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第二十話 兄弟

テオドールとエドワード。テオドールをテルミドールって打ちそうになったのはナイショ(笑)

 冒険者ギルドは王都だけあってものすごく混んでいた。いや、エッジの街もそれなりには行列とか出来てたりしたんだけど、まず、王都は窓口の数からして違う。


 依頼の完了報告、依頼のあっせん、買い取り、新規加入、クラン結成、依頼受付、お悩み相談……というかギルドでお悩み相談ってやるの? 依頼のあっせんや完了報告はランク別に分かれている。私はなったばかりの鉄級冒険者だから一番端っこだ。反対側の端には銅級の受付がある。普通はランク順じゃないのかと思ったら待ってる間に銅級が鉄級に絡むことが多かったのでこうなったと受付のおばちゃんが教えてくれた。


 ちなみに受付嬢の綺麗さは金級が一番いいらしい。やはりモチベーション維持の為の餌なんだろうか。


「で、なんか受けて行くかい?」

「あ、違うんです。その、実はエッジの街から手紙を届けに来ただけでして」

「ほほう、エッジからかい? なるほど。預かろうか」

「あ、はい、お願いします」


 私はカバンから手紙の束を出して、その内の一枚をそっとカバンにしまい直した。


「なんだい、そっちも寄越しなよ」

「あ、いえ、こっちは直接届けて欲しいって」

「全く、勝手なことする奴がいるもんだよ。私が説教してやるよ。誰だい、そんな無茶を言うやつは」

「ええと、その、公爵様、です」


 おばちゃんの動きが凍りついた。


「こう、しゃく、さま?」

「あ、はい。リングマイヤー公爵です。前にも行ったことはあるので場所はわかってますし」

「な、な、な、な」

「おばちゃん?」

「なんでギルドより先に届けに行かないんだい!」


 ものすごい剣幕で怒鳴られた。いやだって手紙が埋もれてたから先に多い方出しちゃった方が楽だと思ったんだもん。


「すぐ! 今すぐ! 公爵様のお屋敷に届けておいで! ギルドはあんたを見てない! 良いね?」

「えー、でも」

「良いね!?」

「あ、はい」


 そんなこんなでギルドを追い出されて公爵様のお屋敷に。門の前でどうしようかと悩んでると門番らしき人たちが寄ってきた。


「おい、そこの娘、公爵家に何の用だ!」

「あ、すいません。お手紙を届けに来たんですけど」

「手紙だと? 帝都の門番からは何も聞いてないぞ?」


 そういえば今回は門番さんには何も言ってなかった。入場の時も手紙を届けにギルドとあと個人的な場所にって言っただけだからなあ。


「怪しいやつ。捕まえて背後関係を吐かせろ!」


 数人が私に向かって捕まえようとしてくる。ええっ、なんで私がこんな目に合わないといけないの? ここは緊急避難だ。屋敷の中に入っちゃえ。私は前に公爵様と出会った部屋に転移テレポートする。


「なっ、どこから入ったのですか!

 曲者!」


 姿を現すと同時に執事らしい服装の人に見咎められた。いや、違うんですよ。私は怪しいものじゃありません。


 とりあえず落ち着いてもらわないといけない。しかたないから手紙を出す事にした。


「待って、待ってください。公爵様から手紙を届けるようにって。エッジの街から来ました!」

「何、エッジの街? 確かに旦那様は今エッジの街だが」

「これ、これを読んでください!」


 私は必死になってカバンから手紙を取り出した。執事さんの動きが止まる。


「そのお手紙をこちらへ」

「あの、どうぞ」


 公爵様は誰に渡せとかそういうのは指示されてないので、素直に渡した。執事さんは裏の封蝋に押されている紋章のようなものを確認すると、封を開けて手紙を読み始めた。


「なるほど……分かりました」


 手紙を読んでもらってた時間はそこまで長くなかったけど、なんか緊張した時間が流れた。私は執事さんに着座を促されてそのまま座っていた。メイドさんがお茶とお菓子を持ってきてくれた。あら、これは美味しい。


「旦那様はしばらくエッジの街で建て直しを行われるので、こちらの運営は私とエドワード様に任せると、そういうことでした」


 エドワード様? なんかまた知らない名前が出てきたんだけど。あ、公爵様の息子さんなのね。まあ息子と言ってももう成人済みなんだってさ。


「ご使者様、公爵様に返信を書きますのでお待ちいただけますかな?」

「あ、はい。大丈夫です」


 手紙書く時間待ってるくらいならどこかでご飯食べたいなとか思ってたんだけど、どうやらお菓子のおかわりが貰えるらしい。それはそれで美味しいから無問題。


「ベルガー、父上からの手紙だと?」


 そこに入ってきたのは金髪が眩しいイケメン男子。恐らく三十代辺りだとは思うがハッキリしたことは分からない。見るからにアホそうな顔をしていて、あの公爵様と血が繋がってるのか疑問である。


「これは……テオドール様。はい、お父上からの手紙です」

「手紙にはなんと?」

「その、エッジの街で事後処理をするので後を任せると」

「おお、やっと父上も私を認めて後を継がせる気になったか!」


 あれ? さっきはエドワード様がどうこう言ってたよね。でもこの人はエドワード様じゃなくてテオドール様? どういうこと?


「テオドール様、大変言い難いのですが、差配を任されましたのは私とエドワード様でございます」

「エドワード、だと!」

「はい、左様で」

「またエドワードかっ! 私は、私は公爵家の長男なんだぞ! 何故私ではなくて弟のエドワードなのだ!」


 激昂するテオドール。いやまあこんな癇癪起こすような人間にあとは任せられないよね。


「落ち着いてくださいませ。今回はエドワード様だっただけの話。テオドール様はきっと別の機会に」

「気休めを言うのはよせ! 父上は私の事など跡取りとして認めてないのだな!」


 いや、だからね。そんな屋敷中に響く声で当主たる公爵様の言うことに異を唱えたら屋敷中の使用人にそれが伝わると思わないのかな?


「兄上、あまり大きな声はおやめ下さい」

 

 今度現れたのはやはり金髪だが、どちらかというと柔和な感じの顔立ちの男性。三十代まではいってない、二十代半ばというところか。


「エドワード! 貴様、また父上に取り入りやがって!」

「誤解です、兄上。私は別に……」

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