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第二百十三話 歓待

きんいろにかがやーくって読んでる人の年代的に知らんだろ、この曲。

 私は急いで冒険者ギルドに向かい、バタンと扉を開いた。そうすると中からパタパタという足音が聞こえてくる。


「ごめんなさい。閉所作業してまして。ご用件はなんです……か」

「ただいま」

「キューお姉ちゃん! うそ、ほんもの!?」

「そうだよ。帰ってきたよ」

「おねえちゃぁぁぁぁぁぁん!」


 出て来たのはリリィちゃんでした。どうやら受付の手伝いをしてるみたい。作業で貢献出来ない分を対人接客でやってるのかな。


「おい、リリィ、誰が来たんだ、よ、ってキュー!?」

「あっ、ビリー君だ。久しぶり」

「帰って来るなら帰って来るって言えよ! ったく。こっちは忙しいんだってのに」

「まあまあ。顔見せに来ただけだし」

「待ってろよ。エレノアさん呼んでくるから」


 そう言って呼び止める暇もなくビリー君は奥に入って行ってしまった。それから奥からエレノアさんが出て来て私を抱き締めてくれた。その時にやっとリリィちゃんが解放してくれたよ。


 ベルちゃんさんもおかえりって笑ってくれた。泊まる場所ないならうちにおいでって言ってくれた。あの暖かい場所はいつまでも居たくなるからなあ。いや、待てよ? もしかして着せ替え人形状態がまた始まる?


「心配しなくても着せ替え会はリリィちゃんでやってるから」

「えへへ、沢山綺麗な服着れるし、似合ってたらそのまま貰えるから嬉しい」

「いや、あれはオレは勘弁して欲しい」

「なんでー? お兄ちゃんも似合ってたよね?」

「あ、バカ! そんな事言うな!」


 リリィちゃんとビリー君の言い合いに何があったのかを察することが出来た。あ、うん。そうだね。男だからスカート履いちゃダメって事は無いよね(遠い目)


「ちょうどいい所に帰ってきたわ。今は正体不明の魔獣の対処に頭を悩ませてるの。キュー、あなたの『魔法ちょうのうりょく』でなんか正体とか弱点とか分からない?」


 エレノアさんには私の秘密は話してるけど二人だけの秘め事なのでため息が出ちゃう……じゃなくて私の超能力は魔法ということにしようってなってた。


「あ、はい。多分分かりますけど、おそらくはこうじゃないかってのは予想ついてます」

「えっ、本当に?」


 エレノアさんが身を乗り出してきた。そしてギルド員にアリュアスさんを呼びに行かせた。アリュアスさんは眠い目をこすりながら出て来た。寝てたのか?


「ギルドマスターはこの後ギルドで一人で待機の予定でしたから仮眠をとってもらってたんです」


 いや、ギルド閉めようとしてたんじゃないの? って思ったら魔の森からの被害が届くかもしれないから夜間窓口を開設してたんだと。で、一人で対処出来るアリュアスさんが一人で残るんだって。


「エレノアさんでも対処出来ない?」

「夜更かししたらお肌が荒れるもの」


 ごもっとも。それから閉所作業を終わらせてみんなでベルちゃんさんのお家に、に行くことに。ビリー君が買い物に行ってくれて晩御飯の材料を買ってきてくれた。


「お帰り姉さん……あっ、また二人を連れて来たの? エレノアさんまで! もしかして今夜も着せ替え会やるの?」

「ベン、何言ってるのよ。キューが帰ってきたから歓迎会やるのよ」

「えっ? あっ、本当にキューさんだ。おかえりなさい」


 ベルちゃんさんの弟のベン君だ。ベルちゃんさんのお下がりを着させそうになっていたものの、リリィちゃんの登場でスカートを免れたという人物だ。苦労している。顔は可愛いから似合ってるのに。


「あらあらまあまあ、キューちゃん、おかえりなさい」

「ただいま」


 ベルちゃんさんのお母さんも出迎えて抱き締めてくれた。いや、本当にこの人は母親代わりだ。というか母親というものを知らない私からすれば初めての母親だ。


「さぁさ、みんな、ご飯にしましょう。すぐに材料使って追加を作りますからね」


 にこやかにお母さんがそう言った。私はそんな中でくすぐったいものを感じながら楽しい会に浸っていった。


 お風呂にはみんなで入った。ベン君とビリー君は後で入るんだって。前でもいいのにって言ったら「後じゃないとベルさんとリリィが入ってくるんだよ」ってビリー君が言ってた。兄弟姉妹というのは時には遠慮のないものなのかもしれない。


 寝るのは私とベルちゃんさんとリリィちゃんだ。いつもはリリィちゃんがビリー君と寝てるんだけど、今日は私の側がいいと駄々を捏ねたからだ。ビリー君もキューならって言ってたしね。三人で真ん中にリリィちゃんを置いて川の字になって寝たよ。この世界漢字ないけど。


 翌朝、ベルちゃんやビリー君に言って私は一人で森の方に転移テレポートした。昨日はああ言ったけど細部が違うし、もし万が一違うとしても私なら情報とって逃げて来れるしね。


 森の浅い場所には居ないらしい。私は森の奥へと転移していく。かつてグスタフさんと出会った場所よりも森の深くに入り込むと段々と日が差し込まなくなってくる。こういうのを鬱蒼と繁るというのだろうか。


 しばらく歩くと崖のようなところがあり、木々が無くなってるぽっかりと拓けた場所があった。その真ん中に何か大きなものが鎮座している。眠っているのだろうか。ピクリとも動かない。


 遠くから鑑定サイコメトリは無理なのですぐ近くに寄って静かに触れる。鑑定すると確かに【鵺】と出ていた。この鵺は弱点属性が雷なんだって。私が戦ったやつと違う個体なのかな?


「そこんとこどう思う、女神様?」


 まだ叱られてるかな? とか思いながらもどこかに向けて問い掛けてみたら答えが返ってきた。


『創造神は取り込み中なので私が代わりに答えましょう』


 あ、調和神様だ。調和神様ペディアの方が役に立ちそうなんだよね。


『おそらくですが、以前、あの世界の鵺がこの世界と繋げた時に、あの鵺の構成要素の一部が切り離されてこの世界で魔素に結びついて新たに生まれた魔獣と思われます。つまり、残りカスですね』


 調和神様曰く、あの鵺程の強さはないだろうとのこと。まあでもレアケースだから分からないことの方が多いらしいんだけどね。

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