第百九十八話 自滅
コカトリス石化一丁上がり!
タイトル被りに気付いたのでタイトル変更しました(2025.09.12)
タバサさんには偵察に行って使わなかったら石化解除ポーションを譲るって約束させられました。
「石化食らってもいいから使わないで帰って来てくださいね!」
とか言うんだもん。協力やめようかと思ったよ。チェレッタさんがちゃんと〆ときますからって言ってくれたからそのまま出掛けたけど。いやまあ一旦帰って買えばいいだけの話だから別に渡してもいいんだけど。
冒険者ギルドに馬車を出してもらって現地へ。私としては転移での移動で良かったんだけどね。何しろ道がややこしいらしくて。馬車で案内してもらうことになりました。まあ帰りは転移で頑張れば良いかな。
村に辿り着くと村人総出で馬車を出迎えてくれた。どうやらジッキーさんたちが帰って来たと思ったらしい。馬車の中から出て来たのが私一人だってわかって明らかにガックリしていたよ。
とりあえず冒険者ギルドから調査の為に派遣された、ということにしておいて、村長に詳しい話を聞くことに。
まあ概ねの話はジッキーさんたちの言ってた話で間違いなかった。今は時々くるビッグバード(不確定名)には手を出さないで野菜を食べられるのを遠巻きに見ているんだとか。それで野菜は大丈夫なの?
「そろそろ死活問題でして。このままだと冬が越せなくなりそうなのです」
まあこんな小さな村で村人が育てていた野菜が蹂躙されてしまっては越冬も難しくなるだろう。食料は生きてる限りは要るのだ。買い出しに行こうにも先立つものもないのだろう。いや、その先立つものがこの村では野菜なのか。
「くぇー!」
村の畑の方で鳴き声がする。かなりの大音量だ。チョコボール? キョロちゃん? むっ、これでもキョロちゃん語はテレビで覚えたよ! ヒャックエヒャックエクエックエックエッ
「クゥールルゥー」
高らかになくビッグバード。いや、実物見たけどやっぱりコカトリスじゃない?
「何で鳴いてるんだろ?」
「恐らく襲来を報せているのでしょう。我らが近寄らなくなりますので」
あー、危ないから避難してたのね。そりゃあまあ身の危険も気にせず野菜が啄めるんだから鳴くわな。
「おい、とりバード!」
「くぇ?」
どうやら名前は違うようだ。当たり前か。というかコカトリスだね。うん。失敬。
「貴様の悪行もこれで終わりだ!」
「ええっ、嬢ちゃんがやるのかい?」
「一人じゃ無理だ! 銀の冒険者パーティでもダメだったんだぞ!」
「いや、まさか、嬢ちゃん、あんた金級なのか?」
ごくり、と村人たちが息を飲む。いや、残念ながら金にはなってないんだよね。というか銀すらも怪しいんだが。いや、更新しとらんし。
「くぇぇぇぇぇぇぇ!」
コカトリスが怒ってこっちに向かってくる。おおっと、そうは問屋が卸さない。私は転移でコカトリスの頭の後ろに移動して思いっきり蹴飛ばした。
「くぇ!?」
後頭部に衝撃を受けて振り向くコカトリス。その時には私は木の上で不敵な笑みを浮かべている。ふふん、来いよべねっとぉ! まあ銃は持って無さそうだけど。
「くぅぅぅぅぅぅ、くぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
コカトリスは息を吸い込んでそれをそのまま放つ。いわゆる石化ブレスだろう。当たってるのに木や草は石化してない。私にはもちろん当たってない。生物は残らず石化するんじゃないんだね。
えっ? だって私もコカトリス退治は初めてだもん。なんにだって初めてはあるよね。
コカトリスのブレスについてちょっと思ったことがある。もしかして私の身体には通じないんじゃないかって。生体そのものじゃなくて魔力持ってるやつにその魔力を使って石化させるのかもしれないって。試してみる価値はあるよね。
とはいえ、私の検証が間違ってました、だと誰も得することなく終わりそうなので一か八かの賭けはしない。そもそもギャンブル苦手なんだよ。
「とりあえず閉じ込めるよ、箱庭!」
最近の私のお気に入り。四方と上下を障壁で囲んだ箱庭だ。大きさは一回り大きい程度。コカトリスは暴れるがそう簡単に解除は出来ない。
たまらずコカトリスはブレスを吐くが、箱庭に阻まれているのでそのまま石化ブレスが返ってくる。
「くぇ!? くぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
コカトリスは石化ブレスを自分で食らって、石化した。あー、自分の石化に対する耐性を持ってなかったのか。まだ石化のガスが蔓延してるであろう所に一部障壁を解除して手を突っ込む。
うん、なんともなってない。やっぱり私には石化ブレスも通じなさそうである。とりあえず石化したコカトリスは私のアイテムボックスへ。石化解除したら暴れ出しそうだから素直に石化を解くべきかは分からないんだよね。石化したまま首を折っといた方がいいのかもしれない。
そのまま冒険者ギルドに戻るとジッキーさんのパーティメンバーが全員揃っていた。暇人め。いや、私が帰ってくるのを待ってたのか?
「キューさん! ご無事でよかった」
「お怪我はありませんか?」
「無事な様で何より」
「ポーション、ポーションはどうなったの?」
「いやあ、後はオレらに任せてください。今度こそ狩ってみせますから!」
約一名、私よりも心配してるベクトルが別方向に行ってる人がいるみたいだけど気の所為かな?
「あ、ごめん。コカトリス退治しちゃった」
「ええええええええ!?」
ギャリッカさんに詳しい話をしろと詰められた。だから石化したコカトリスを置いてきたんだよ。ちゃんと解除したらまた暴れ出すかもだから首折っとくとかしといた方がいいよって。
あ、ポーションの残りはタバサさんにあげました。コカトリスの石化を解除する為に使いたい、コカトリスの部位が欲しいので部分解体したいとか言ってたらタバサさんがこの世の終わりみたいな顔したからね。
タバサさんにはこのポーションを研究してもらってこっちの大陸でも石化解除ポーションを作れるようにしてもらおう。失敗したら私が向こうの大陸から買って持ってくるからさ。