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上陸(episode199)

女の子はだいたい十五歳くらいですかね。

 その後、床に膝を着いて「嘘よ、嘘よ」しか言わなくなった壊れかけのラジオみたいなドナは騒ぎを聞き付けた船員たちに取り抑えられた。その後、ステフの証言でドナとハーミスが「わざわざ別に借りていた部屋」……まあこれはドナとハーミスがそういう仲だってみんなが思ってたから誰も口出ししなかったんだそうな。その部屋から精製されたドラッグが見つかったんだそうな。


 で、これから彼らがどうするのかって話なんだけど、当然ながらみんなでキャンプという訳にもいかずに捕まった奴らはそのまま親元に送られるんだとか。


 キャンプする予定の島には行くらしい。一応全部片付けないといけないんだって。これはステフとミシェルがやるんだとか。うん、ミシェル。あの子は自分の意思でなく従っていただけなので無罪放免だ。まあ私が生命の危機に陥っただけで大したことは……あるよ、あるある!


 でもまあ、ステフがミシェルを必死に庇っていたのでまあいいかってなりました。あ、そうそう。二人とは改めて友だちになったよ。ドナの件が一段落したら八洲に来るんだってさ。その時はちゃんと案内してやろう。


 で、私らは目的地となる島に到着したわけだ。目的忘れてないよね? そう、龍の血ですよ!


「ここがあの女のハウスね」

「いや、確かに女の子は居るんだけども」

「あ、すいません。定型句みたいなものなので気にしないでください」


 島に私たちを降ろして列車は……しゃない、船は往く。次に迎えに来るのは三週間後なんだそうな。定期的な就航はしてないからまたあの船長さんが来るらしい。ゆっくりした休暇の後で。


「ああ、とりあえず集落に案内しよう。全く、厄介な事になってないと良いが」


 なんかタナウスさんの口から不穏な単語が飛び出した。とりあえず島の中心に向かって進む。木が鬱蒼と茂っており、視界も悪い。道のようなものはあるにはあるがけもの道というところだろう。


「まあまあ、山歩きなら任せて欲しいっす」


 イオタがそう言いながら懐からナタのようなものを取り出した。それで草を刈っていく。細い木もバッサリだ。


「ひゃー、こりゃあたまんないっすね。海に用事とか無いんかな? 昔はあったみたいな感じだけど」

「ああ、確かに昔は塩を取りにここまで来てたみたいなんだけど、内陸部に岩塩坑が見つかったんで塩はそっちから採取してるんだ」

「へぇー、詳しいですね」

「まあね。それをやったのも妖世川の先祖だからね。そうやって世界中と絆を作ってきてたんだよ」


 なるほど。妖世川の外交術というのは現地の人間に恩を売っておいて、交渉の時にそれを持ち出したりするわけか。いや、持ち出さなくても窮地を救ってくれた人なら態度も軟化するんだろうな。


「おい、そこから先に入ってくるんじゃない!」


 森の中を進んでいる時にそんな声が聞こえた。八洲語でも英語でも法国語でもアラービア語でもない、なんか違う感じの言葉だ。まあ私には分かるんだけど。


 次の瞬間、私たちの足元に矢が刺さった。これは確実に警告なんだろう。射抜くのが目的ではなくて当てないように脅すのが目的だ。


「次は外さん。大人しくこの島から去れ!」


 声の主は相当なお怒り用だ。というかタナウスさんは恩を売って交渉を有利に進めるとか言ってた気もするけど、何にも進んでないよ、交渉どころの話じゃない。


「ブナベタじゃないか?」

「なんだ。なぜ私の名前を知っている!?」

「私だよ、タナウスだ。君たちの長と話をさせてくれないか」

「む? まことにタナウス殿か! これは失礼した。しかし、あの無礼者は居ないようだが」

「今回の依頼主はこちらのお嬢さんだよ」


 タナウスさんとブナペタと呼ばれた青年はどうやら知らない仲ではないみたいだ。というか無礼者って誰だろう。もしかしてもしかしなくてもあの右記島の研究バカ?


 ともかく紹介されたからにはきちんと挨拶しないといけない。


「ティアと申します。こちらにはタナウスさんの案内で「龍の血」と呼ばれる植物の採取に来ました」

「むう、「龍の血」か。本来門外不出なのだが、タナウス殿の紹介ともなれば無碍にはできまい」


 どうやらタナウスさんはかなりの恩を向こうに与えたみたいだ。それでも無礼者の存在が気になり過ぎる。


「もう一人は?」

「私と彼女の護衛ですよ。前も連れてきて居たでしょう。彼ではないですが」

「む? 確かに。それならば気にしない事にしよう。集落に案内する。ついてきてくれ」


 そう言うと男はピーっと指笛を吹いた。そこらここらから気配が一斉に消えて道のような所に松明が灯された。


「こっちへどうぞ」

「ありがたい。案内してもらおう」


 タナウスさんが平気で歩いていくので私らもついて行った。どこを通ってるのかはよく分からないがそのままついて行くと拓けたばしょについた。


 そこには二十軒ほどの家が建ち並んでおり、一際大きい家の前で女の子、いや、もう女性だね。私よりも少し下かなって子がこちらに手を振っていた。


「タナウス様! お会いしとうございました」

「おお、八洲語を学ばれましたか」

「はい、タナウス様のお陰様をもちまして。……あの、それよりそこの女性にょしょうはタナウス様の奥方様ですか?」


 女の子のジト目が私に刺さる。あれ? もしかして私、初対面の印象が悪かったりする? いやいや、確かに視線は私の胸元に伸びてますし、見られてるのは分かりますよ? でもあなたも結構なものを持ってるじゃないですか。推定Eくらい? 私? あーまあ、アルファベットで言えばもうちょい先になりますが。


「あなたにタナウス様は渡しません!」

「あ、いえ、私はその、こちらに龍の血を手に入れるために来ただけでして」

「タナウス様だけでなく龍の血まで手に入れようとは何たる強欲!」


 うわぁーん、話が通じない! とりあえずこの子をなだめてちゃんとした話ができるようにならないと。もしかしてこの子が交渉の相手役なの? ちょっとハードル高くないですか?


「何の騒ぎだ?」


 そう言って家の中から出てきたのは白い髭を延ばしたハゲジジイだった。

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