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使徒(episode205)

お父さんの名前はザシュニナですね。

 その二十頭の中に一回りでかいのがいる。あいつが群れのボスかな。そのボスらしき犬がアオーンと吠える。ザザッと犬たちがフォーメーションを組んでるのかはよく分からないけどなんか陣形みたいなの組んでる。


 いや、よく分からないんだって。戦国時代の陣形なら鶴翼とか蜂矢とか雁行とか色々あるってのは知ってんだけど詳しくはわかってないし。固まって動いたら魔物の餌食にならない? あ、魔物いないんだっけ。


 がううーという声とともに三頭程が私に飛びかかってくる。ここは目押しだ、左、真ん中、右! とか出来たらいいんだけどあいにく向こうはそれなりにタイムラグがある。個体差なのかな?


 手の中にライトセーバーわ生み出しながら向かってきた順に切り付ける。無詠唱だけど金門の魔法の剣だ。さすがに犬程度なら切り捨てられるよ。


 ギャン!という声とともに三頭が地面に倒れ伏す。大きい犬は戸惑ってる様に見えた。そりゃあ今までは三頭の同時攻撃でやれてたんだろう。コルホは目に見えて狼狽えている。


「バカな! ケルベロスアタックが! くそっ、次だ次!」


 ケルベロスアタックの次はオルトロスアタックか? いや、首の数減ってるからダメだな。となるとそれより頭が多いのは……ヤマタノオロチ? ないわー。


「行けい、やまいぬたちよ! ヒュドラランペイジ!」


 あー、ヒュドラがいましたか。それはうっかりうっかり。そういえばヒュドラもヤマタノオロチも元々は水害を具現化したものだって言われている。洋の東西は違えどとことなく似ているもんだね。とか思ってたら犬たちが雪崩込むように向かってきた。いや確かに私でもこんだけの数の犬っころを剣で捌くのはキツいものがあるよ。


 ……いやまあ剣で捌けば、の話ではあるんだけど。私には魔法があるからね。とりあえず相手が動物なら気温下げて動きを鈍くした方がいいよね。そのついでに何匹か減らしとこうか。


「水門〈氷柱アイスピラー〉」


 地面から氷の槍が何本も出てくる。辺り一面は氷に覆われているのだ。いや、本来は水のある場所とか寒い場所でやるもんなんだけど、水門が得意な私ならぶっつけ本番でもいけるんだよね。


 氷の槍に貫かれたのは四頭か。割とみんな反応良いな。これでも多少は狙ったんだけどなあ。


「何も無いところから氷がっ!? なんでだ!」


 まあいい、氷柱つららは……囮だ。本来はこっちが本命なんでね。


「……の闇、地を統べて白夜と化せ。水門〈氷結永久凍土クリスタライズ〉」


 それまで早口で唱えていた詠唱を終わらせる。私の力ある言葉(パワーワード)に地面に凍気が走る。気温が下がり、地面が薄く水で満たされる。わざわざ詠唱を持ち出さなければ発動さえしない、広範囲殲滅用の水門最源流魔法。以前美鶴さんとのバトルで発動確認はしたので今回も大丈夫だろうと踏んでいた。


「ぐおおおおお!?」

「アオーン!?」


 そこにいる人物、いや、生き物は逃げることすらも許されない。この世の全てのものかが凍る絶対零度。摂氏マイナス二百度にも到達しようかという温度。窒素でさえマイナス二百度もいかずに液体になってしまうという。


 足元から氷が身体にまとわりつく。触れたものからたちまち凍らせていくのだ。そこにあるもの全てが結晶クリスタルの様に氷に閉ざされる。故にクリスタライズ。水門の極みである。いや、もうひとつ、全てを水で押し流すっていう水門最源流魔法もあるんだけど、そっちはまあその内。


「終わったよー、あれ、どうしたの?」


 振り向くと全員が私の方に向かってひれふしていた。いや、ちょっと待って、どういうつもり?


「女神様の化身であられたとは。今までの御無礼お許しください」

「いやあ参ったね。どうか信心深くない我々だけど許してもらえるだろうか」

「ガンマの姉御の言ってたことがわかりました。お許しくださいっす!」


 いや、ふざけてないでこの後のことを話そうよ! ほら、お父さんオルトロス、族長だってポカーンとしてるよ。えっ、彼がポカーンとしてるのは私のせい? もうなんでもいいよ!


 ということで混乱が治まってから話し合いをした。まずは状況把握だ。狩猟班のみんなはこの先の部屋に囚われてるらしい。それを早く言いなよ。助けに行かなきゃ。


 そもそも元々この遺跡をキャンプ地(意訳)として確保し、そこから各自が狩猟に出るのは決まっていたことなんだそうな。で、キャンプを張ろうとしていたところ、遺跡の内部に続く道が見つかったんだそうで、もののついでとばかりに探検したそうだ。


 いや、君子危うきに近寄らずっていうじゃん。やめとこうよ。えっ、キャンプ地の安全確保が目的? そう言われたら返す言葉がない。


 そんで中に入っていくと階段のところで豺たちに襲われたんだと。あーまあ、確かにあの待ち伏せはかなり洗練されていたよね。


 という訳で急いで助けに行く。えっ、他の牙族の人たち? 見てないんだって。もしかして彼が最後の一人だったのかもしれない。食料とかなかったって話だからねえ。


 奥の方に行くと鉄格子の部屋があってそこに他の人たちが囚われていた。もちろん食料なんかは持ってない。なので私たちが持ち込んだ食料を提供したよ。まあ飲水だけならいくらでも出せるから好きに飲んで欲しい。


 しかしあの牙族の人は何がしたかったんだ? 復讐? まああの人一人じゃあこの先部族の維持は出来なかっただろうからせめて死なば諸共って思ったのかも。リュドミラさんと父親……名前なんだっけ? いやまあザザックさんにしとくか。そのザザックさんが死んでしまえば族長としての系譜も途絶えるしね。


「女神の使徒様」

「リュドミラさん、私はティアでいいです」

「ティア様、あの牙族の人の凍結を解除出来ませんか? 殺してしまったのなら仕方ありませんが」


 あー、一応殺すことも出来たんだけど今回は凍らせて動きを止めたままにしてある。私たちが帰った後に溶けて動ける様にはなる予定だったけどなんか聞きたいことがあるみたいだし、解凍は難しくないよ。LHA? そんなものは要らない。

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