第百九十六話 解石
ちょっと閲覧注意かも? まあ直接的な行為は書いてないので許して欲しい。
当主の方に案内されて廊下を進む。廊下を進みながら自己紹介の続きをする。男爵様のお名前はゲラン男爵。ファーストネームは特に聞いてない。息子さんの名前はジッキーというらしい。これはサーリアさんが教えてくれた。まあ冒険者としての登録名に男爵の息子であるという話はされてないのだけど。
「ここです」
扉の前には二人の衛兵らしき人物が立っていた。まあそりゃあそうか。ジッキー君が動けないんだからやりたい放題になるもんね。
「私だ。入るぞ」
男爵様がノックしてすぐに扉を開ける。いや、ちょっとは待ってあげたらどうなの? プライバシーとかないのかな? もしかしてポーション手に入れて気が逸ってる?
「父上、ちょっと待っ」
ガチャリ。扉が開くとそこには上半身裸の美青年が。あ、いや、裸だからこそわかるんだけど、右腕は見事に石化している。
ちょうどその右腕を支えながら魔法使い風の一人の女性が脇の下をタオルで拭いていた。あ、もしかしてお邪魔でした?
「あ、あの、男爵様、こ、これは、違うんです! ジッキーがなんか気持ち悪そうだったので身体を拭いてあげれば楽になるかと思いまして」
段々ともごもごとなっていく女性。この人はメイドさん、ではなさそうだけどどなたなのかな?
「チェレッタ。気にするな。息子の世話をありがとう。喜べ。ポーションが手に入ったぞ!」
男爵様は特に気にしてないみたいだ。チェレッタさんというのか。どうやら冒険者仲間なんだろうか。サーリアさんが微笑ましげに見ている。あ、そういう関係。既に売約済みって事ですね。割と好みだったから残念。あ、エドワード様の方がちょい上かな。
「本当ですか、旦那様! 良かったですね、ジッキー様!」
「チェレッタ。僕の右腕や右脚は本当に治るのかい?」
「大丈夫ですよ。だって東大陸のポーションですもの。ほら、聖母ミリアム様だってポーションで治ったって!」
あー、そういう話になってんのね。というかミリアムさん治したのは私であってポーションでは無いんだけど。まあ冒険者ギルドでポーション探しといて探すのやめた途端にミリアムさんが回復したらそんな噂も流れるか。
「そうか。この様な姿で申し訳ない。無礼をお許しください。ジッキー・ゲランと申します。サーリアさんには特にお世話になっておりまして」
「むっ!」
サーリアさんにジッキーさんがにこやかに微笑みかけたらチェレッタさんが物凄い目をしてサーリアさんを睨んでいた。サーリアさんは慣れているらしく涼しい顔で流している。
「他のメンバーの方々は?」
「ああ、その薬代を稼ぐために行動してくれています。冒険には出てないと思いますが街のあちこちで短期の仕事をしているみたいです」
「ジッキーさんは皆さんに慕われてますね」
「そんな。みんなに支えてもらってばかりで。不甲斐ない自分を恥じるばかりです」
はにかんだ顔も可愛い! いや、平常心平常心。なんか反応したらチェレッタさんから直死の魔眼でも飛んできそうな感じだもん。
「ええと、じゃあ早速治療に移りましょう。右腕を失礼しますね」
「は、はい。よろしくお願いします」
私はつかつかと歩み寄るとアイテムボックスから予め出しておいたポーションを右腕に掛ける。あ、飲んだらダメなんだよ。患部に直接掛けるの。
満遍なく掛けると半分以上瓶の中身は残っている。右腕が徐々に石化解除されていく。
「こっ、これは!」
「おお!」
「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます!」
完全に右腕が動くようになって嬉しそうだ。さて、次は右脚だね。布団めくってくれるかな?
「えっ、あ? いや、その、ちょっと待っていただけると」
「あの、あの、あの、あの、私が、その、掛けるだけなら私がやっちゃダメでしょうか?」
「いや、手間じゃない? 私がやった方が早いよ。ほら、めくるわよ」
と言いながら素早く布団をめくると、下半身が完全に全裸で股の間からキノコがコンニチハしていた。しかもなんか勃起してる。
「きゃっ!」
言いながらしっかり指の間からそのものを凝視しているチェレッタさん。私? いや、拷問とかでもっといかついのを切り落としたこともあるから別に平気だけど。それに大きさも若干控えめだから怖くもないしね。
「あの、その、すいません……」
「あー、うん、まあ治療だからね。それに生理現象なんだからどうしようもないでしょ」
多分私が居たから勃ったって訳じゃないと思う。どっちかと言えばチェレッタさんに身体拭いて貰ってる時からこうなってたんじゃないかな? もしかして拭き終わったら何回戦かするつもりだったのかもしれない。いや、万一石化した場所が取れたらアウトだからそれはないか。
「じゃあ掛けますね」
特に気にすることもなく、私は平然と右脚にもポーションを掛ける。患部どころか感部にも掛かって冷たそうにしていた。まあ治まってもないんだけど。
右脚の石化も段々と治っていく。完全に石化した場所が無くなってジッキーさんは立ち上がろうとした。もちろん私はとめたよ。
「あの、先にパンツを履いた方がいいのでは?」
「……そ、それもそうだな。済まない。粗末なものを見せた」
「そんなことはありません! ジッキー様のはその、素敵です」
あー、この二人もうやっってんな。まあ粗末ってほどでは無いが立派ってほどでも無いからなあ。まあ大きさが人としての偉さとかでもないし、恋人に喜んで貰えるならいいんじゃないかな?
パンツを履いて、服を着て、改めて立ち上がったジッキーさんが私に深々と頭を下げた。なお、チェレッタさんは右側でジッキーさんを支えている。まあ石化が解けたばかりでバランス感覚もまだ戻ってないだろうからね。リハビリ頑張ってください。
「ええと、それじゃあ交換条件として、あなたが出会ったビッグバードの変異種とやらの話を聞かせて貰えるかな? 出来たらパーティ全員が居てくれた方がいいんだけど」
とりあえず街中に散らばってるパーティメンバーも呼んでもらおう。それぞれの視点があるだろうからね。