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第二百六話 剣閃

私の推しはオッターです。さあ、戦争ビジネスを始めよう。

「お。おい、よせ! リシューは財務卿となる前は騎士団でも有数の実力者、現騎士団長を負かしたこともあるのだぞ!」


 国王陛下が悲痛な叫びをあげる。あの、私が言うのもなんなんですけど、国王、あなたはこの国の人だからテオドールが倒されて喜ぶ方では? あー、リシューが勝ったら本格的にSATSUGAIされるかもだからダメなのか。なんだかんだでテオドールなら生命は助かるもんね。割と甘いし。


「クックックッ。もう遅いぞ。吐いた言葉は撤回できんからな。どれだけ腕に自信があるのかは分からんがワシは単なる文官ではないのだよ!」


 そう言うとリシューは剣に手を伸ばし、それを掴んでテオドールに投げつけた。テオドールはそれを平然と叩き落とす。まあ速度的にもそこまで速くなかったんだけど。


「……何の真似だ?」

「貴様の用意した剣など使えるものか! どんな細工がしてあるかも分からんからな!」


 テオドールがそんな賢い……いや、卑劣なことをするもんか!


「キューよ、本当に帰ってからゆっくりと話をせんか?」

「だから遠慮しますって。私、またまヒルダ様にくびり殺されたくないんで」

「そうか。リシューだったか。まあ好きにすればいい。剣がなんであれオレには通じん」

「果たしてそれはどうかな?」


 そう言うとリシューは腰に着けていた剣を抜く。スラリと抜かれたその刀身……いや、刀じゃないから刀身じゃなくてブレードが青く光っている。


「きっ、貴様! それは我が国の至宝、王家の蔵に眠っている蒼き剣閃、ラインブレード! 何故貴様が持っている!」

「ククク、ワシが騎士団であった頃からこの剣はワシの手にあったわ。既によく馴染んでおる」

「宝物庫から、盗み出したのか?」

「人聞きの悪いことを。どうせ蔵にあったところで死蔵するだけなのだ。有効活用出来る人間が使って何が悪い!」


 まあリシューの言うことも間違ってないけど、飽くまでそれは正式な手段で手に入れていたらの話だ。王様に下賜されたとかね。盗み出しといて言うのは盗人猛々しいってものだ。


「茶番は終わったか?」

「やめよ! ラインブレードは破邪の剣! 並の剣が相手では粉々に砕け散ってしまうぞ!」

「なるほどな。ちょうどいいハンデだ」


 テオドールが抜いている剣は血が滴ってはいるものの、普通の剣、いや、ボロボロの剣だ。仕方ない。


「テオドール、様、これ、新しい剣」

「……まあいい。ないよりかはマシだろう」


 わざわざ私のアイテムボックスに入れてある予備の剣を渡してやったというのになんという傲慢さ。私が許すからリシューはある程度痛い目見せてやって! あ、いや、最終的に勝たれたら困るけど。


「命乞いの準備は出来たか? まずはお前の手足を斬る! そして動けなくなった貴様の前でそこの女をゆっくり殺してやるわ!」

「バカを言うな。そいつは殺しても死なんぞ?」


 ちょっとテオドール? 私が殺されても死なんとはどういうこと? 殺そうとしてたの? いや確かに実際に殺されたらどうなるかなんて分からないけど。


『その場合は両方の魂が召し上げられて私が回収しますね』


 あー、やっぱり不思議な力で助かったりはしないのか……って今なんつった?


『ですから両方の魂が』


 両方ってどういうこと?


『あなたとティアさんですよ。決まってるじゃないですか』


 決まってない。全然決まってないよ! というかなんで女神様がしれっと口出してんの!?


『いやあ、先程ティアさんのところに行ってきたのでキューさんは何してるかなって』


 意味がわからない。いやまあその調子だとしばらく会ってないけどティアは元気にやってんだよね。そのうちまたお茶したいなあ。ってだから両方の意味!


 女神様の説明によると、私とてティアの魂が世界を越えて活動してるのは極めてイレギュラーらしい。で、魂の交換というのが起こって、同等の魂がある間は世界に留まれてるんだとか。


 まあこれについては特別なことはなくて単に相手がお互いの世界に存在すれば世界が勝手に誤認してくれるらしい。あー、まあ私とティアはおっぱいのサイズと身長、体重以外は顔も含めて全部同じだもんね。


 当然ながらどちらかが死んだら世界はもう片方を遺物として認識して排除しようとするんだって。その際、世界が壊れるかもしれないから女神様ポンコツが回収するんだってさ。いや、もっと早く言ってよ!


『まあ今までは乗り越えてきましたしこれからも』


 森林暴走オーバーランの時も檮杌とうこつの時も割とギリギリだったよ? というか触手生物の時も危なかったよね?


『ちっちゃいことは気にすんな、それワカチコ』


 若さ、力、根性だっけ? 根性で頑張らせようとするな! まああっちは運動、容姿、根性なんだけど。あーもういいや。どの道死んじゃいけないのは変わんないんだし。


 とかやってたらいつの間にやら剣戟の音が聞こえて来た。リシューとテオドールが打ち合っている。あれ? ラインブレードで真っ二つって話じゃなかったの?


「くっ、何故斬れん! まさか貴様の剣も伝説級の剣なのか?」


 いや、さっき渡したやん。普通の鍛冶屋で見習いが作らされたみたいなそれなりに秀作な剣だよ。ちなみにダメなのは店頭にすら置かれないから。


「わかるか? オレが折れんように上手く立ち回ってるのだ。これがオレと貴様との差というやつだ」

「このオレをコケにしおって!」


 リシューは一層激しく斬りかかるが、テオドールはそれを難なく捌いている。いや、難なくではないのかもしれない。よく見ると剣に亀裂が走ってる。あれでは斬られるのも時間の問題だ。


「ダメージが蓄積されれば脆くも折れてしまうだろう。それまでどれだけ耐えられるかな?」


 あー。王様、なんか無いの? 王家の宝物庫かなんかにあれ以上の剣が!


「そんなものがホイホイある訳がないではないか!」


 まあそりゃあそうか。よし、ちょっとヒルダ様に聞いてくるよ。転移テレポート

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