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水壁(episode25)

類似品にフユモ・マシンガンもあります。あー、とまらーなーいー。

「ざっけんなコラー!」


 なんかニンジャめいた雄叫びをあげて、黒服たちがかかってくる。でもアイサツしてこないので多分ニンジャでは無いのだろう。えっ? フィクションなの、あのニンジャとかいうやつ?


「おうおう寄って集ってかかってきやがって。ぶちのめしてやるぜ!」


 若林さんは向かってくる黒服を捕まえては投げ、投げてはぶち当て、ぶち当てては薙ぎ倒し、と獅子奮迅の活躍をしていた。獅子奮迅でいいんだよね?


 他の人がこっちに来ようとしてたのを凪沙がドロップキックで追い返す。凪沙のプロレス技はそれなりに痛い。受け身もちゃんとしてるし。


「おお、乳でか姉ちゃん!」


 スケベソウルを発揮した黒服たちが若林さんを放っておいて凪沙に殺到する。若林さんはそのお陰か物量で押し切られることなく倒せている。まあ若林さんの格闘技能が高いお陰もあるんだろうけど。


「馬鹿野郎! てめぇらは揃いも揃って無能なのかよ! そんなこっちゃ本国ステイツに帰った時にどうなるか分かってんだろうな?」

「それがわかってるかどうかはともかくとして、本国ステイツって事は米連邦の差し金ですね」

「貴様、何故それを!」

「正直、英語って聞いた辺りでそうじゃないかと思ってたんですけど、他にも英語が母国語の国はありますからね。旧大英帝国圏は軒並みそうですから」

「くっ、なんてこった(dumb shit)!」


 あ、それはニンジャも言ってた。やっぱりフィクションでは無いのでは?


 赤鷺金融のボスらしき男は慌てて車に戻り、そして手に何かゴツいものを持っていた。あれは、なんだろう。


「あれは、ナツハ・マシンガン! 米軍で制式採用されてる軍用品のマシンガンだよ!」


 いや、そのマシンガンってのがよく分からないんだけど。あー、もしかしてあの弾が沢山出てくる銃火器?


「連射速度は毎秒三千発、面制圧に適した銃だよ。本物が見れるなんてなあ」


 タケルが目をキラキラさせながら言ってる。いや、その銃が私たちに向けられてるのは理解出来てる。あ、もしかして現実逃避なのかな?


「くたばれぇ!」


 ボスは迷わずこっちに向かって引き金を引く。あなたの仲間が前にいるんだけど、もう関係無さそうだねえ。


「水よ壁となりて、飛来するものを押し流さん。水門 〈流水防御リフレクト〉」な


 私の魔法に店の前に水の壁が現れ、上から下に落ちていく水がマシンガンの威力を無効化して弾いていく。


「な、なんだぁ、こりゃあ!」


 いちばん素っ頓狂な声を上げたのは若林さんだった。ついつい魔法使っちゃった。まああれが当たったら相当すごいことになりそうだから仕方ないよね。


「水(water)……」


 ボスはマシンガンを撃つのもやめて呆然としている。どうやら自分の目で見たことが信じられないみたいだ。


「よし、お疲れさん。事情は署でじっくり聞かせてもらうからな」


 若林さんがいつの間にか呼び寄せていたパトカーに男たちを乗せていく。


「おい、確かティアちゃんだったな」


 なんだろう。守ってやったから身体で払えとか言わないわよね、ジャック?


「あんたのことも詳しく聞かせてもらうからな。まあこっちの取調べが終わってからになるが」


 あー、まあ、ついつい魔法使っちゃったからな。でも大したことない魔法だよ? 水魔法使いならだいたいみんなできるし。って、そういえばこの世界って魔法使い居ないんだっけ。


「ティア!」


 凪沙が飛びついて抱き締めてくる。


「すごい、すごいよ、ティア! あんな事が出来るなんてびっくりだよ!」

「私もびっくりだねえ。何がどうなったのか、この年寄りに教えてくれるかい?」

「あー、もうこらは仕方ないよね。ぼくから説明しますよ」


 そう言って私たちはおばあちゃんの家の中に入った。


「さてと、追及するつもりは無いんだよ。でも何が起こったのかは知りたくてねえ。あんな仕掛けをしてる暇なんてなかったはずだもの」


 おばあちゃんならまだいいかなと思う。おそらくは大丈夫だろう。私は口を開こうとした。


「凪沙」

「うん、わかった」


 凪沙に口を塞がれた。ちょっと、これじゃあ話せないでしょ。放さなきゃ話せないよ。


「順を追って説明します。この子はいわゆる超能力者です」


 ほへ? 超能力者って? キューみたいな人たちでしょ? なんでこの人たちキューの事知ってんの? というかタケルにも凪沙にもキューの事は話したことないよね。


「米連邦とかの先進帝国が超能力者の開発に力を入れてることはまことしやかに言われてますが、実はこの八洲やしまでも超能力の研究が進められています」


 あー、そんな事はよく分からないけどキューは鱗胴とかいう研究所の出身だと聞いた。もしかしてタケルはそれも知ってるの?


「この子は、ぼくが母方の四季咲しきざきから保護を頼まれた子なんです。超能力者として覚醒してるかどうかまでは聞いてませんが、能力が発動したという事でしょう」


 あれ? なんか話が変になってる。私が、タケルのお母さんの実家から預かって貰ったって事になってる? ああ、これ、タケルの嘘なのか。嘘は良くないけど、「ここでは無い異世界から飛ばされて来て迷い込みました」よりは説得力のある設定なんだろう。というかニンジャソウルに目覚めたって説明じゃだめなの?


「……そうかい。長生きしてると不思議なことにも遭遇するもんだよ。でもまあティアちゃんもあんたらも悪い子たちじゃないからは心配はしてないよ」


 そしておばあちゃんは私の方に向いて綺麗に頭を下げた。


「私や、みんな、そして、私の思い出の詰まった店を守ってくれてありがとうね、ティアちゃん」


 優しく微笑みかけてくれたので、私は思わずほっとしてしまった。


「私からも。ありがと、ティア」

「あ、うん、凪沙もタケルもおばあちゃんもこのお店も守りたかったから」


 そう伝えると凪沙が私を抱き締める強さが強くなった気がする。いや、柔らかいけど痛いって。まだ背後からだからマシだけど。

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