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魔石(episode26)

一揉み四万円(露天商基準)

 それからジャック……じゃない、若林さんは赤鷺金融に立ち入り捜査をしたそうな。そうすると確かに海外との繋がりの証拠がいくつも出てきて、正式に抗議しようという事で、外交担当の妖世川あやせがわに話を持って行ったそうな。


 それからあとはどうなってるのかは全く伝わってこない。まあ国家の運営に関することだと思うんで私たちで関与するのはどうかと思うし。


 ともあれ、私たちは続けておばあちゃんのお店に通ってる。この度の件で皇都に住む息子さんから土下座をされたらしい。なんというかカジノで借金作ってサインさせられたんだ、騙されたんだって言ってたらしい。


 いや、そもそもカジノに行っちゃダメでしょ。私らの世界にもカジノはあったけど、貴族階級しか入るのを許されないし、お金が無くなったら邸宅まで来て差し押さえとかするらしいからあまり手を出さないようにする貴族が多いらしい。


 まあ、私の実家であるブルム家の親戚筋にはそれで身を崩した人は居たらしいよ。私はよく知らないけど。まあでも私の兄弟姉妹はろくでもない奴多かったし、あいつらなら破産するまでギャンブルやるかもしれないなあ。


 あ、でもよく考えたらパチンコもギャンブルだよね。もしかして、私はそういうカジノの片棒を担がされた? いやでも、オーナーもタケルも凪沙もいい人だからなあ。他の従業員も優しいし。


 で、それを聞いた他の兄弟二人がおばあちゃんを皇都に呼んで一緒に住まないかと言ってきたらしい。おばあちゃんの答えはノー。最後までこの街に骨を埋めるつもりだと言ってくれた。


「まあ後五十年は生きるつもりだよ」


 なんて言ってたけど、正直言ってこの世界の寿命が何歳なのかは私には分からない。だって私の世界の方の寿命なんて、人間なら年寄りとかほとんど見ないくらいだったもんね。貴族とかにはお年寄りとか多かったりするんだけど。魔法で延命するからなあ。


 この世界は医療機関が発達してるのでおばあちゃんもまだまだ若い方だよって言われた。凪沙の目は絶対違うって言ってたみたいだけど。あ、医療機関も古森沢の担当なんだって。タケルに頼めば大丈夫そうだね。


 今はタケル居ないんだよ。ほら、凪沙の主目的がアレだから居てもらうと困るよね。うーん、私はどっちでもいいからなあ。あ、でもタケルにプレゼントは渡したいよね。ええと、ほら、手作りじゃなくてもさ。


 魔法具はどうしたのかって? いや、作ろうと思ったら凪沙に「絶対やめろ」ってキツく言われたんだよね。何でも今回の件で私たち三人に若林さんじゃなくて、清秋谷せいしゅうやの監視がつくだろうって事らしい。まあ私の素性が超能力者って事ならそれは仕方ないのかもしれない。


 なのでお仕事で貰った給料を使って何か買ってあげることにしたよ。いや、そりゃタケルの方がお金もってるとは思うんだけど、こういうのは渡すことに意味があるからね。


 凪沙は仕方ないよ。ほら、女として見られたいってのがあるからどうしても在り来りなプレゼントじゃだめだろうって考えるんだろうし。私はむしろ十把一絡げ……だっけか。その他大勢よりかは少し上くらいでいいんだよ。


 まあタケルにその他大勢って言われるくらいの友だちがいるとは思わないんだけど。だって凪沙以外と一緒にいるの見た事ないもん。


「そうそう。そこはそうやって指をひっかけてね」

「ええと、こうですか?」

「そつそう。目の数を間違えないようにね」

「はい!」


 凪沙は指先も割と器用みたいだから編み物とは相性がいいのだろう。一週間もしないうちにマフラーが編み上がってしまった。


「出来たー!」

「おやおや、頑張ったね。良く編めてるよ」

「えへへ、ありがとうおばあちゃん」


 照れながら編み上がったマフラーを紙袋に入れていく。そして凪沙は別の毛糸玉を取り出した。


「おばあちゃん、今度はセーター教えて!」

「おやおや、セーターはちょっと難しいかもしれないね。ミトンの手袋辺りにしないかしら?」

「あ、じゃあ帽子も!」

「帽子はどうかしら? タケルに似合うかねえ」

「タケルなら大丈夫!」


 ニコニコしながらも創作意欲が途切れない凪沙に私は凪沙をそっとしておくことにした。私は一人で街に出る。タケルのプレゼントを買ってやるためだ。


 正直リサーチも何も出来てない。行き当たりばったりだ。またあれでも好きなキャラとかはいるはずだから被らないといいなあ。


 ともかく電気街と呼ばれる商店街とは別の通りに顔を出してみる。辺りは少し暗めな印象。露天商とまではいかないけど、売ってるところは胡散臭いのが揃ってる。でもなんか可愛くないものばかりなんだよね。


 私は露天商のひとつから小さな光る石を買い取った。なんでも発光するだけで使い道が分からないんだって。魔力を通してみる。間違いない、魔石だ。なんでこれがこっちの世界に?


「あの、この石貰えませんか?」

「はあ? まあ用途の分からん石だし、アクセサリーにするには綺麗だよな。よし、なら五万で売ってやる」


 恐らく五万円って事だろう。単なる石にしてはぼったくりだ。


「それとも、そのおっぱい揉ませてくれるなら一万円まで下げてやるぜ?」


 あー、お金が欲しくてふっかけてるんじゃなくて私の身体目当てですか。とても気分が悪いですね。とっとと五万円払いましょう。ええ、払えば文句ないですね。


 私が五万円を置くとポカーンとした顔で石を渡してくれた。バカめ。お前等に揉ませるものか。


 アパートに帰ってきて五万円で石ころ買ったと言ったら凪沙に怒られた。まあまあ凪沙、この石は単なる石じゃなくてね。魔法を閉じ込めておく魔石なんだよ。私らの世界では割とありふれてるんだけどね。


 私はその石をテーブルに置いて魔力を流し始める。石の属性を確認しているのだ。どうやら火門に強く反応してるみたいだから火門石ってやつだろう。私は火門の魔法は種火くらいしか使えないから増幅目的だと欲しくないなあ。でも、これだと魔道具は作れそうだね! えっ、作り方? いや、知らんけど何とかなるでしょ。

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