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渉談(episode200)

ザシュニナさんの名前は某キャラから取りました。なんとなく響きが好きです。

リュドミラはルミナスのミラーシャから。


私の勘違いによる間違いにより、ザシュニナさんとゲリュニカさんの名前を入れ替えました。混乱させて申し訳ない(2025-10-03)

「おお、長老殿。お久しぶりです」

「むっ? そなたはタナウス殿! いやあ、また生きてる内にお会い出来るとは思いませんでしたぞ。次に会う時はニライカナイだと思っていたもので」

「あはは、我々の場合は浄土ですからな。お会いできなかったかもしれません。こうして今生の内に再会できましたこと、嬉しく思います」


 ニライカナイというのは海の彼方や海底にあるとされる理想郷の事らしい。この辺りの群島に住んでいる民族の天国なんだとか。いやまあ死んだあとは主の元に召されるなんてのは坊主共が言ってた話にあるのでなんとなくは分かるんだが。


 ちなみに浄土というのは仏様とやらが住まう現世とは違う浄化された土地なんだとか。死んだ後にそこに行って暮らすんだと。天国とは違うのかと聞いたら、八洲には六道輪廻というのがあり、死んだら六つの道から生まれ変わり先を選ぶんだとか。天国は天道が似てるらしい。


 じゃあそこでええやんって思ったら「天人五衰」というのがあって、衣服に垢がついて、頭上の花冠が萎んで、体が臭くなって、脇の下に汗が流れて、そして座席にちゃんと座ってられないみたいな感じらしい。頭上の花冠ってのはよく分からんが人間らしくなるってこと? お風呂入れば半分くらいは解決しない?


 それはさておき。長老に案内されて家に通された。家に向かっている途中に女の子がタナウスさんの腕に巻き付いて、こちらを牽制するかのように勝ち誇った顔をしている。いやまあ、別にタナウスさんには筋肉が足りないから好みでもなんでもないんだけど。


「改めまして。ゲリュニカと申します。この集落のこの部族の頭領をやっておりました。今は長老という風に呼ばれております」

「今は頭領ではないと?」

「はい、息子に譲りましてな。ザシュニナというこの子の父親ですな」


 なるほど、この子は長老さんの孫娘なのか。で、この子の父親は今狩猟の為に島の中央部まで遠征に行っているのだとか。


「リュドミラ、お前も挨拶せんか」

「やっ!」

「リュドミラ様、ますますお綺麗になられましたな」

「そんな他人行儀な。私のとこはリューと呼んでくださいませ」


 タナウスさんがお世辞なのかは分からないけど、リュドミラさんに声を掛けると声のトーンが半音上がった甘ったるい声で言いながらタナウスさんにしなだれかかる。もちろん私に対して牽制の視線を送るのも忘れてない。


「あ、えーと、私は先程もいいましたがティアと申します。その、こちらに来たのは龍の血という植物について入手したくて」

「余所者に渡すものは無い! 居ね!」


 だから敵愾心むき出してこっちに噛み付いて来ないでよ。こっちは別にあなたに思うことなんてないんだから。


「そうですか。分かりました。お世話になりましたね。帰りましょう、ティア様」

「えっ……」


 タナウスさんが動いた。まあ私が依頼主だからね。ましてや妖世川の仲間を救う為に動いてるんだ。心象を汚されたら交渉すら出来ない。


「あの、タナウス、様?」

「リュドミラ様。お時間を取らせていただきありがとうございました。我々は八洲に戻ります。船はまだ来ませんが何とか都合をつけてみますので。では」


 タナウスのけんもほろろな態度にリュドミラは泣きそうに……いや、半泣きで縋ってきた。


「嫌です、嫌です! せっかくまたお会い出来ましたのに! タナウス様、考え直してください!」

「いえ、あなたが私の依頼主に対してそのような態度を取っている以上は依頼主の身の安全が優先になりますから」


 それを聞いてリュドミラは一層泣き喚いた。いや、うるせえな。泣き叫ぶしか出来ないとかガキかよ。いやまあガキなんだろうけど。


「タナウス殿、考え直してはいただけませんかな?」

「ゲリュニカ殿。我々はここに商談に参りました。その前段階ともなるお互いへの敬意がない以上は、最早何を言っても仕方ありませんよ」


 商談の基本は交渉。交渉するにはお互いを尊重しないといけない。でないと殴って奪うなんてのが許されてしまうからだ。そしてまがりなりにも妖世川は八洲八家の一つだ。下手な小国ですら相手取れるもの達がこんな島の集落一つを恐れるだろうか。


「タナウスさん、交渉、出来ないんですか?」

「……ティアさんが矛を収めてくださるならまだ望みはありますが」

「私をなんだと思ってるんですか? 破壊神ですか?」

「その気になればここの集落くらいは吹き飛ばせるのでは?」

「……否定はしませんけど」


 出来るか出来ないかで言えば出来る。今の私はそういうことが出来るくらいには力が強まっている。下手したら八洲の大都市一つでも大丈夫かもしれない。まあやるかやらないかで言えばやるつもりは無いんだけど。


「あの、ゲリュニカさん、でしたかね。私はとある事情で龍の血と呼ばれる植物の樹液なのか果汁なのか分からないけどそれが欲しいんです」

「その事情というのを聞かせて貰えませんか?」


 私は長老にロンドさんの手足を再生するための薬を作らなければならない、その材料として龍の血が必要だと言うことを説明した。タナウスさんも「ロンドとは妖世川の中でも仲良くしていたんだ。私からも是非協力して欲しい」と頼み込んでいた。


 それを聞いてリュドミラは「私はなんてことを」みたいな顔をしていた。タナウスさんの邪魔をしていたなんて恋する乙女としては我慢できなかったんだろう。恋する乙女? いやまああれだけ分かりやすかったら誰でも分かるでしょ。


「分かりました。龍の血はお渡しします。その代わりこちらの条件を呑んで貰えますかな?」

「条件ですか?」

「実は先程申しました我が息子ザシュニナの事なのですが。島の中心に向かってから予定の日になっても帰ってきませんでしてな。是非調査に協力してもらいたいのです。そちらのボディガードの方はかなりな腕なのでしよう?」


 ここに来てイオタにスポットライトが当てられた。まあ何にも喋らず見てたもんね。特に私とリュドミラの胸元辺りをまじまじと。えっちなのはいけないと思います!

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