晩餐(episode28)
後書きに完全版載せました。こっちの方が疲れるわ。
玄関先でキャーキャー騒がれながら家にも入れず帰ることも出来ずに途方に暮れていたら、タケルがビニール袋を持って帰ってきた。
「母さん」
「あらタケル。おかえりなさい。今ね、凪沙ちゃんにお義母様って呼ばれちゃった!」
「あ、うん、良かったね。それより料理が冷めちゃわない?」
「そうね! 私としたことがごめんなさいね。さあ、みなさん、入ってちょうだい」
タケルが淡々と諾子さんの相手をしてくれて私たちはやっと家に入ることが出来た。
家の中は程よく整頓されているが、豪邸と呼ばれるほどの大きさは無い。むしろ、ファミリーアニメのごく普通のサラリーマン家庭のサイズのハウスだ。
「タケルは家を建て替えたりする気はないのか?」
「あんまり広すぎると掃除が行き届かないからダメだって母さんが」
どうやら建て替える資金はあるけど諾子さんがダメ出ししてるらしい。この人、本当にお金持ちのお嬢様なのだろうか?
タケルと凪沙に聞いた話ではあるが、四季咲というのはこの八洲の国の金融を握っている。主要銀行は全て四季咲の資本が入っているか、四季咲傘下。保険、証券会社にしても四季咲関連ばかり。名前に四季咲が使われてなくても全て四季咲である。海外資本の金融会社も四季咲の資本を入れてなければ八洲で活動すら出来ない。
いわゆる八洲最強のお金持ちである。もちろん、その四季咲は地位を磐石にする為に警備会社という名の私設軍を持ったり、各国へ諜報機関を派遣したり、国内流通を担ったりしている。そして、他の八家との繋がりも重視しており、特に重視しているのが清秋谷と古森沢である。
そんな四季咲の深窓の姫君たる旧姓四季咲諾子は学生時代に外を見てみたいと四季咲の私学でなく、皇立学校に通い、そこで古森沢のタケル父と出会って恋に落ちたのだ。
すったもんだがあって駆け落ち騒動にまで発展した挙句、「まあ末端とはいえ古森沢だしな」という曾孫娘に甘々な曾祖父の一言があり、無事ゴールイン。最終手段として既に「既成事実(諾子の方から押し倒した)」を作っていた為、結婚式などは行わず、秘密裏に入籍されたそうな。その時の子どもがタケルである。
タケルは自嘲しながら言っていた。なんか古森沢の親戚はまあ優しいけどどこかよそよそしくて優しくしてくれたのは源三おじさん(オーナー)だけだったと。で、四季咲の方は行くともみくちゃにされるくらい可愛がられるので足を踏み入れたくない、と。
まああの諾子さんの歓待ぶりを見ていたら四季咲の血筋というのはそういう所があるのだろうなと察する。タケルもそこが諾子さんに似ていたら凪沙も安心なのに。とボソリと呟いた。
「いや、間違いなくタケルにも四季咲の血が引き継がれてるよ」
凪沙はそう言っていた。それはそうだ。古森沢にありながら株式相場、デイトレードで資金を増やしているタケルだもの。お金に対する嗅覚は並大抵では
「違うよ、そうじゃないのよ。私が前にタケルをびっくりさせようと部屋に行ったんだけど」
レウゼ!レウゼ!レウゼ!レウゼぇぇぇぇええわぁああああああああああああああああああああああん!
あぁクンカクンカ!スーハースーハー!いい匂いだなぁ……くんくん
んはぁっ!レウゼ・フランシーヌたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!
そう言いながらそれ以上耐えられなかった凪沙はそっと扉を閉めたそうだ。なお、レウゼ・フランシーヌというのはタケルのハマってるアニメに出てくるツンデレ魔女っ子の名前なんだとか。うん、これ以上聞くと戻れなくなる道に踏み込みそうだ。
「みんなー、ご飯よー」
諾子さんに呼ばれて食卓に向かうとテーブルの上には所狭しと料理が並べられていた。そういえば師(凪沙)に聞いたことがある。古来八洲の一地方がまだ中国という国だった頃、旅人を歓待するのに食べきれなかった分を使用人に分け与えるという風習から食べきれない量の料理を食卓に並べるのがおもてなしだったと聞くが、もしかして四季咲というのはそういうもの伝統を大事にしてるのだろうか?
