第二百十四話 遠征
光槍の活躍(?)は四十話辺りを参照のこと。
『まあ倒してしまったところで素材なんかは落ちたりしないので別にいいんですけど』
は? それって倒す意味無いのでは? あ、いやいや、一応周りに住んでる人の安全が確保されるっていうメリットはあるんだけど。
『うーん、そうね。それなら魔晶が出るようにしときましょう』
中に魔力が詰まった石、魔晶。魔法を発動する時の媒介物質になったりはするんだけど、そこまで役に立つ訳でもない。そんな所が適当かなあ。討伐の証明が出来ればいいんだし。
『じゃあ私は忙しいからあとは頼んだわよー』
そう言って調和神様との通信が切れた。創造神様の折檻がまだなのか、それとも折檻された事務の穴埋めをしないといけないと言うことなのかは分からない。あー、うん、神様もつらいのね。
改めて依頼品……いや、鵺を見てみよう。私の鑑定で雷が弱点と出たものの、弱点属性が得意な人とかいるのかな?
ともかく偵察は終わったので帰って報告だ。転移で森から帰る。今回のは冒険者ギルドから人を出して行かせる事になった。金級は捕まらなかった。グスタフさんはふらりと森に入ったまままだ出てこないんだと。また彷徨ってんのか、あの人。
何人かの冒険者が居て私も行くことになった。そのうちの一人から声を掛けられた。
「よう、キュー。しばらく見かけなかったがこの街にいなかったのか?」
「……誰?」
いきなり話しかけてきた男に見覚えがなかったので怪訝そうな顔をした。こう見えて私は美少女だからね! あ、いや、その、ティアが美少女だから必然的に私も美少女になるっていうか。違うのはおっぱいの大きさと身長体重だけだよ、多分。
「あら、本当にキューだわ。お久しぶり、元気そうでなによりよ。お互い生きて再会出来てよかったわ」
あれ? 確か光槍のジャニスさん。……あっ、こいつもしかしてグレイ?
「お久しぶりです、ジャニスさん。相変わらず仲が良さそうで何よりです」
「そう見える? まあそんなこともあるかもね!」
あれ? ジャニスさんの反応がなんかおかしい。まあ、この二人が居るということは残りの二人も居るのだろう。
「ふむ、キューも一緒か。ならば移動は楽になりそうだな」
アンガーさんが私の上から声を掛けてくる。背が高いその横にはひょっこりと顔を出しながらサーラさんが会釈してくれていた。
「今回は皆さんが一緒なんですね」
「何パーティか合同らしいけどな。早く金に上がりたいからひとつずつ確実にギルドの貢献度を稼いでいかないと」
どうやらみなさん、順調に活動していってるようだ。まああの後私はなんだかんだで王都で活動してたようなものなんだけど。というかこっちの大陸での活動よりも向こうの大陸での活動の方が長くない?
「おいおい、お前らまた女を引っ掛けたのか? いいねえ、パーティに女がいる奴らはよ!」
「ドージ、お前らもか」
「当たり前だ! 金狙ってんのはお前らだけじゃねえんだよ」
ドージと呼ばれた男はデカい剣を背中に背負っていた。いや、あの、今から森に行くんだけど、その剣、森だと振りまわしにくくない?
「ドージさん、何やって……へぇ、光槍のお坊ちゃんお嬢ちゃんたちじゃねえか」
「バッカス。お前達のリーダーだろう。縄でもつけとけ」
次に声を掛けて来たのは軽装の弓使い。弓使いなのに何故か眼帯をしている。それ、見えにくくない? それとも目玉が熱病で出てきたから拾って食べたとか?
「そろそろ出発だそうで。おや、雑魚どもじゃないか」
「どっちが雑魚だよアホネン」
「負け惜しみを。サーラ如きの魔法では私の木門魔法には勝てないのはわかってるでしょう。雷使いということで直々に声が掛かったんですよ、我々は」
どうやらこのアホネンはサーラさんに悪意があるみたい。しかし名前がどうにも。
「サーラさん、知り合いですか?」
「同じ先生に魔法を習ってて。私は落ちこぼれだったから」
「サーラさんが落ちこぼれ?」
確か前回の森の調査では金門の魔法を中心に色々使ってたような気がするんだけど。
「金門は、魔法使いとしては半人前だから」
どうやら火門や木門みたいな直接攻撃手段、水門みたいな回復、土門みたいな防御みたいな一人で出来ることが少なく、戦士とか別で居ないと話にならないかららしい。そんなこと言われても適正というのはどうしようも無い。
なお、大半の金門の術師は何をしてるかと言うと、自分でも前線で戦えるように剣などの技をみがくんだそうな。サーラさんはそこまで敏捷には動けないらしく、補助で手一杯なんだと。
「心配するな、お前は俺が守る」
「アンガー」
どうやら二人の仲はだいぶ進展してるみたいだ。まあそれを見てなんかジャニスさんがイライラし出したけど、こっちはこっちで何かあったのかな?
「冒険者パーティは全員こっちに集まれ!」
ギルドマスターのアリュアスさんが出て来ていて、説明を始めてくれた。今回の仕事は鵺の討伐。弱点属性は雷、それから物理攻撃ということで物理アタッカーと雷を使える木門魔法使いを中心に配置したとのこと。
別々のルートで進んで四方八方から一斉に襲いかかってボコるのが作戦なんだと。そういうのを作戦というのかは分からない。囲んでボコるだけじゃん?
「現場に着いたら合図を出すまでは待機。全員で一斉に仕掛ける。良いな?」
「はいっ!」
全員の返事を確認。パーティは四パーティいて、全員が銀級。私は偵察班だから別枠だけどね。光槍と行動を共にする事になった。これは私が顔馴染みだから。あと、このパーティだけ木門の魔法使いが居ないから。私も使えないよ? あ、街に戻って応援要請する為の肉壁? そうですか。
他の三パーティはさっきのドジバカアホトリオの他に四人パーティが二つ。よく見るとトリオかと思ったらもう一人居るんでやんの。こっちは神官服だね。




