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第百九十五話 男爵

あ、男爵様名乗ってねえわ。まあ次回でいっか。

「わかった。ポーションは持ってるから買い取ってくれるなら出すよ。二束三文だからね」


 そもそもこの大陸には石化を使う魔物がそんなに居ないらしく、たまに石化解除ポーションを東大陸から必要に応じて輸入するだけらしい。


 まあ石化って石化してる間、不思議な力で生命活動が止まってるらしく、例え百年後に解除しても息があったって事らしい。本当かどうかは知らない。


 ただ、今回は中途半端に右腕右脚と食らってしまったので寝たきりになったんだとか。壊れなくてよかったね。


 なお、欠損した状態で解除すると、そのまま手足が欠損したままになるんだとか。表面が欠けるくらいなら大丈夫なんだがポッキリいくとダメらしい。誰か試したんかな?


 あ、でもでも欠損したのを欠片を繋ぎ合わせ解除したら元に戻ったりするのでは? これはビッグチャンス! 腕が斬られたりして切断された人を素早く石化して、繋げたあとに解除するっていう最新式の手術が誕生してしまうのでは?


 まあこの考えには欠点があって、石化をどうやって相手に付与するかだ。そういう魔法でもあればいいと思うんだが、私には分からないんだよね。あと、魔物使うにしても石化してくるのは気性が粗いのが多いらしく、テイムも難しいらしい。


「おお、ありがたい。いくらだ? こっちとしても男爵家がバックにいるからそれなりに金に糸目はつけないが」


 それなりに金に糸目はつけないなんてなんか情けなさが滲み出てくるセリフだ。まあ多くを取るつもりは無いよ。


「うーん、向こうの定価でいいんだけど。買い直すだけだし。銀貨で五枚も貰えればそれでいいよ」

「銀貨五枚!? いや、ありがたいが、良いのか?」

「私にとってはそこまで手間じゃないからね。それよりもその男爵子息さんから話を聞きたい」

「むっ? 先方には話してみよう。断られるとは思わんが。しかし男爵子息に会って何をするつもりだ? 婚活か?」


 ちゃうわ! いや、イケメンだったら割とそれもありな気がするけど。私は嫁ぐなら伯爵とか子爵とかくらいがいいんじゃないかと思うんだ。あ、もちろん貴族の娘って前提で。


 王族とか公、侯爵とかは位が高すぎて周りの使用人は傅くばかりだし、だいたい嫁ぎ先の義祖母とか義母とかが子供を取上げてしまう。夫は家の存続のために浮気三昧。かと言って男爵とかだと領地が狭いから金回りも良くなくて結局街で働いたりするそうな。それも身分を隠して。


 まあこれは私の偏見なのでこっちでは違うのかもしれない。えっ、ヒルダ様? あそこは例外だよ。そもそも公爵家同士の婚姻だし、何よりヒルダ様がテオドールにベタ惚れだもん。テオドールも満更でもないみたいだし。

「コカトリスの事を聞きたいの」

「あー、なるほどな。そっちか。まあ確かに本当にコカトリスなのか、ビッグバードの変異種なのかは分からないもんな」


 私としても試したい事もある。石化解除のポーションがあるうちにやっておきたい。だから本音を言えばパーティに同行させて欲しいとこほなんだけど、それやると私の「独自魔法ちょうのうりょく」がバレちゃうからな。


 ギルドマスターのギャリッカさんと共に馬車に揺られて王都の外れの方に向かう。男爵家の屋敷は貴族街からそれなりに近い王都の外れ区域にあるらしい。貴族街ではないのは地価が高いから。


 馬車にはギャリッカさんの他に美人の受付嬢さん、サーリアさんと言うらしい。なお、もう一人のサボり気味だった方の名前は分からない。帰ったら聞いてみるか。しかしどうしてサーリアさんがついて来たのか。


「たのもう!」


 扉の前で馬車から降りてスキンヘッドの刺青男が大音声で叫ぶ。慌てて門番が槍を構えた。あー、やっちまったなあ。


「もうギルマス。見た目がいかついんだから簡単にホイホイ前に出ないでください。こんにちは、冒険者ギルドの者ですが例のものが手に入ったのでお届けに上がりました、とお伝えください」

「はっ、わ、分かりました!」


 門番さんは慌てて遣いの者を走らせる。しばらくして邸内からメイドさんが出てきた。


「どうぞこちらへ。当主様がお会いになるそうで」


 邸内に通されてしばらく歩くと応接室なのだろう。大きなドアの前でメイドさんがノックをする。


「旦那様、冒険者ギルドの方がお見えになりました」

「よし、お通しせよ」


 中からの合図にメイドさんがドアを開ける。室内は華美ではないがそれなりに整ったいい部屋だ。応接ソファのところには少しやつれた感じの壮年の男性が座っている。お髭がそれなりに立派ですね。目は優しそうだけど。


「よく来てくださった! それで手に入ったというのは本当ですかな?」

「ええ、男爵様、でいらっしゃいますよね? こちらは冒険者ギルドのギルドマスター、ギャリッカ。そして私は受付嬢のサーリアと申します。息子さんのパーティの担当もしておりました」


 あー、サーリアさんが着いてきたのはその方が話が早いからか。なるほど。息子さんを知ってる人なら説得力あるもんね。


「ほほう、この様な美人の受付嬢とは。息子が冒険者にこだわるのもわかる気がしますわい」

「いえいえ、大変真面目に冒険者として上を目指して居ましたよ。このまま頑張ればゴールド級にも手が届くかもしれません」


 このセリフはシルバー級に上がった冒険者の保護者というか関係者にはみんなに言ってるのだそう。まあ冒険者なんてやる人間に保護者が居ることの方が珍しがったりするんだけど。まあ可能性はゼロではないよね。


「あ、私は東大陸から来ましたキューと申します。ポーションを提供しました」

「おお、貴方が! ありがとう。本当にありがとう!」

「真偽は確かめなくていいのですか? 私があなたを騙しているかも」

「それならば私のところに来る前に冒険者ギルドで止められているはずだ。そんなことはしないんだろう?」


 いやまあ確かに。冒険者ギルドの責任になるもんな。でも冒険者ギルドではそんな鑑定してなかったはず。あ、もしかしてミリアムさんの伴侶しりあいって思われてるからノータッチなのか?

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