「タケルちゃんの誕生日にご馳走作ろうと張り切ったらちょっと作り過ぎちゃった(てへぺろ)」
などと諾子さんがにこやかに言うのでどうやら単に作りすぎただけみたいだ。仕方ないのでこの大量の食料を食べ切れるように頑張ろう。うん、頑張ってみるから骨は拾って……あ、そうか、凪沙も一緒に食べる一蓮托生だったね。こういうのをズッ友っていうんだっけ?
私はまずは食べてみようと食物に口をつける。あら、美味しい。なんだろう。なんだか安心出来る味だ。許されるなら三食これを食べたいくらいだ。持って帰れないかなあ?
そういえば食べ物の保存方法に冷凍保存というのがあるらしい。物を冷やして長持ちさせるのだそうな。余ったらやってみたい。でも、冷やすのって火門なんだよね。私は体内の魔法が五行思想でいうところの水門に寄っているので火門は少々というかだいぶ苦手なのである。解凍自体は家に電子レンジというものを導入しているので何とかなるんだけど。
お腹がはち切れるまで食べたけど、料理は半分以上残っている。このまま残したら諾子さんに申し訳ない。何とか何とか持って帰りたい。主に私の食料事情のために!
はっ、そういえば凪沙が他にも保存方法があると言っていた気がする。それは、真空パック。ええと、確か入れ物の中を真空にして状態を保つんだったかな。そっちなら上手くいきそうだ。空気を操るのは木門、入れ物は金門で作れば完璧。
私は金門の魔法を発動する。テーブルの上を金属の箱で覆った。突然現れた箱に三人とも驚いている。次に内部を真空にする。この真空というのはよく分からないけど空気がない状態なのだそうだ。だから中から空気を抜いてやればいい。木門の気を全部外に出せば真空が完成する。
「残ったのはいただいて帰りますね!」
私が笑顔で言うとタケルに突っ込まれた。
「持って帰るのはいいけど、その重さの金属の箱をどうやって持つんだ?」
しまった、運ぶことまで考えてなかった!
レウゼ!レウゼ!レウゼ!レウゼぇぇぇぇええわぁああああああああああああああああああああああん!
あぁクンカクンカ!スーハースーハー!いい匂いだなぁ……くんくん
んはぁっ!レウゼ・フランシーヌたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!レウゼレウゼレウゼレウゼぇぇぇええぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!スーハースーハー!いい匂いだなぁ……くんくん
んはぁっ!レウゼ・フランシーヌたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ……きゅんきゅんきゅい
原作七巻のレウゼたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ……あああ……あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ決まって良かったねレウゼたん!あぁあああああ!かわいい!レウゼたん!かわいい!あっああぁああ!
コミカライズも発表されて嬉し……いやぁああああああ!にゃああああああああん!ぎゃああああああああ!
ぐあああああああああああ!コミックなんて現実じゃない!あ……小説もアニメもよく考えたら……
レ ウ ゼ た ん は 現実 じ ゃ な い?
にゃあああああああああああああん!うぁああああああああああ!
そんなぁああああああ!いやぁぁぁあああああああああ!はぁああああああん!
この!ちきしょーめ!やめてやる!現実なんかやめ……て……え!?見……てる?表紙絵のレウゼたんが僕を見てる?
表紙絵のレウゼたんが僕を見てるぞ!挿絵のレウゼたんが僕を見てるぞ!
アニメのレウゼたんがぼくに話しかけてるぞ!よかった……世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!僕にはレウゼたんがいる!やったよモビィ!ひとりでできるもん!
あ、コミックのレウゼたああああああああああああああん!いやぁあああああああああああああああ!
あっあんああっああんあアンヌ様ぁあ!カ、カリバー!贄殿ぉおおおお!アンリエッタぁあああ!
ううっうぅうう!俺の想いよレウゼへ届け!シクスティアのレウゼへ届け!俺は実はアルス萌えなんだっ!