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第百九十四話 石化

夜店で子供の頃買ったひよこを飼っていたのですが、大きくなるにつれ、暴れ回ったり、朝から鳴いたりするので農家に引き取ってもらいました。懐かしい。

 どうしても、とペペルさんが言うので王都の門の手前辺りでテレポートアウトした。ここまで徒歩で来ると怪しいということで馬車と馬もセットだ。


 ペペルさんを下ろしたらせっかくだから街中を覗いてみる。まあ私はいわゆる庶民だからね。最近は王侯貴族とばかり仲良くなってた気もするんたけど本来はこっち側の人間なんだよなあ。


 あ、ヤッピは純粋に下町繋がりというか被害者繋がりだからね。貴族になっちゃったのは私のせいというか成り行きなんだもん。いや、お母さんは貴族の娘だったらしいからそれなりに可能性はあったのか。


 散歩がてら冒険者ギルドに顔を出す。冒険者ギルドはいつも通り喧騒で賑わっていた。さすが王都だ。受付カウンターのお姉さんが私を見つけて手招きしてきた。あれ? なんかデジャブ。


「お嬢さん、東大陸の子でしょ。ポーション持ってないかしら?」


 囁く様な声で私に耳打ちしてきた。耳に息がかかってくすぐったい。あ、そういえばこの前来た時のお姉さんとはちょっと違うなあ。


「何をサボってるのかしら?」

「えー、サボってないですよ、先輩。ほら、この子。前に先輩が担当してた東大陸の子でしょ」

「あら本当。お久しぶりですね」

「今日はテンパってないんですね?」

「本日はミリアム様はいらっしゃらない様ですので」


 ああ、そうか。前はポーションの拠出を断ったはずなのに次に来た時はポーション所か元気になったミリアムさんと駆け落ちみたいな状況になってたもんね。いや、だからミリアムさんをお嫁に貰ったつもりは無いよ!


「ギルドマスターを呼んできます。こちらへどうぞ」


 問答無用でギルドマスターのところに通された。あ、いや、私は単に暇だったから来ただけだし、なんかついでに依頼でも受けよっかなって思っただけなんだけど。


「ギルドマスター、いらっしゃいますか? いらっしゃいますね? 入りますよ? わかった? ありがとうございます」


 そのまま受付嬢さんはドアを開けた。どこの吉〇新喜劇だよ!


「おい、勝手に入って来るな!」


 ギャリッカさんはだらしない格好で書類の山を放ったらかしにして、ソファで寛いでいた。


「またサボってましたね?」

「いや、さっきまでは仕事してたんだよ。これは休憩だ休憩!」

「……まあいいでしょう。キュー様がお見えになりましたよ」

「何っ!?」


 私の名前を聞いてギルドマスターの顔色が変わった。そして私に詰め寄ってくる。


「キューよ、久しぶりだな。その、奴隷の件は今鋭意努力中だからまだ解決とはいかんのだが」

「あー。そっちの方は王宮でもやってくれてますから。それよりもなんかポーションが必要だとか?」


 私の問い掛けにギャリッカさんの顔がぱあっと明るくなる。スキンヘッドに刺青いれてる男に愛想良くされても嬉しくもなんともないんだけど。


「おお、そうなんだ。スマンが石化解除のポーションがないかと思ってな」


 石化解除? いや、東大陸だとどこでも買えるものだし、念の為に持っときなさいってエレノアさんにもベルちゃんさんにも言われてたから二本ほど持ってはいるけど。


 よく考えたら私はソロだから石化したら誰も回復してくれないんじゃないかな? 予め飲むものではなくて石化した人の頭からかけるやつだし。


「それならまあありますけど。何に使うんですか?」

「実はな、とある男爵家の三男が冒険者になると言って家を飛び出してな」

「はあ、そんな事もあるんですね」


 って言ってみたけどよく考えたらティアもそんな感じだったよね。ティアのところは侯爵家だっけか。


「それで冒険者としてはまずまずのシルバー級にまで上がったんだがなあ」


 どうやらこの大陸でも冒険者ギルドの等級は同じらしい。そういや確認はしてなかったけど同じ組織なのかな? 全世界ネットワークみたいな?


「ある時、パーティメンバーと受けた依頼でビッグバードの討伐というのがあってな」


 えっ、あのローラースケートやアイススケートにダンスと水泳、さらには一輪車まで乗りこなすあの鳥? ……違った。どうやらこの大陸にいる魔獣で空は飛ばないけど巨漢で猛突進してくる鳥らしい。もうイノシシじゃない? あ、どっちかというと鳥だからダチョウ?


「ところがそのビッグバードは変異種だったらしくて口から石化する息を吐いたらしい」


 口から石化の息を吐くデカい鳥? それはビッグバードじゃなくてコカトリスというのでは? 私はそんな疑問を口に出してみた。


「コカトリス!? そんなものがいるのか!」


 いや、私らの大陸では割と一般的……と言うには遭遇率低いけど、石化がある上に割と何処にでも出没する危険性があるからとギルドで注意喚起されている魔獣だ。


 これがまた間抜けな話で、何処にでも出没するのは雛の状態のコカトリスを「カラーひよこ」みたいな感じで売ってた露天商がちらほら居たらしい。コカトリスの雛は割と色彩豊からしくて見た目に派手なのだとか。


「むむう、もしかしたらこの大陸にもそうやって入ってきたのかもしれない」


 まあ夜店で買ったひよこなんて飽きたら野に放されたりするからね。下手に育ててるとだんだん大きくなるからね。そりゃあまあ八洲の鶏くらいかと思ったら大きいので十メートルくらいのがいるとかいないとか。


「それで男爵様がの三男が仲間を庇ってその石化の息を浴びたらしい。幸いにして全身が石化した訳では無いのだが、右腕と右足が石化しているんだそうな」

「その人は今どちらに?」

「男爵家に戻されてベッドの上で療養中ということになっている」

「仲間の人達は?」

「ポーションを探し回ってる。オレも方々に伝手を頼ったがポーションは誰も持ってなくてリッピ殿に貿易で輸入してもらおうかと連絡していたのだが」


 あー、リッピさんは悪い奴らの妨害にあってたし、それが解決したら今度はヤッピの領主就任でドタバタしてたもんな。ええとこれは私は悪くないけど責任の一端の更に端っこ位は私にもありそうだ。仕方ない。ポーションは拠出しますか。

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