……こういうの苦手なんだよ。リリカルトカレフキルゼムオールとかノーバディノークライとかじゃあダメだろうし。パラリンリリカルパラポラマジカル? ペルータンペットン パラリラポン?


「風よ、我らを悠久の扉より誘い、彼方へと運ばん! 転移テレポート!」


 それっぽくやってみた。後悔はしていない。していないったら!


 転移した先は私が居た、というかこの世界にやって来た時の森の中。どの辺かはまあお察し。そこまで深い場所では無いので森の深部に進む必要がある。


「驚いた。確かに魔の森の中だわ。川の広さから見て大分入り口からは奥みたいね」


 どうやら川は森の奥の方が上流で、そこから水が流れてきているそうなのだ。だから上流に行くほど川の幅は狭くなる。ちなみに街の近くにある川は歩いても泳いでも渡れず、橋を架けるのに二年費やしたそうだ。大変だなあ。


「じゃあここからは私たちの出番ね。慎重に進みましょう」


 もとより調査が目的だから深入りせず無理はしない方針の様だ。私は待ってようかと思ったが、森の中で一人になる方が危ないからとついて行く事になった。ぶっちゃけ一人の方が安全なんだけど理由は言えないしなあ。


 シノブさんは音もなくついてくる。エレノアさんは私の隣でニコニコしている。二人とも見届け人という身分らしく自分からは行動しないらしい。まあ光槍ライトニングパイクのパーティとしての連携を崩したくないというのもあるみたいだが。


 癒し手の人が索敵もしているのだろうか、不意に動きが止まって戦闘準備を指示し始めた。


「北西、ブラッドベア、一体、接敵間近」


 まあその指示の前にシノブさんは警戒態勢に入ってたけど。エレノアさんは相変わらずニコニコしたままだ。


 茂みからブラッドベアがウォーって顔を出した。身長は前にあったフィアーベアよりは一回り小さい。だけど目が赤く血走ってる感じがして怖い。いや、あれも怖かったのは怖かったけど。


 光槍ライトニングパイクのみんなは臆する事無くブラッドベアに立ち向かっていく。あっという間に連携で獲物を倒した。なかなかに手際がいい。これなら安全そうだ。

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