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第三十六話 祝勝

テオドールが剣を振る→ヒルダが眼福で頑張る→書類仕事しなくていいからテオドールが剣に励む→ヒルダが栄養補給

 テオドール様の勝利を伝えたらヒルダさんが「テオドール様が危ない!」って焦ってた。いや、だから森林暴走オーバーランは終わったってば。


「あのかっこいいテオドール様を見たら変な女たちが群がるかもしれないじゃない!」


 いや、いくらなんでもそんなに簡単にはいかないのでは? まあテオドール様、顔はエドワード様と似てるから凛々しくはあるけど。


「あなただっていつの間にかテオドール「様」って抵抗なく付けてるじゃない!」


 あ、まあ確かに。それは見直したからなあってのはある。いや、戦ってる姿は凛々しかったし、かっこよかったよ。でも日頃がアレだからなあ。


「そんなのあの戦場しか見てないんだったらクソアマどもが群がるじゃありませんか!」


 ちょっとあなた、仮にも公爵令嬢様がクソアマどもって……


「キュー! 今すぐに私をテオドール様のところに連れていきなさい! ハリー、ハリー、ハリー!」


 ハリーというのは英語だったと思うんだけど、この世界でも使われてるらしい。私みたいに転移して来た人でもいるのかな? あ、私はこう見えても英語もアラビア語もいけるよ。だいたい語学はどこで活動するにも大事だから叩き込まれたもんね。まあアフリカの少数民族のやつとかは余程のマニアじゃないと修得してないけど。


 あまり待たせるとヒルダさんが怒るので仕方なく転移テレポートした。一回に転移する距離もだんだん伸びてきたんだよね。これって使ってる間にレベルアップしてんのかな?


「テオドール様!」

「なっ、ヒ、ヒルダ!? どうしてここへ……はっ、キューか!」


 私がテレポートアウトすると、そこにはおっぱいぷるーんなお姉さんに囲まれているテオドール……がいた。唯一の救いは顔が緩んでなかったところだろうか?


「テオドール様?」

「ち、違うのだ、これは! こ、これは、その、この街の顔役たちがせめてものお礼にと」

「テオドール様にはその乳娘たちが「お礼」になるということですね?」

「い、いや、そういう訳では」

「女性の価値は胸ではないと言ってくださったのは嘘なのですね?」

「そ、そんなことはない! わ、私はヒルダ一筋だ!」

「でしたら、そのもの達を下がらせて貰えますか?」


 ヒルダ様の周りの温度が五度ぐらい下がった気がした。えっと、ヒルダ様もしかして魔法使った? いや、使ってるの見た事ないよね。


「ま、待て、落ち着け。そ、そうだな。すぐだ。すぐ退いてもらう」

「ええー、テオドール様のお妾にしてくれるって約束はどうなったんですかぁ?」

「そんな約束などしておらん!」


 ヒルダ様のテオドールを睨む目に力が入った。アイスビームでも撃ちそうな冷ややかさだ。


「まあまあヒルダ嬢、あまり息子を虐めないでくれ」

「お義父様?」

「なあ、ヒルダよ。私もいるのだが」

「あら、娘の恋路を邪魔しようとしたミルドレッド公爵様ではございませんか」

「やめてくれ! 他人行儀なのは堪える。今回の事は謝るから!」


 どうやらテオドールへの追及の矛先は父親であるミルドレッド公爵様に向いた様だ。まあなんというか婚約破棄寸前だったもんね。


「テオドールよ、きちんとヒルダ嬢にはフォローしておけよ」

「そんな、元々は父上にあてがわれた女たちではありませんか! 私としては困り果てていたというのに。モンスターと違って弾き飛ばす事も出来ませんし」


 あー、なるほど。テオドールは膂力が凄まじいから下手をすると女の子を弾き飛ばしちゃうのか。まあそれで打ち所が悪かったら寝覚めが悪いよね。


「嘘です! テオドール様はいつでも優しく私を抱いてくださってます!」


 おおっと、ここで爆弾発言か? いや、許嫁だからいいのか。いや、良くないかな。だってミルドレッド公爵が泡吹きそうになってるもん。


「いや、その、本当の意味でヒルダを抱いたことはないのだが。抱きかかえるとかハグ程度で。それに俺はヒルダ以外に優しくすることなど出来んよ」

「テオドール様!」


 ヒルダ様の機嫌が治ったみたいで何よりです。ヒルダ様は群がる女たちを取り除き、テオドール様の胸に飛び込みました。いや、本当にぽいぽいみたいな感じで取り除いてたんだよね。


「女性たちよ、すまんな、私の息子が。お詫びに酒も食べ物も好き放題してくれ。今日は私の奢りだからな」


 そりゃあ戦勝パーティでお金とってたらケチくさいとか言われるでしょうよ。いやまあ私も好き放題食べますけど。


「キューちゃん」

「あ、エレノアさん」

「大活躍だったわね」

「エレノアさんこそ。すごい魔法でした」

「あんなのしか取り柄がないのよ。それに軍隊を丸ごと転移させてきたあなたほどじゃないわ」

「あー、まあ、建物とかは無理ですけど、人間ならある程度の人数までは大丈夫ですかね?」


 照れながら答える。実際、私がこの世界に来るまではそういうのなかったんだよね。この世界に来てから開花したというか。というか転移が発動したから研究所から逃げ出したんだけど。


「それでね、キューちゃんにお願いがあるんだけど」

「なんでしょうか?」

「森の奥まで冒険者を派遣したいのよ」



 森。この場合はエッジの街のすぐそばにある魔の森だろう。今回の森林暴走オーバーランで森の奥がどうなってるかを調査し、場合によっては間引く必要があるのだそうな。


 まあエレノアさんには沢山世話になったし、それなりにギルドマスターのアリュアスさんにもお世話に……あ、いや、そっちは返したよね。代官の件で。あー、でもベルさんにも服とかご飯とかでお世話になったもんね。つまり、ギルドにはそれなりの恩義がある。


「いいですよ。あー、でも公爵様に許可を貰わないと」

「こっちは心配するな。後は凱旋帰国だ。息子と一緒にゆっくり帰るさ」


 どうやら公爵様の依頼はこれで終了らしい。事務仕事はいいのかと聴きたかったが、ヒルダ様が手伝ってくれるので早く終わるそうだ。やっぱりヒルダ様傑物なんだな。果たしてそこから一週間程度で書類の山が全部片付いたんだって。その間テオドールはひたすら剣を振ってたって。

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