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第百九十七話 石鶏

パーティ名は特に決めてません。

 ジッキーさんのところのパーティメンバーが揃いました。みんな街中での依頼を受けていたみたいでサーリアさんが把握していました。まあパーティ担当の受付嬢だもんね。


「ジッキー、治ったってマジかよ!?」


 真っ先に飛び込んで来たのはガタイのいい大男。いわゆる盾役とか呼ばれる人だろう。


「ロバート、見てくれよ。すっかり良くなったさ」

「本当だ。良かったなあ。これでまたみんなで冒険に行けるな!」


 そのロバートさんは工事現場で石運びをしていたそうだ。まあ力はありそうだからね。なんでも外壁が崩れているのでそれを直すためなんだとか。……私は何もやってないよ?


「ジッキーが治ったって?」


 続いて入って来たのは古めかしい魔法使いの帽子を被ったレトロスタイルなお嬢さん。ちなみにちっちゃくないよ!(お察し)な模様。


「タバサ、落ち着いて」

「いやあ水門は専門外だったからね。でも水門を使えるチェレッタがダメだったのにどうやって石化を?」

「ポーションよ。東大陸のポーションが手に入ったの?」

「なんだって!? それはまだ残ってるのかい? 私の分は? 研究用に分析する分が欲しいんだけど、瓶はどこだい? あー、全部使っちゃってるじゃないか。チェレッタ、少しは私の為に残しておいてくれようとか思わなかったのかい?」


 どうやらこのタバサという人物はある意味、錬金術師どへんたいなんだろう。ふりがながおかしい? 気のせいだ。ちなみに仕事は図書館で書物の整理をしていたんだとか。閉館時間になったのでそれから来たみたい。


「アニキ、治ったって聞いたぜ!」


 最後に入ってきたのは軽装の男性。歳はだいぶ若い。成人したてというとかろか。素早しっこそうな風体だ。ちなみに窓から入ってきた。


「キッド、入るなら表から入って来い」

「わー、本当に治ってら! おめでとうアニキ! おめでとう、チェレ姉!」

「もう、なんで私まで」

「そりゃあこれで遠慮しないでくんずほぐれつ出来るからさあ」

「キッド!?」


 チェレッタさんがキッドを追い掛けるが捕まらない。ひらりひらりと舞うように逃げていたが、ロバートさんがガシッと掴んで座らせた。助かります。


「遊ぶのは終わりだ。キッド。そこにいる方がポーションを提供してくださった東大陸の方だ。それとサーリアさんはともかくギルドマスターまで一緒に居るんだからな」

「げっ、ホントだ。サーリアさんも来てたんですね。すいませんでした」

「ふふふ、キッド君はすっかりみんなに慣れたみたいね」

「その節はお世話になりました。キッドが居なきゃシルバーでやっていけてないと思います」

「アニキ……」


 どうやらキッドは途中加入で斡旋したのはサーリアさんなのだろう。本当に受付って役目以上に面倒を見てたんだなあ


「ええと、ビッグバードの変異種の話でしたね。わかる範囲でお話しします」


 どうやら話はビッグバードに襲われていた畑の護衛だったらしい。野菜畑をビッグバードがつつきに来るというのはよくある話らしく、ビッグバードも生来気が強くないため、相手が強いと分かればすぐに逃げて近寄らなくなるそうだ。


 パーティメンバーがその依頼を受けたのは次の依頼までの繋ぎのつもりだった。ちょうどそっち方面に行く用事があったので村に滞在がてら引き受けたという行きがけの駄賃みたいな感じだ。


 ビッグバードは集団で来ることもあるか五、六羽くらいで集団戦術を取ることもなく、それぞれが好き勝手に暴れるんだとか。そりゃあやりやすい相手だよね。


 ところがそのビッグバードは一羽で来た。それだけでもおかしいのにサイズがふた周りぐらい大きかったのだ。


 まあビッグバードも個体差で大きさが異なるから少し大きいなと思ったもののおかしいなとは思わなかったんだとか。


「あの時に気付いていれば」

「いや、みんなビッグバードに遭遇するのは初めてだったんだ。こんなものかと思っちゃうよ」


 そして巨大なビッグバードは勢揃いしている冒険者パーティに突っ込んできた。まずはロバートが足を止める。デカイ盾で突進を受け止めようとしたが弾き飛ばされてしまった。


「気をつけろ! こいつ、強いぞ」


 ロバートの注意喚起にタバサは詠唱を始める。炎の矢が流星のように降り注いだ。炎熱の流星雨って魔法らしい。よく分からないけど。


 流星雨の魔法はビッグバードに直撃して怯んだものの、攻撃を止める気配は無い。タバサを蹴飛ばそうとして繰り広げられる攻撃を体勢を立て直したロバートが受け止める。そこにキッドが矢を放って注意を逸らした。


 樹上から矢を放ったキッドにビッグバードが怒り攻撃を仕掛けようとした所に素早く近づいたジッキーさんが斬りつける。ジッキーさんの一撃は羽根の途中までを切り裂いた。


 ビッグバードは怒り狂いジッキーさんに口から何かを吹きかけようとした。チェレッタさんは慌てて水の幕でジッキーさんを覆おうとしたが、間一髪間に合わず、右腕と右脚が石化してしまった、ということだ。その後ビッグバード……いや、コカトリスは森の中に消えていったらしい。


「ええとそれじゃあ多分まだそのコカトリスはそこにいるよね?」

「そうなんです。下手したら村の人達が僕たちのせいで危険な目にあっているのかもだから早く行かなきゃいけないんです!」


 ジッキーさんは今にも走り出しそうだ。いや、今までそんな素振り見せんかったやん。これは忘れてたか自分の石化の事が優先で抜け落ちてたかだね。


「あー。うん。わかった。とりあえず私が様子を見てくるよ。手に負えないようならギャリッカさんに頼むね」

「いやまあコカトリスとなりゃあ出張るがよ。おめぇさんはいいのか?」

「乗りかかった船だよ。大丈夫。ちゃんと石化解除ポーションならもう一本あるし」

「まだあるんですか!? それをどうか、どうか私に、少しだけでもいいので譲って下さいいいいいいい!」


 タバサさんが縋りついてきた。いや話聞いてた? 私、今からコカトリス偵察に行くのよ?

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