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第二百四話 謀叛

リシューさん再登場。書いてないけど財務卿です。

「いや、待って待って。なんで死ぬつもりになってんの? ごめんなさいしたらいいじゃない」

「天使殿。天使殿には下界の理はわからんかもしれませんが、街に軍が入ってきて非道を働き、王城まで攻め上がってくる。我らは民を守れなんだ。貴族派のバカどもならば民衆の命など意に介せずというところだろうが、我らには民を守る責務がある。それを果たせなかったとなれば王族たる資格はない」


 あー、わりと真面目に考えてんだな。というか当たり前か。私もテオドールが街を攻めるって言った時に民衆はなるべく殺さないでねって言っちゃったもんな。


 なお、テオドールの答えは「バカを言うな」だった。そりゃあ見せしめで殺すこともあるよね。悲しいけれどそれが戦争なんだもの。


「まあ、王様、それに王妃様。簡単に死ぬと言われてもミリアムさ……まが悲しみますので、出来たらテオドール……様に会うまでは生き延びてください」

「それもそうだな。生殺与奪は勝利者の権利だものな」


 とか言ってたら廊下をドタドタと走ってくる音がして二十人ばかりの人が入ってきた。あれは騎士かな?


「いたぞ、王だ! 引っ捕えろ!」


 いや、いきなり何言うてんの。君たちの仕事は王を守ることじゃないんか?


「王よ、観念してもらいましょう」

「リシュー! 貴様、これはどういうことだ!?」

「どうもこうも。今王城に敵が来ているのは知っているでしょう? あなたの首を差し出して城のものの助命を嘆願する。王たるものの責務ではないですか」


 リシューと呼ばれた仁物が言う。まあ偉そうに。しかしまあどっかで見た事ある様な。そういえばどことなく誰かに似てる様な。誰だっけ?


「ワシらの生命は迫り来るテオドール殿に断罪してもらう。貴様らの言い分には乗らんぞ!」

「それは困るんですよねえ。あなた方が助命して許されたらどうするんですか」

「何!?」


 すごく嫌らしい顔をするリシュー。うわっ、反吐が出る。ジュラルはこんな顔しなかった……あ、そうだ。ジュラルに似てるんだ。もしかしてあの夜側妃と密会というか情事をしてた奴!


「あ、あんた、ララネの浮気相手じゃん!」


 思わず口をついて出てしまった。ああ、やっちゃったなあ。そこにいる人全員がポカーンとしていた。


「それにジュラル王子に似てるよね? もしかしてジュラル王子の母親とも通じてた?」

「なっ、なっ、貴様、世迷い言を!」

「さすがにラムザ殿下は王様の胤だろうけどジュラルはまずかったよね。もしかして第四王子のグレイもあんたの胤だったりする?」

「あの様な腑抜けがワシの子どもなわけがなかろうが!」


 まあグレイ殿下は腑抜けなのかもしれないが、ミリアム殿下の身を案じてくれる優しい子だよ。母親には逆らえないみたいだけど。それに、腑抜けじゃなくて間抜けは見つかったようだしね。


「グレイ殿下()リシューの子どもではない。では、ジュラル殿下は?」

「うっ、ぐっ」

「リシュー! 貴様というやつは!」

「ははは、もう遅い! ここにいる騎士たちはワシの子飼い。王に反逆する事などなんとも思っておらん。王よ、貴様はテオドールという侵略者に惨殺されて王妃共々息絶えるのだ!」


 まるで決定事項かのようにリシューが叫ぶと部屋の中に騎士たちが踏み入り私たちを取り囲む。


「リシュー様、王妃はともかく周りの侍女とかこの女とか犯して良いんですか?」

「最終的に殺してしまうから問題ない。証拠を残すなよ。残さなければ例え王妃だろうと蹂躙して構わん」

「王妃様は綺麗だけど歳がなあ。やっぱり若い方がいいだろ」

「馬鹿だなあ。あのいつも俺たちの上に君臨してた王妃様をこの手で、しかも王の前で陵辱出来んだぞ?」

「そうか。それは胸がすぐ思いだな」

「オレはそこの生意気な嬢ちゃんだ。元気のいいやつの手足を砕いて動けなくしてから犯るのがいいんだよ」

「うへー、まあいいや。俺は無難に侍女ちゃんにしとくぜ。すれ違う度に押し倒したくて溜まってたんだ」


 もう聞いてるだけで気分が悪くなってくる。侍女の子たちも歯の根が合わなくてガチガチ鳴っている。


「よし、そろそろ王城に奴らが着く頃だろう。殺せ。一人残らずだ!」

「ヒャッハー!」


 まあモヒカンをしてないのが驚くくらいに下衆な奴らが飛びかかってくる。ウェルカムトゥディスクレイジータイム。このイカれた時代へようこそ。いや、時代というか世界というかいかれてんのはこいつらだけなんだけど。


障壁(バリア)


 もちろん私たちに指一本触れさせる気は無い。私の障壁は爆裂魔法でも壊せなかったから普通の人間の膂力じゃ無理だよ。まあテオドールなら何とかしそうではあるんだけど。


「な、なんだこりゃ!?」

「壁? 見えない壁みたいなのがあるぞ?」

「前に、前に進めねえ!」


 焦りながら見えない壁に剣を突き立てたり、がむしゃらに切りつけたりしている。そんな事しても壊れるどころかヒビすらも入らないってのに。


「国王の居室はどこだ!」


 向こうでテオドールの声がする。こっちに向かってんのかな?


「お、おい、やべぇぞ」

「仕方ねえ。後は攻めてきた奴らが殺してくれるさ。俺達も逃げるぞ!」


 そう言って回れ右をして扉に走り出し……見えない壁にぶつかって倒れる。


「なっ、こっちにも見えない壁が!」

「お、おい、嘘だろ? さっきまでなんもなかったじゃねえか!」

「バカな……」


 真っ先に逃げようとしたリシューが壁の前(見えてないけど)で呆然と呟く。こちらに迫ってくる足音は徐々に大きくなってくる。


「ま、待て。落ち着け。この壁があれば侵略者たちに攻撃されることもないぞ」

「あ、なるほど」

「さすがリシュー様! 一生ついて行きます!」


 その一生がどれだけ長いのかは分からないけどもはや一蓮托生だからね。


 扉の前に姿を現したテオドールは室内を見渡してる。手でも振っとこう。あ、こら、頭を抱えるな! 返り血はついてないみたい。怪我もして無さそうだ。良かった。怒り狂うヒルダ様はいなかったんや。

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