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真実(episode198)

今明かされる出生の謎!

 気配が完全に変わった。人と言うよりも獣。魔獣と対峙してるみたいな感覚だ。と言っても私の対峙してた魔物なんてそんなには居ないんだけど。これから! これから出会う予定だったんだもん。サガルマータの神獣? あれはまた違うモノだからね。


「簡単に、壊れないでよ、NEEEEEEEEEEEE!」


 雄叫びというか咆哮というか、叫び声をあげてミシェルだったものが突っ込んでくる。無茶苦茶速い。反射神経強化してなきゃ倒れてるよ。


「避けたァ、避けれるんだァ、いいねぇいいねぇ!」


 何かが飛んでくる。私は咄嗟に水の幕を作った。木片? あ、男どもが吹っ飛んで船艙せんそう壊した時に出た破片か。


「逃がさないィィィィィィィィ!」


 水の幕もお構い無しにミシェルが突っ込んでくる。猪突猛進だよね。まあこれくらいのスピード持ってんならそりゃあ動きも単調になるか。


 正直な話、あのスピードで截拳道ジークンドー使ってこられたら手の施しようがないと思うんだけど、どうやら闘争本能の方が大きくて冷静ては居られないみたい。


 それならそれでこっちにも考えがある。まずは金門〈反射神経増強ブーストリフレックス〉を掛ける。頭が焼き切れそうになるけど、少しの間は持つだろう。これでも回復は得意な水門遣いだ。


「八門遁甲、日昳にってつに水門にて開門より出て、生門より帰る!」


 久々の八門遁甲。ミシェルに勝つには使わなきゃダメだ。今の時間は昼食後の午後一時くらい。まあ昼ごはん持って来た時間だからね。反射神経増強使ってるからミシェルの動きは見える。ミシェルさんの攻撃に合わせて八門遁甲を使えば最小限の動きで死角を取れる!


「!?」


 すぐ側に潜んでる私をミシェルは認識出来ない。居るのに消えたように見える。これぞ八門遁甲の真骨頂。私はそこから大人しくさせる為の魔法を繰り出す。とりあえずあの薬が切れるまでは拘束しておかないと!


「雷よ、蜘蛛の網となりて、敵を捕え、麻痺せしめよ、木門〈網絡蠱毒スパイダーネット〉」


 海の上ではあるので水門の力が強い。当然ながら水生木で木門の術も強化されてるはず。海水は特に電気の通りがいいからね。


「あがっ!?」


 電撃付与された蜘蛛の糸に絡め取られてミシェルは床に倒れた。流石に運動能力麻痺させる電撃はキツかったみたいだ。これがジョキャニーヤさんの人形遣い(パペッティア)だつたら無理やりにでも動いたかもしれない。あの時はジョキャニーヤさんの意識も刈り取ったから何とかなったんだけど。


「何やってんのよ、ミシェル! 立ちなさい! あんたそれでもバルナバなの? ゲオルグの尖兵なの?」


 みっともなく喚くドナ。いや、立ちたくても立てないと思うよ。そんなドナにゆっくりとステフが近づいていく。


「ドナ、よくも私の友達をこんな目に合わせてくれたわね?」


 あなたのお友達のミシェルをこんな目に合わせたのは私だと思うんですが。まあそもそもドナの命令が無ければ対立すらしてなかったか。個人的な感情はステフの味方みたいだったし。いや、それはそれとして私とはバトルしたがってたよなあ。


「ひっ、なっ、何よ。あんた、キリアンの分際でゲオルギオスの宗家に逆らおうっての?」

「例えゲオルギオスであっても味方を堕落させるようなトップは要らないと思いませんか?」

「なんの事よ!」

「ハーミスが全て吐きました。連邦捜査局、いえ、(counter)(drug)(unit)が黙っていないでしょうね」

「……私を、私を守りなさい!」


 ステフの突き付けにドナは頭がおかしくなったんだろうか。自分を守れと主張して来た。


「正気なの?」

「なによ、キリアンの役目は情報収集と操作。私がドラッグの売人だってことぐらいは簡単にもみ消せるでしょうが!」


 なるほど。キリアンは、ステフの家はそうやってグループの弱みを潰してきたのか。でもそれはゲオルギオスとキリアンの間の関係が強固であればの話だ。


「ハーミスに聞いたんだけど、私だけでなくミシェルも薬漬けにして思うようにしようと思ってたんですってね?」

「そ、それの何が悪いのよ。売る先が無かったんだから仕方ないでしょう?」

「あなたにゲオルギオスの商才は遺伝してなかったみたいね。たかがクスリの買い手も見つけられないなんて」


 えっ、そこなの? 自分と友人を嵌めようとしたことへの怒りとかじゃないの? あ、その怒りは怒りとして、ゲオルギオスに反抗するにはそれなりの理由、つまり、「上に戴くに値せず」というのを突き付けなきゃいけないのか。


「だいたいドナ。あなたにゲオルギオスの血なんて入ってないでしょう? あなたのお母様の淫売が浮気相手の胤で生まれた子供なんだから」

「え?」


 どうやらドナが固まってしまったらしい。これは最大の爆弾だろう。今までゲオルギオスの血統を誇りとして持ち続けてきた本家本流のお嬢様が実は血を引いてないなんてスキャンダルにも程がある。


「嘘、嘘よ、そんなの嘘! 私が、お父様と、血が繋がってないなんて!」

「あら、根拠も無しにこんなこと言うわけないじゃない。私はキリアンよ? というか血液型の時点でおかしいと思わなきゃ」

「血液型? お父様はB型で私はA型。そんな親子だっているじゃない!」

「あら、あなたのお母様(淫売)の血液型はO型よ? 生まれるわけないじゃない」

「嘘よ、嘘よ。そんな。お母様の血液型がA型だってお父様が」


 どうやらゲオルギオスのトップはこのことを知っていながら隠蔽を図った様だ。個人データを改ざんしてまで。


「そんな、私が、ゲオルギオスのこの私が」

「だからあなたはゲオルギオスじゃないのよ。商才の欠片もない淫売のお嬢様」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


 どうやらステフの突きつける真実に耐えきれなくなったのか喉が張り裂けんばかりの絶叫をかましてその場にガックリと膝を着いた。心が折れたな、あれは。ステフ、恐ろしい子!

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