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壇上(episode215)

二日酔いには毒消しポーション。なお、二日酔いのメカニズムは解明されてませんが毒消しポーションは毒状態からの回復なので治るという設定です。魔法って不思議ねっ!

「皆様、この度は法国担当の大使、妖世川ロンド氏の快気祝いにご出席いただきありがとうございました。我が国の不手際でテロに会い、取り返しのつかないダメージを受けましたが、右記島の医療技術とユグドラシル様の薬品の提供により、奇跡の回復を遂げました。本日は皆様にその喜びをおすそ分けさせていただくと共に、法国と八洲との絆が更に強固にならんことを心よりの願いとして乾杯の挨拶とさせていただきます」


 辺りから拍手が飛んだ。ボソボソとだけど、右記島の技術すごいとかユグドラシルってなんだ?とかそんな声が聞こえて来る。


「それでは皆様、グラスをお持ちください。乾杯!」

「乾杯!」


 カチン、という音がそれなりには聞こえるものの、あまり打ち合わせたりしないみたい。私もグラスをあげるに留めておいた。というかこういうパーティーだとそういう風にするのだと習ったからね。


「後ほどユグドラシルを紹介しますから自己紹介を考えておいてくださいね」

「えっ? えーと、未涼みすずさん、頼んだ!」

「何言ってるんですか、最高経営責任者(CEO)、あなたがやらなくてどうするんですか」

「私? そんな人前で自己紹介するなんて無理無理無理!」

「※無理じゃなかった」

「なんでそんな補足つけようとするかなあ!?」


 コソッと足元で保乃さんが補足する。これは自分におハチが回ってこないようにするための処世術! って保乃さんならアナウンスは御茶の子さいさいじゃないの!


 パーティはそれなりに盛り上がり、クロエさんの周りには人集りが出来ている。もちろん今日の主役であるロンドさんの周りにも人集りは出来ている。


 クロエさんはメアリー嬢と一緒に微笑んでいて、出席者の中には法国にパラソルグループが進出か!?みたいな解釈してる人も居た。二人はあれから仲良しなんだよねえ。眼福眼福。


 しばらくして縁もたけなわ……もとい、えんたけなわになって来たのか再びクロエさんが壇上に上がる。


「ええ、皆様ご歓談中かとは思いますが、先程紹介させていただきましたユグドラシルの代表よりご挨拶をさせていただきます。なお、こちらの屋敷も我が法国から賃借しております」


 あら、私? 一応挨拶は考えてそれが出来たから場を設けて貰ったんだけど、こうして見ると人前で話すというのは気恥しいものがある。


「あー、ただいまご紹介に与りました、ユグドラシルの代表、ティア・古森沢でございます」


 私が古森沢を名乗ったらザワザワし始めた。それもそうだ。私の髪の毛は金髪でどう見ても八洲の人間ではないのだから。


「ご覧の通り血の繋がりはありませんが、古森沢の皆様には家族のように暖かく接して貰っております」


 まあタケルにしろ、諾子さんにしろ、源三パパにしろ、異世界から迷い込んだどこのものともしれぬ私を拾ってくれたのだ。ありがたいという他はない。


「この度、私はユグドラシルという会社を設立しました。現在取り扱っているのは毛生え薬と消化促進のドリンクです」


 ちなみに医薬部外品だ。本当に薬は名乗れない。臨床とか色んなデータが必要になるからね。私の魔力がどう数値に現れるか見当もつかない。


「ロンド氏に被検体となっていただいたのはまだ開発途中のもので、回復を促進する効果がございます。正式な販売はまだ未定ではありますのでご了承ください」


 ロンドさんの怪我の程度は右記島と妖世川のごく一部しか知らないので、手足が吹っ飛んで回復が絶望的だったなんてことは分からないのだ。せいぜいが大怪我をしたが通常より早く回復したみたいな解釈をされているのだろう。


「これからも我々ユグドラシルは様々な研究をしていきますので応援していただければ幸いです。よろしくお願いします!」


 拍手がまばらに起こる。まあこんなもんだ。私が壇上からおりると胡蝶さんにタオルを渡された。


「お疲れ様」

「あ、胡蝶さん、ありがとうございます」

「ところで壇上で言ってた「応援して」ってのは本音?」

「え? ああ、まあ、応援してくれるのはありがたいですから」

「仕方ないわね。三十パーセントで手を打ちましょう」


 なんか胡蝶さんが言い出した。えっ、三十パーセントって何?


「胡蝶さん、抜け駆けはいけませんわ。我がプランシャールもまぜてください」

「あの、パラソルグループと鷹月歌も加えていただければ」

「みんな、落ち着きなさい。打診は四季咲からも来ていますよ、最高経営責任者(CEO)」


 なんか色々言われてるけど何の話?


「もちろん持ち株の話です。さすがに三十はふっかけすぎましたか」

「事が事だけに胡蝶さんとしては喉から手が出るくらいに情報が欲しかったんでしょうけど、そこはみんな同じですから」


 なんかみんなでワイワイやっている。なんか生贄の台の上で寝かされてるような気分だ。


「あの、妖世川は株式とか要らないから定期的な交易をしたいと」

「十条寺は様々な人材をとりそろえている。いつでも対応可能」


 アンネマリーとガンマまで参戦して来た。こっちは株式譲渡を伴わないビジネスの話だ。まあこれは未涼さんに任せときゃいいだろう。というか十条寺からは各アンテナショップの店員を既に何名か出してもらってる。


 あっ、向こうではじゃんけん大会が始まった。勝った人が多めに出資するんだって。えっとなんて罰ゲーム? あ、多く出資した方が発言力が増すの? とりあえず私が四十は持ってろってみんなに言われた。いや、もうちょい少なくても。あ、筆頭株主じゃないと意味が無い?


 まあ私はその辺のムズカシイ事はよく分からないから馬車馬の様に働きますよ。とりあえず魔力水の補充とかね。まあ今はパーティだから食事を楽しんで。


 あ、食べ過ぎた人のために消化促進ポーションと、酔っ払いの解消のために毒消しポーションは用意してあるからみんなに配って……えっ、毒消しってなんだって? いや、お酒に酔って頭痛い時に飲むとスッキリする……みんな、目が怖いんだけど、何何何何?

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