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風呂(episode34)

ちょっときな臭い清秋谷。

 結局押し切られて諾子なぎこさんと一緒にお風呂に入りました。正直言えば、諾子さんは綺麗だ。おっぱいはそれなりだけど、全体的な均整が取れているというのか、立ってるだけで絵になる感じだ。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花って言うんだっけ? えっ、生薬? それは知らない。


「まあまあティアちゃんはお肌スベスベなのね」

「ええと、ありがとうございます?」

「うふふ、凪沙ちゃんは凪紗ちゃんで可愛いけど、あの子はタケルのだもんね」

「あの、私は別にタケルの事はどうとも」

「ああ、うん、分かってるわよ。どっちかと言うと凪沙ちゃんの方に懐いてる感じよね」


 あー、まあタケルはタケルで世話になってるし、五行の話も通じるから情報源としてはありがたいけど、男女の仲になれるかと言えばやりたくない。凪沙があれだけ好き好きオーラ飛ばしてるから気が引けるってのもあるけど、個人的にもあんな貧弱なのは好みでは無い。


「タケルもやる時はやるんだけどねえ」

「あ、そこは疑ってはいませんよ。タケルは多分いい男だと思います。私の好みと会わないだけで」

「まあ嬉しいわ。タケルとも凪沙ちゃんとも仲良くしてあげてね」

「いえ、それはこちらのセリフです」


 この世界に来てタケル、凪沙は私のそばにいてくれた大事な友達だ。向こうの世界にいたらおそらく私は冒険者としてそれどころじゃない日々を送っていたのだろう。そう考えると私の代わりにあの世界にいる彼女、キューが不憫に思えてくる。しかし、もどる術などないのだ。


「そういえばあの子たちに魔法を教えてるって聞いたわ」

「えっ? いや、どうしてそれを」

「母親ですもの。ねえねえ、私も出来るかしら?」


 諾子さんを見る。多分タケルが出来たんだから血筋的には出来ないことはないと思う。とりあえず魔力を流して見ればわかる。


 まずは水門の魔力を流す。これはすんなり流れる。続いて木門の魔力を……流れない。抵抗されてる感じがする。これは金門っぽい。


「諾子さんは金門の魔力を持ってますね」

「まあ、私にも出来そうね。なんだか温かいものが身体を駆け抜けて行ったわ。なんというか私のメモリアルね」


 好きとか嫌いとか最初に言い出しそうなメモリアルの話はおいておいて、風呂の中だと金門の魔力が暴走した時とか怖いので風呂から出てからやる事にする。いや、別に教えなくてもいいんだけど。


 金門の魔術は肉体強化、武器強化、加工、変形、創造と多岐に渡る。割と汎用性のある魔法だ。とりあえずは肉体強化辺りから始めてもらう。お風呂から出たばかりなので簡単なところで鉄玉を作ってそれを砕くみたいなのをやってみる。


 鉄はどこにあるのかって? 割とその辺の土の中に含まれてたりするんですよ。あ、汚れるから抽出は私がやりました。


「ええと、これを潰せるようにすればいいの? いやだわ、私か弱いからこんな硬いものを握りつぶすとかできる気がしないわね。でも、魔法が万能だっていうなら頑張ってみる価値はあるものね。だって、四季咲しきざきの力じゃない、私自身の力ですもんね。私はドジだから料理とか掃除とか洗濯とか人一倍頑張ったわ。最初はダメでも少しずつ習得していったのよ。だからこれだってきっと出来る。いえ、やってみせるわ。そういえばタケルと凪沙ちゃんは今頃ラブラブしてるのかしら? 気になるわね〜」


 などと諾子さんは独り言を言っていたが、言ってる最中に既に鉄玉は壊れていた。あの、喋りながらやるとかどれだけ。初心者は集中するのにもコツがいるって先生が言ってたのに。


「あら、割れちゃったのね。ティアちゃんの教え方が上手いからだわ、ありがとう」


 ニコニコしながら諾子さんに抱きしめられた。そして私は帰ると言ったのだが、諾子さんに放して貰えなかった。諾子さんはオーナーに電話をかけると私の休みまでもぎとって私を無理やり泊まらせたのだ。


 眠れないから寝床から出て台所で水を飲もうとしたらメイがコップの水を差し出してくれた。


「ありがとう」

「メイドの勤めですから」

「諾子さんも強引だよね」

「仕方ないと思います」


 メイが何か仕方ないと言ったことに違和感を覚えた。もしかして私が泊まらなきゃいけない理由でもあったのだろうか?


「本日の清秋谷けいさつでの振る舞いで、あなたを清秋谷のコマとして使おうと画策してる一派が狙っていましたから」


 ……は?


「もちろん、署長や、若林様などは清秋谷の中でも穏当な一派ですが、中には伽藍堂ぐんたいに負けるものかと考えてる奴らも居まして」

「そいつらが、私を?」

「はい、小娘一匹で大火力が得られるとなれば」

「ええと、それって大丈夫なの?」

「ここに居られれば、四季咲が手を出させません。四季咲に下手に逆らえば破滅ですから」


 思ったよりも大事になってるみたいだった。ということは……


「ほとぼりが冷めるまではお仕事の方にも出ない方がよろしいかと」

「ええー、それだと私、生活出来ないよ」

「ご心配なく。ここに留まってる間の生活費は全て四季咲がもちますので」


 なんか悪い気もするけど、利害の一致ではあるので任せてみてもいいかもしれない。タケルや凪沙とも連絡つきやすいしね。


「ええと、それじゃあお世話になります」

「こちらこそよろしくお願いします。私がしばらくの間こちらに一緒に留まりますので」


 メイは別に戦闘能力ないんだから留まっても留まらなくても関係ないと思うんだけどなあ。あ、私の身の回りの世話係かな?


 その夜はそのまま就寝した。明日仕事に行かなくていいと思うとなんか悪いなあって気もするし、ゆっくり眠れることにありがたさを感じたりもする。


 翌朝、朝食の席には凪沙も座ってた。いや、凪沙もお仕事は?


「休み取ってきた。どういうことか説明してもらおうと思って」


 私も凪沙もいなくてあのお店大丈夫なのだろうか、とは思ったが、そもそも人数は足りているらしい。それじゃあオーナーは本当に私の為に雇ってくれてたのか。有難くて仕方ない。

立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花

というのは生薬の用法で

立つ=気が立っている。芍薬の根を使う。

座る=(疒+於)血。牡丹の根の皮を使う。

歩く=心身症によるなよなよ歩き。百合の球根を使う。

らしいです。初めて知りました。

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