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教練(episode31)

魔法の道は一日にしてならずぢゃ!

 わくわくが止まらないのか、凪沙がタケルの手を振り払うように退けて私の手を握る。そこに水門の魔力を流していく。普通に流れるね。いや、むしろ流れやすいかな?


 魔力の質を変えてみよう。身体強化に使う金門の魔力を流して……あ、やっぱり流れないか。抵抗されてる感覚だなあ。


「ねえねえ、私も火門?」

「いや、凪沙は木門だね」

「ええと、木門ってどんなのだっけ? 植物?」

「風とか雷とかも木門だよ。ほら、何とかっていう木星の女の子の戦士が雷使ってたでしょ」

「あー、そうだね。真子ちゃんだ」


 どうやらタケルに教えてもらったやつで良かったみたい。というか五行思想に基づいてアニメとか作ってたりするのすごいよね。


「じゃあ私もやってみたい! ほら、超雷撃魔法、何とかサンダー何とかー!」


 もちろん掛け声だけで出るわけが無い。というか二人の魔力量だと、発動してもタケルは火花ていど、凪沙はビリッとくる程度だと思う。私も雷はちょっと苦手だからなあ。


「ええと、属性がわかったので、次に体内の魔力を鍛えます」

「はーい!」


 凪沙が元気よく返事をする。タケルは魔法がすぐ出来なかった事にとても残念そうにしている。


「まず、体内に魔力を生み出してそれを循環させます」

「魔力、循環」

「体内でぐるぐる回す感じかな」


 魔力をまずは感じる様に出来ないといけない。この場合、他人の魔力ではなく、自分の体内にある魔力だ。慣れてくると空気中にある魔力を使ったり出来るんだけど、この世界、魔力薄いんだよね。


「ねえねえ、この世界って世界樹とかなかったりする?」

「えっ、聞いたことない」


 どうやらタケルは世界樹という単語は知っていてもこの世界には無いと思ってるみたい。少なからず魔力はあるからどこかにはあると思うんだけど。


 まあ今は魔力の循環だ。ぐるぐる回すよ。それ、いちに、いちに。私は自分の体内で魔力を循環させ始めた。色とか付けられたら私の体内を魔力がどう回ってるのかを見せる事も出来たんだけどなあ。


 凪沙もタケルも魔力を捉えきれてないからか循環が始まらない。仕方ない。まずは凪沙からだね。私は凪沙にゆっくり近づいて背中に手を当てる。


「ひゃう!?」

「落ち着いて。ちょっと波を流すから」


 私は凪沙の背中から波紋状に魔力を流す。私が水門に長けているから波紋を作り出すのは得意なのですよ。教える時に水門は便利。だから教える人は水門の使い手が多い。二番目くらいが木門かな。


「あー、なんか、身体の奥に、響いて、くる」

「そうそう。落ち着いて感じて」

「あ、んんっ、ちょっとくすぐったい」


 なんか悶え始めた。魔力に慣れてないからかな。ゆっくり波を強めたり弱めたりして、凪沙の中にある魔力を際立たせる。


「あ、これかな?」

「多分それ。それをゆっくり移動させてみて」


 凪沙が魔力の塊を掴んだみたい。それを循環させるんだけど、イメージがね。ぐるぐる回すのはどういえばいあんだろう。


「凪沙、血液循環だ」

「あ、うん、よく分からないけどやってみる」


 血液循環というのはよく分からないけど何か身体中をぐるぐる回ってるらしい。そんなの知らないんだけど。


 魔力を見てるとゆっくりと体内を動いている。もちろんそこまでスムーズにとはいかないけどちゃんと循環してる。暫くは大丈夫だろう。


「次はタケルの番だね」

「お願いします」


 タケルにも背中から波紋を流そうとして、流れないのを確認する。そういえば火門だった。私はすぐさま木門に切り替える。魔法を使う訳でもないし、風を送るくらいだから大丈夫だろう。タケルの身体の中に小型の竜巻を生じさせ、それをゆっくりと進めさせる。


「これ?」

「あ、多分」


 タケルは割とすんなり塊を見つけられたようだ。そこから塊を体内に循環させていくんだけど。


「動かない」


 どうやらタケルの魔力の塊は動かないようだ。動かざること山の如し。いや、土門じゃあるまいし。火門は割とアグレッシブに動くって聞いたことあったんだけど。


「あー、タケル? 無理に動かそうとしないで。そうだなあ、あっ、火が燃え広がるみたいなイメージでいこう」

「火が、燃え広がる?」


 燎原の火という言葉がある。野原に火が燃え広がる様に止めようのない勢いだ。なんでも酸素とかいうものがあるからよく燃えるとか。まあ私からすれば、野原みたいな木門の気が強いところならそりゃ燃えるでしょ。木生火だよ。


 タケルに言うとこくりと頷いて体内に集中する。タケルの身体の中の炎が揺らめいて少し広がった気がした。


「はあ、疲れたあ」

「やっぱりすぐには出来ないよね」


 二人は汗だくになりながらもずっと集中していた。おかげで魔力の循環の最初歩、手のひらで魔力を転がすのは少しできるようになってた。ちなみに私は教えられるまでもなく出来てたけどね! じまぁぁぁぁん!


 二人には私がいない所では練習しない事を約束させた。これは魔力の循環はとても疲れるからへばると体力だけじゃなくて魔力を回復させないといけない。私なら水門の回復魔法で補助が出来るからね。


 というのが建前。本音としてはこのまま修練していくとある日突然爆発したりするんだよね。特に爆炎と暴風の可能性がある火門と木門だからね。そうなった時に私じゃないと止められないと思うんだ。魔法なんてきっかけさえあれば突然出来たりするからね。あー、そういえば私の魔法も強くなってないかなあ?


 この世界は魔力が少ない世界だから魔力の高負荷トレーニング?みたいな感じになってると思うんだ。だから魔力使うのが上手くなったりしてたりしないかと思うんだけど。


 とりあえずチェックしてみよう。水門は後回しでいいや。これでも上位くらいまでは出来そうな気がするし。まずは木門かな。凪沙がやってるし、タケルに教えるには強くしないといけないしね。


 うん、そよ風は生むことは出来てたんだけど、今の私はどうなんだろうか? 私はこの世界に来た時の川べりに向かった。

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