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第三十九話 買出

リリィちゃんもビリー君も今後もまた出て来ますよ。

 目が覚めたら宿屋の天井が見えた。もちろん知ってる天井だ。そう言えば劇場版はまだ見た事なかったなと思いながら今のこの異世界では見る事も叶わない。そう言えばあの白い部屋……第十三世界にポータブルテレビを持ち込んで視聴する事は出来るのだろうか。今度あの白い世界に行った時に女神がいたら聞いてみたい。


 女神と言えば、そう思って私は頭の中でアイテムボックスを念じる。空間が開いた様な感覚があり、目の前になんか黒い渦の様なものがでてきた。まあさすがにネコ型ロボット的なやつはないよね、って思いながら渦に手を入れてみる。


【中身は空っぽ】


 と言うような感覚が頭の中に流れてきた。これは、もしかして、アイテムボックスの中に入ってるものを頭の中で検索出来る? 便利!


 そう考えながら森の奥まで行くのだからと準備をすることにした。まあ行くのは二日後なんだけど。


 宿を出て市場に向かう。お金は公爵様からたんまり貰ってしまったので不自由はしていない。正直、依頼とか無視してしばらく遊んでもいい様な気もしてくるが、エレノアさんにもベルちゃんさんにもお世話になってるからなあ。ギルドマスター? そっちは知らん。


 市場を歩いているとリリィちゃんとばったり会った。ビリー君はと言うとベルちゃんさんにしごかれてギルド員の仕事をしているらしい。まあ今はどっちかと言えば解体の方が面白くなってきたとか言ってるので裏方の仕事らしい。


「大人しくしてろって言われたけど来ちゃった」


 リリィちゃんはたいそう得意気に言った。おそらく褒めて欲しいのだろうけど褒められることでは無い。ひとりでできたもんでは済まないのだ。


「ここに来るまでに危ない事はなかったの?」

「なかったよ、大丈夫!」


 弾けるような笑顔でにっこり笑うリリィちゃん。まあ、彼女がここに無事で居ることが何よりの証明なんだろう。


「えーと、私は今から買い物だから、ギルドに戻って」

「やだ! いっしょにいく!」

「え? いや、でもビリー君も心配してるだろうし」

「お兄ちゃんなんかしらない!」


 あ、これはビリー君がなんかやらかしたな。いや、悪いのはリリィちゃんの方かもしれないので言及は避けるけど。困ったな。放っておく訳にもいかない。


「やれやれ、大人しくしててね」

「はい!」


 元気にお返事出来てえらいね。それじゃあ市場を一緒に回りますか。とりあえずリリィちゃんとははぐれないように手を繋がないといけない。いざとなったら一緒に転移テレポートだよ。


「美味しい美味しい肉串だよ〜」

「甘い甘ぁいジュースはいかが?」

「うちのスープは絶品だよ!」


 呼び込みの声にフラフラと寄っていくリリィちゃん。そしてヨダレを垂らしながらこっちを見る。あー、もう、仕方ないよね。とりあえず片っ端から買い与える。こんな使い方をするのはどうかと思うけど、まあお金には余裕あるしね。


 というかリリィちゃんの寄せられた屋台ってどれも美味しいんだよね。当たりだよ当たり。それも屋台の大きさや客の多さにも惑わされずに的確に選んでるみたい。私があえて隣の屋台で買い物して焼き物買ったらタレが薄すぎて不味かった。リリィちゃんはもちろんいらないって言ってた。


 そんなこんなで見て回っていたら保存食屋さんに辿り着いた。森で暮らすなら保存食も居るよなあとか思っていたんだけど、この世界の保存食って美味しくないんだよね。


 仕方ないから自分で作った方がいいかなと感じながらもそれ以外のものを買う。だが、買いながら気付いた。別に私のアイテムボックスに入れるんだったら普通の料理で良くない?


 試しに肉串をアイテムボックスに収納する。しばらく放置。少しの間買い物をする。その間に鍋とか買っておく。火は発火パイロキネシスがあるからどこでもなんとでもなりそうだしね。まあ種火程度しか出ないけど。


 そしてしばらく歩いて、アイテムボックスから肉串を取り出す。うん、湯気が出たままの熱々の肉串のままだ。これは普通に料理を頼んだ方がいいかもしれない。


「あれ? また買ったの?」

「これはさっき買ったやつだよ。少し内緒のところにしまってたんだ」

「へー、すごーい」


 何が凄いのかは分からないが素直にすごいと言われたのは嬉しかった。後はテントとかの雑貨を買いに大きなお店に。私みたいな人間が入れるのかな?とか思いながら中に入ろうとすると、私を指さして店員が騒ぎ始めた。なんか店長を呼んでこいとか何とか言ってる。あれ? 私、なんかやっちゃってました? リリィちゃんも不安そうにしてるよ。


 果たして、店長さんが店の奥から出てきた。あれ? この人どこかで見た事ある様な……


「おお、あなたは娘の恩人の! その節はありがとうございました!」


 深深と頭を下げられた。あ、思い出した。確かこの人、娘さんが代官屋敷に捕まってた人だ。ギルドであの時はやつれてたから分からなかったよ。


「当店には何の御用で? ほう、公爵様のご依頼で森の奥の調査ですか。まあ森林暴走オーバーランもありましたからなあ。よろしうございます。品物は全て私が揃えましょう。お代なんてもちろん取りませんとも!」


 どーんと胸を叩きながら威勢のいいことを言う。いやいや、そうは言ってもタダなんて申し訳ないと私は固辞したのだが、どうしても。と言われて渋々受け取った。


 その代わりに、と何かスラムで炊き出しをして欲しいとお金を、本来払うはずの金額分お渡しした。ビリー君やリリィちゃんみたいな子が他にも居るからね。まあ危ないかもしれないから護衛とか雇ってやってくれたらな。そしたらギルドに仕事も来るよね。


 店長さんは感動で涙を流しながら「必ず!」と約束してくれた。なんかそこの店長さんは割とえらい人みたいで近いうちに商業ギルドをあげて炊き出しをするらしい。


 そのままリリィちゃんと別れて別れ際に「調査頑張ってね、お姉ちゃん!」とのお言葉をいただいた。ありがとう。これで私はあと十年は戦える。いや、実際には戦わないと思うけどね。

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