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船闘(episode196)

戦闘シーンはなかなか難しいですね。

 四人が私たちを囲む様に展開した。いや、私たちをボコるくらいならステフは引かないだろうなあ。この子、めっちゃ芯は強いんだと思うもん。そこに私の教えた身体強化が加われば鬼に金棒、虎に翼。拉麺男と毒狼拳蛾蛇虫の合体技、白虎紅鷹拳かな?


「お、おい、どうすんだよ。痛めつけてもこいつにゃ無駄だろ?」

「馬鹿だな。捕まえてクスリ打っちまえば廃人になるんだからあとは思い通りよ」

「へへ、な、ならオレにくれよ。ステフを可愛がりてぇんだ」

「ジョエル、お前穴がありゃなんでもいいんかよ」


 ぐへへと下卑た笑いを浮かべる一同。どうやらどいつもこいつもクズばかりらしい。類は友を呼ぶ、と言ったらステフやミシェルに失礼なのかな。


「ステフ、あの注射器だけは喰らわないように。まあ武器として使うんじゃなくて捕まえてから打とうとすると思うんだけど」

「武器に使っても刺さってから押し込まなきゃ意味無いでしょう。そんなことも分からないとは思いたくないわね」


 ということでバトルスタートだ。まず突っ込んできたのはダニエル。体格的には一番ガタイがいい。まあ他がどんぐりの背比べなんだけど。こいつだけは百八十超えて百九十まで届きそうだ。


「ひゃーはっはっはっ、ステフはオレの実力わかってるよなあ? 良く抑え付けられてたもんな!」

「おい、ダニー、お前まさか……」

「ち、違うぞジョエル。ドナに頼まれてお仕置するのを手伝っただけだ」

「被害者は私だけじゃないでしょう?」

「複数回抑え付けたのはお前だけだよ。後はみんな大人しくなりやがったからな」


 どうやら今までもステフはドナに対して反抗的な態度をとったことがあったみたいだ。その度に「お仕置」されてたんだろう。どんなお仕置かは分からないがそこまで深刻なものというか貞操は無事らしい。


「ほぉら、捕まえた!」


 ダニエルの巨漢は逃げ道を狭める。狭い中で動かなきゃいけなかったステフはあっさりと捕まった。あー、まあ速度強化の方は教えてなかったからなあ。肉体強化の応用というか一種なんだけど。


「よぉし、オレが抑え込んでやるからハーミスが打て、残りの二人はそこの女を牽制しとけ!」


 スティーブは私に脅えている。まあ無理もない。私を襲った時に閃光フラッシュバン食らって転げ回った上に私に膝蹴りかまされて地面に転がったのはスティーブだもん。もう一人のジョエルにしたって気がステフの方に……いや、こいつが見てるの私のおっぱいだわ。とことん女好きなんだなあ。


 ステフの方をチラリと見るがどうやら心配は要らないようだ。特に焦ったりテンパったりしてないからね。小さくブツブツ呟いてるように見えるけどあれは呪文の詠唱だよ。


「身体強化! はぁ!」

「なっ!?」


 ステフの身体を魔力が包み(わたしにしかみえないんだけど)捕まえていたダニエルの腕を振りほどく。ダニエルは驚愕に目を見開いた。


 注射器を持って近付こうとしたハーミスにステフはダッシュで近づく。あー、速度的にはあまり早くないけど部屋が狭いからね。今度は速度強化もちゃんと教えなきゃなあ。いや、私がいないんだから使えないか。


「クソッ、こっち来んな!」

「近付こうとしてたのあんたじゃない!」


 ステフは手に持っている注射器を手首を叩いて落とすと、力任せに突き飛ばした。えーい、というなんとも気の抜けた声だったが効果は抜群だ。


 ハーミスはそのまま船艙の壁にぶつかって気絶してしまった。ダニエルが明らかな動揺を見せる。


「ハーミス! ちくしょう、お前ら許さねえ」

「許さなきゃどうするってのよ?」

「ぶっ殺して海に捨ててやる!」

「私の時もそんなこと言ってたよね。安直過ぎない?」

「うるせえ、死ねえ!」


 そう言うとダニエルは懐からコンバットナイフを取り出した。ステフは刃物にビクッとなってる。さすがに刃物に対する恐怖は即席じゃあどうにもならないか。


 私? いや、元々冒険者になろうとしてるやつがコンバットナイフごときの刃物でどうこうなる訳ないじゃない。刃渡り三十センチ程度だよ? あ、全長? どっちでもいいや。ショートソード以下だもん。


 基本的にこういう短い武器の場合は切り付けるよりも刺して来る方が一般的だ。上手い人なら打撃に交ぜて来るんだけど、こいつは武器を持ったら武器を使うことにしか頭が働いていない。まだ武器を持たない方が強かったまである。


 レッスンワンだよ、ステフ。こういう輩にはまずは武器を持ってる手を狙うんだ。相手の動きはこちらを刺し殺そうという単調なリズムだから身体強化掛かってたら簡単に避けれる。あ、今度反射神経強化も教えてあげるね。慣れないと脳を焼かれるけど。


 私は突きを見切ってそこに上からの振り下ろしを合わせる。今回は素手だ。なお、ナイフの刃に当たってもいいようにこっそり鋼質化クライフは使ってある。


 カランと音がしてナイフが落ちた。こういう時にナイフを諦めてすぐに私の動きを見ようとするのが二流、ナイフを頭に入れつつ攻撃を継続するのが一流だと思ってる。


 ダニエル? こいつは三流以下だよ。目が明らかにナイフの方にいってる。慌てて拾わなきゃとか思ってるんだろう。そもそも戦闘してる相手から目を逸らしてるのは下の下だ。だから私の攻撃は交わせない。


 私はナイフを拾おうとして下がったダニエルの顔面に肘を叩き込む。鼻が潰れてぐちゃって音がした。痛みに悶えて転がり回ってる。


 それをぽかんと眺めてるスティーブとジョエルに私はステフに合図をして攻撃をかます。私はスティーブに、ステフはジョエルに。渾身の力を込めて……あ、私は手加減してるよ、殺したくないし、ぶん殴る。


 ステフのパンチは腰が入ってないが身体強化があるのでこっちも吹っ飛ぶ。私の方はボディにキツいのをお見舞いしたので膝から崩れ落ちた。


 斯くして船艙での戦闘がひと段落ついた辺りでドナとミシェルが船艙に姿を現したのだった。いや、ミシェルってイオタは何やってんの? 逃がしたのか?

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