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贈物(episode29)

発動させるかどうかは迷ったんですが、タケルの為に。

 ご飯をいただいた後に、みんなでシャンパン……私だけなんかジュースを貰ってプレゼントを渡すことに。


「はい、タケルちゃん、プレゼントよ。パパのもあるからね」


 タケルの父からのプレゼントは万年筆というアナログな筆記具らしい。いや、本当にアナログな筆記具とかほとんど使わないと思うんだけど、なんでも皇族の公式書類とかは今もアナログ筆記具を使ってるらしい。それに倣ってアナログ筆記具を渡されるというのはあるそうだ。なるほど。


「こっちは母さんからね」


 タケルが怪訝そうな顔をしながら包みを開けるとそこにはフリフリのドレスが入っていた。そして、なんかうさぎの耳の様なアクセサリーもある。なんなんだろうと思っていると諾子なぎこさんは言った。


「サイズはちゃんと凪沙ちゃんのにしてあるから頑張ってね!」


 拳を握りながら何故か人差し指と中指の間から親指をコンニチハさせている。凪沙を見ると真っ赤になっていた。そして何故かタケルが激怒していた。


「かっ、母さん!」

「いやーん、頑張ってねー」


 そしてプレゼントはタケルのもののはずなのに何故か凪沙が受け取っていた。ボソボソと「せっかくだから」とか「まだ心の準備が」とか言ってるけどタケルも何も言ってないから良いんだろう。


「タケル、そ、それじゃあ、これは、私から」


 凪沙が照れながらプレゼントを渡す。包装もおばあちゃんに習って自分でやったやつだ。ガサガサと包みを開けて出てきたマフラーにタケルは少し呆然としていた。


「あ、気に入らなかった?」

「う、ううん、すごく嬉しくて。ありがとう、凪沙。大事にするよ」

「あ、うん、せっかくだから使って欲しいんだけど」

「あー、そうだね。でも勿体なくて使いたくないなあ」


 そんな事を話しながらいい雰囲気になっている。このまま私のプレゼントを渡さないで二人きりにしてあげた方が良いのでは?と思ったのだが、そうは問屋が卸さなかったようだ。


「あ、そうそう、ティアもタケルにプレゼント用意したんだよね?」


 なんか雰囲気にいたたまれなくなった凪沙が私に話を振ってきた。いや、私は別にいいのよ?


「あー、ティアのも楽しみだな、どんなものなんだい?」


 いや、凪沙のだけで充分でしょ。でもまあ色々あったから持っとくべきだとは思うんだよね。


「はい、じゃあこれ」

「なんだよ、これ?」


 タケルは私が渡した石ころを見て頭にはてなマークを浮かべていた。そりゃあそうだ。魔力を感知できないこの世界の人なら、これは単なる石にしか見えないだろう。


「まず、これを握ります」

「うん」

「そして目標を見ます」


 タケルはキョロキョロしていたので、部屋の壁を指さしてあげた。


「そしてこうさけびます。火門〈炎弾ファイアブリッツ〉と」

「ええと、火門〈炎弾ファイアブリッツ〉? うわっ!?」


 おや、出ないと思ったら出ましたね。炎が何発か連なって壁に突き刺さります。あ、壁が燃えてる。これはまずいのでは?


「おおっと。水門〈水噴射スプラッシュ〉」


 私の手から水が出て火を消し止めた。ふう、危ないところだった。


「な、な、な、なにやってんのよ!?」


 何やってるって言われてもこの世界の人間に魔法を発動させることが出来るとは思ってなかったもん。もしかしてタケルにはそういう才能が?


 タケルは炎弾を撃った後に呆然としている。私はタケルの手からそれをもぎとった。なんらおかしいところは無い。ちゃんと私が使えば発射できるように出来ている。


 タケルが発射できるならそれでもいいが、そうでない時は私が発射するつもりだったのだ。というかむしろそのためのものだ。まさかタケル自身が魔法撃てるなんて思ってもみなかった。


「これは、魔法かい?」

「え? あ、うん、多分私たちの世界の魔法」

「ぼくは魔法を撃ったのか」

「そうだね。撃てるとは思ってなかったけど、どうやら素質あるみたい」


 それを聞いてタケルは私にしがみついた。あ、ダメだよ、タケル。凪沙が見てるから。それにそんなに私の事が魅力的に見えても私は凪沙と違ってタケルみたいなヒョロガリくんは好みじゃなくてもっとこう筋肉がしっかりしてて……あれ?


「ティア、いや、ティア師匠! お願いだ、ぼくに魔法を教えてください!」


 師匠! なんていい響きだろう。でもダメダメ。魔法を教えるには魔法使いに認定されて五年の経験を積んだ後に弟子取り試験に受からないと弟子を取れないんだから。もし、弟子を取ったら魔法協会からお咎めが……


 ん? 待てよ? この世界は魔法協会とかないんだよね? という事はお咎めをしてくるところもなければ、そもそも弟子取り試験を受けるところもない。つまり、やりたい放題だ。魔法の規制もないもんね。うーん、それはそれでどうかと思うけど。そもそも許可が必要になる様な魔法なんて覚えてないし。


「ええと、その、タケルが望むならまあ、教えてあげないこともないよ?」

「本当に? ありがとう!」

「わ、私もやる!」


 タケルが感動して私の手を握って来たと思ったら今度は凪沙が声を上げた。えっ、凪沙もやるの? ええと、でも凪沙が魔法を発動出来るのかどうかは分からないんだけど?


「お願い、ティア!」


 いやまあ見込みなくても教えるくらいならまあ。タケルもやるんだし、一緒にやるならそこまで手間でもないしなあ。あ、でもタケルにあげた魔道具とは違うものを作ってあげないといけないかなあ。


「あ、そうだね、とりあえず何とかしてみるよ」

「ありがとう、ティア!」


 凪沙がタケルの手を振り払うようにして私の手を握ってくる。よせやい、ちょっと痛いんだけど。痛い痛い痛い、放して、凪沙!


「あらあらまあまあ」


 諾子さんが笑いながら見ている。いや、見てないで止めて欲しいんですけど!


 結局、二人に魔法を教えることになったんだけど、教える日は私と凪沙が一緒に休みになる日、パチンコ屋の店休日に決まった。まあ二週間以上先だからその間に準備はしておこう。

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