幕間〜とある女神の進退〜
仮決算忘れたくらいで処分はされないよねー(作者の感想です)
「何とか間に合ったぁ」
私はジャージ姿のまま床に転がる。絨毯は敷いてあるので適度に心地いい。寝っ転がると汚れるからやめてくださいってみんな言うけど汚れたら変えたらいいんだよ。セパレートブロックなんだし。
「何とか間に合いましたね」
「もう、これに懲りたら領収書はちゃんと月毎に纏めといてよね。私たちが手伝えるのも今回だけだろうし」
キューちゃんとティアちゃんがため息をつく。本当にたまたま来てもらえて助かった。あ、助かったといえば鵺ちゃんの件でもね。いやぁあそこまで大きくなるとは思ってなかったんよ。
だって魔力がないからね。だから私も長く置いとく訳じゃなくてすぐに迎えに行くつもりだったのよ? でも、連れて帰ると調和神様にバレるからね。大人しくほとぼりが冷めるまでって待ってたらタイミング失っちゃったんだけどさ。
今二人はテーブルに座って温め直したお茶とお菓子をつまみながら近況報告をしていた。私はどっちの様子も知ってるけどお互いにびっくりはしてたね。
「西大陸!? そんなのがあったんだ! あ、いや、別の大陸から輸入されてる鉱石があるとかいうのは聞いてたけど単なる売り込むためのウソだとおもってたよ」
「法国に露帝国、それに米連邦? 世界をまたに掛けてるわね。へぇー、鷹月歌のお坊ちゃんがパラソルの末娘とねえ。ロリコンなの?」
話が盛り上がってるようで何よりだ。そうこうしてると六時を若干過ぎた頃に調和神様が降臨する。
「創造神、仮決算は出来てますか? まだなら手伝って……あら、ティアにキュー?」
「あ、調和神様。お久しぶりです」
「ご無沙汰してます」
「ふふふ、そういえば二人はここに自由に出入りできる許可を申請されてましたね。ゆっくりしてください。さて、創造神、仮決算の書類の残りは半分より少ないんでしょうね?」
調和神様はやれやれという感じで言ってくる。しかぁし! 今日の私はひと味違うのだ!
「調和神様、決算書類です。お納めください!」
「ええっ! 出来てる? ど、どうせ適当に書いて……あら、ちゃんと数字もあってるし、参照する帳票類もきちんと整理されてるわね。分かりやすいわ」
「へーん、どうですか、私の、じ、つ、りょ、く!」
「セリオース、大変だったでしょう? あなたのおかげよありがとう」
「とんでもございません。私のしたことなんて些少にございます」
ちょっとセリオース! 主人の私にもそこまで丁寧にしてくれないのに調和神様にはヘコヘコしてるのはどういう事よ!?
「謙遜してるのね。まあこれだけでもあなたを創造神につけた事は間違いではなかったと思ったわよ。この調子で本決算の時も頼むわね」
「はっ! ですが、本当に今回は私ではなくお二人のご協力が」
「お二人?」
あ、まずい。調和神様のスポットライトがお茶してる二人に向けられる。そして調和神様の目がきらりと光った。ゆらりゆらり揺れている女神心ピンチ。かなりかなりヤバいのよ。助けてダーリンくらくらりん。ダーリンって誰だよ!
「創造神? あなた滅びた訳でもない世界の子たちに自分の仕事を手伝わせたの?」
「あ、いや、その、これは、あの、不可抗力と言いますか、その、二人が自主的に」
「そんな訳がないでしょう! 神でさえ大変な仕事を子たちにさせるバカがどこに居ますか!」
ひぃー! 調和神様がおかんむりだ! 歳をとると堪忍袋の緒も緩むってそんな事考えてたら読まれる? あ、怒気が増した。手遅れだ!
「待ってください調和神様」
その時ティアちゃんが調和神様に待ったをかけてくれた。
「ティア、こんなバカを庇わなくてもいいんですよ」
「違うんです。私たちが創造神様が大変な時に来てしまったので手伝いを申し出まして」
「そ、そうそう。それにティアが会社作る事になったらしくてその勉強にもなるからって」
キューちゃんもフォローに回ってくれてる? これは、助かりそう。でもここで「そうなんですよ!」とか調子に乗っちゃあいけない。飽くまで謙虚に謙虚に。
「ううっ、二人ともありがとう。でもこれは私の落ち度。責任は取らないといけません」
「そんな、でも、解任なんて」
「私たちの世界が」
あ、この流れはまずかったかも!?
「解任? そんな事にはなりませんよ?」
「えっ!?」
二人が異口同音に疑問符を浮かべた。
「今回のは仮決算ですからね。せいぜいが提出するまでおやつ抜きで缶詰状態で仕事させるだけですよ。だいたい最悪出さなくても本決算できちんとすれば罰則だってありませんし」
調和神様が丁寧に説明してくれる。ああ、二人がジト目でこっちを見てる。てへぺろ♡
「調和神様。私たちは創造神様が解任されて世界が分割統治になり、下手したら私たちの世界も繋がらないしこの部屋も使えなくなるみたいな匂わせをされまして」
「そうそう。別に元の世界には戻りたくないけど、ティアに二度と会えないのはさびしいし」
「………………創造神? 何か言うこと、いえ、言い残すことはありますか?」
「ちょ、調和神様落ち着いて。あの神威が漏れてます! メーデー、メーデー! エマージェンシー!!」
そして調和神様の神威が落ちて。私はボロボロにされた。あー、絨毯も焦げちゃった。
「全く。この子は本当に。分割統治されるかもだけどあなたたちの世界とこの世界は最低限の責任で創造神が後始末までやるから分割統治にはならないわよ。まあせいぜい五つくらいの世界になるでしょうけど」
それを聞いて私はびっくりした。なんだ、そうなんだ。まあそういうのは至高神の専決事項だから私たち下っ端には関係ないなと。
「だいたい、世界崩壊とかチェンジリングとか起こしてる世界なのに他の人に任せられるわけが無いでしょうが」
調和神様に言われてそれもそうかと思った。まあいわゆる瑕疵物件だもんな。いや、私はどっちの世界も好きだけど。
「二人には迷惑掛けましたね。私からお詫びとして追加で能力を付与しましょう。好きな能力を選んでください」