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引取(episode33)

警察に連行されたあとからタケルの実家まで。

 なんか取調室ってところに入れられた。通算二回目だ。前と同じ様にガタイがゴツい男が二人いた。あれ? 前は一人だったよね?


「悪いがお前が暴れた時な取り抑えるのが必要だからな」


 ジャック……じゃない、若林さんが頭を抱えながら言う。うーん、特に暴れるつもりはないよ。あれはおっぱいを揉まれそうになったからで。


「いや、デカいからっていきなり揉んだりする訳ないだろうが。凶器がないかどうかを確認しようとしてたんだよ」

「明らかに視線がおっぱいだったけど?」

「それは、まあ、男だったらそっちに目が行くのは仕方ないと思うぞ」

「ジャックも?」

「ジャックはやめろ!」


 誤魔化された気もしたが、本筋とは関係ないので割愛しよう。


「それで、あそこで何やってたんだ?」

「えーと、魔法の実験?」

「魔法の実験っておめぇ……あ、いや、なんもないところから水出してたな」

「そうそう。火門は苦手だからどうかなって思って」

「カモン? 誰か呼んでたのか?」

「違うよ、火を操る魔法の種類だよ」


 全く、魔法に縁のない人はこれだから。いや、向こうの世界では魔法に縁がなくても木火土金水くらいは知ってた……よね?


「あー、わかった。その火門の魔法やってみたらデカいのが出来たって話か」

「そうそうそうなんだよ。私もびっくりしちゃってさ」

「本人にびっくりされてもなあ。まあいい、犯罪性はなさそうだから引受人が来たら帰っていいぞ」

「あ、私カツ丼食べたい」

「とってもいいが金払うのはお前だぞ?」

「そうなの? じゃあいいや」


 そうこうやってたら警察署の中が騒がしくなった。何があったんだろう?


「お姫様のご登場だろ、ほらお迎えだろうぜ」


 喧騒が徐々に私たちのいる取調室に近付いて来たかと思うとバンッとドアが開けられた。


「お迎えに上がりました、ティア様」

「いや、ティアって呼べって言ったよね、メイ」

「対外的な場所ではその場所にふさわしい言葉を選ばねばなりません。家の中のようなプライベート空間とは違うのです」


 そこに立っていたのはメイド姿で静かに佇むメイであった。あれ? 私が呼んだのは諾子なぎこさんだよね?


「私は露払いでございます。太刀持ちはいませんが」

「たちまち? よく分からないけどまあ諾子さんは来てるんだよね?」

「ええ、ただいま署長殿と談笑しておいでです」


 どうやら諾子さんは署長さんとやらに捕まってるらしい。あら、私の引き取りに来たのに、捕まっちゃうのは計算してなかったなあ。私はなんというミスを!


「あらあら、署長さんも大変ねえ」

「ええ、ですからここはひとつ、諾子様からお父様にお口添えをいただけないかと」

「そうねえ。ティアちゃん次第かしら」


 あ、こっちに来てる。力関係のバランスがおかしいような気もするけど、諾子さんは捕まったんじゃないの?


 部屋に入って来たのはニコニコしてる諾子さんとヘコヘコしてる署長らしきヒゲオヤジとペコペコしてる秘書らしき人物。諾子さんにはメイが居るから署長さんの秘書なんだろう。


「やっほー、ティアちゃん」

「あ、諾子さん。わざわざすいません」

「いいのよ。凪沙ちゃんのお友だちでタケルとも仲良くしてくれてるんだもの。これくらいなんでもないわ」


 諾子さんはニコニコしながら私の手を取った。そして私を助け起こして椅子から立たせた。


「おいおい、取調室から勝手に連れて行くなよ」

「いいじゃないの、ジャック。私とあなたの仲でしょう?」

「あのなあ、ジャックはやめろ。俺はお前の旦那とは昔からの友だちだが、四季咲しきざきのお嬢様とはなったつもりもないぞ?」

「冷たいのねえ。ダーリンの友だちは私の友だちでもあるのに」


 関係がよく分からないが、どうやら若林さんはタケルのお父さんとは友だちらしい。どこで繋がってるのか分からないね。それにしちゃあ前にタケルが捕まった時には何も反応してなかったんだけど?


「公私混同はしねえんだよ」

「まあご立派。いい子いい子してあげるね」

「やめろこのバカ!」

「若林君! 君は四季咲のお嬢様になんということを!」

「いや、署長。こいつは四季咲の娘扱いされる方が嫌なんですよ、バカって言われるよりね」

「あぁん、バラしちゃダメじゃない」


 諾子さんが微笑みながら言う。よく見たらこの人、目が笑ってないんだけど。


「けっ、このままほっといたら署長が更迭さらるかもだからな。割と清秋谷けいさつの中ではマシな方なんだ。勘弁してくれ」

「あらぁ、残念ね。せっかくジャックを署長にしてあげようかと思ったのに」

「マジでやめろ。俺は現場が好きなんだ。出世に興味はねえよ。あと、ジャックはやめろって言ってんだろうがよ!」


 諾子さんが今度は本当に目から笑ってる。このやり取りが楽しいのだろう。


「じゃあ若林刑事、この子は連れて行きますね」

「もう好きにしてくれ。事件性はなかったんだ。これ以上留めおく訳にもいかん」

「じゃあ帰りましょうか」


 私は諾子さんに連れられて取調室を出ようとする。


「おい待て」

「なに? まだ何かあるの?」

「そいつ、カツ丼食いたかったみたいだから食わせてやれよ」


 それを聞いたら諾子さんがあははと笑い出した。そして


「そうね。じゃあカツ丼の材料買って帰りましょうか」

「諾子様、カツ丼の材料は私が揃えますのでティア様をお風呂に入れられては?」

「そうね! 警察署みたいな汚いところに入れられたんですもの。洗わなきゃね!」


 いや、警察署の中は割と綺麗に掃除されてて埃とかも特にはなかったんだけど。でもまあお風呂に入りたかったのはあるので素直に従うことにした。


 家に帰ってお風呂を沸かすのかと思ったら既にお風呂は沸いてるとの事。この家の主人、タケルのお父さんが入るためだと思うんだけど、私が先に入ってもいいのかな? えっ? 私のエキスが出るから大丈夫? それは全然大丈夫では無いのでは?


 しかも諾子さんもお風呂に一緒に入ろうとしてるし。あの、私、一人でもお風呂使えますからぁ!

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