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第百九十三話 誘茶

食べ物の毒は猫猫が喜ぶのでナシにしました(猫猫関係ない)

「はーい、みなさん、朝ごはんですよ」

「わー、ありがとキュー」

「あの、私も一緒にいただくんですか?」


 とりあえずジャクリーンの事忘れてた。あとから私たち付きのメイドとして借り受けてるって話にしとこう。昨夜はヒルダ様が無理やり引き留めた。いいね?



「キュー。これ、毒はなかった?」

「なかったですよ。鍋ごと持ってきましたし、お皿にも細工はしてなかったです。恐らくやられるとしたらサーブの時でしょうね」


 ヒルダ様の物騒な心配に私は平然と答える。いや、だって昨日の時点で暗殺の手が伸びてたんだし、食事に毒を仕込まれる可能性もあるわけだもの。


 ついでに借りてきた銀食器を出してその皿にスープを注ぐ。特に変色はしてないし、私の鑑定サイコメトリでも毒の反応はない。


 一応全ての食べ物に鑑定を掛けながらそれぞれに配る。ヒルダ様は堂々と、ヤッピはがっつくように、そしてジャクリーンは恐る恐るといった感じで受け取った。あ、ヤッピ。おかわりの分は無いよ?


 室内の応接テーブルの上で食事をした後に食器を片付けてみんなで話す。このままこの城に留まるべきかって話。別の街に避難してから宰相の取り調べが終わって戻ってくる手もある。でもそれだといつ頃になるか分からないんだよなあ。


「ヒルダ様はおられますか?」

「どちらさまでしょうか?」

「側室のララネ様よりお茶会の案内を持って参りました。招待状を受け取って貰えませんか?」

「分かりました。ジャクリーン、お願いね」

「はい、分かりました!」


 ジャクリーンは元気よく返事をしてドアの方に手紙を受け取りに行く。えっ、私じゃないのかって? 専属メイドが居るのに来賓の私たちが直接受け取るのはマナー違反だからね。こういうのは使用人同士でやり取りしないといけないのだ。


「あれ? ジャクリーンじゃない。姿見えないと思ったらこんな所に居たのね」

「あら、アイシャじゃない。そうなのよ。昨夜ヒルダ様から自分の世話役に就きなさいと言われちゃって」


 ドアの前にいたそばかすメイドはジャクリーンの知り合いらしい。アイシャさんと言うらしい。


「あら、良かったじゃない。戻ってこないから心配したのよ」

「うん、ごめん。あ、招待状? ええとアイシャって側室様付きだっけ?」

「違うけどなんか側室様の周りがバタバタしててね。忙しくて私らみたいな一般メイドが駆り出されてんのよ。まあ特別ボーナスも出るみたいだし」

「いいなあ」

「いや、それ言うなら桁違いの指名料貰えるあんたの方でしょうが。羨ましいったらありゃしない」


 そう言って招待状を手渡して去って行った。ヒラヒラ手を振っていたのでいい子なんだろう。


「あの、ヒルダ様、指名料ってなんですか?」

「あら。城のメイドをお借りするんですもの。対価をはらってとうぜんでしょう?」

「ちなみにいかほどなのか金額を聞いても?」

「そうね。一年を十日で稼ぐいい女ってことわざ知ってる?」


 私が知ってるのは八洲の昔の時代の相撲取りなんだけどな。まあ女でなら花魁とかになるのかな? いやでも花魁は桁が違うっていうし。


「高級娼婦とかそういうのですか?」

「それくらい稼ぐのも居るって聞くけどそれとは違うわね。まあ普通はその来賓の喋る言葉をきちんとマスターしておくのが大事なんだけど」


 まあ異国の地で母国語が話せるならそりゃあ重宝するよね。ちなみにヒルダ様はこの国の言葉を話している。もうすっかりネイティブ顔負けだ。


 私は言葉は自動翻訳ばりにわかるので問題ないんだよね。これは私だけじゃなくてティアも同じだと思う。というかティアは向こうで不自由してないよね? まあ八洲語が話せれば問題無さそうだけど。世界中飛び回るわけでもあるまいし。


「お茶会の日程は二日後ね。ドレスをどうするかだけど」

「なんか領主の就任式で着てきた藍色のドレスが見たいんだそうよ。持って来ては居るのよね」

「私は持って来て無いですよ?」


 ヤッピが困ったような顔をしたのでアイテムボックスから取り出してやった。こんなこともあろうかとドレスは用意して御座る。


 ……いや、こんな展開になるだろうからってヒルダ様から持って行っとけ、もし使わなくともアイテムボックス内だったら嵩張らないだろうって言われてたんだよね。私の超能力よりもヒルダ様の方がよっぽど千里眼だよ!


「さて、じゃあ調達するのはアクセサリーね。商人を呼ぶわよ。キュー、あのペペルってのを呼びなさい」


 いや、いきなり言われてもペペルさんにも都合というものが。


「大丈夫よ。王城で私が呼んでるって言えば機に敏な商人なら何をおいてもやってくるわよ」

 果たして私はペペルさんのところに行って事情を説明することに。あ、部屋には箱庭を施して出入り不可にしてから商都に向かったよ。


「またあなたですか。今度はなんですか?」


 ペペルさんの顔が心底迷惑そうな顔になる。それなりに利益も供与してると思うんだけど。


「あの、ヒルダ様から王城でお茶会があるのでその時に付けるアクセサリーを王城まで届けて欲しいと……」

「そ、それは真ですか!?」

「え? ええ、ヒルダ様から手紙も預かっております」


 ペペルさんはそれをひったくるようにして私から取り上げて、一心不乱に読んでいる。


「おお、おおお、おおおおおおお! これは、我が商会に与えられたかつてない栄誉! 我が商会に一片の悔いなし! あの藍染のドレスに合うアクセサリーならばこちらでも試行錯誤しておりましたとも!」


 ああ、なるほど。そういえばあの藍の染物の販路を任せたのもペペルさんだもんね。そりゃあ合わせて合うアクセサリーを用意してるか。そして今度のお茶会はそのお披露目の場となる。身内の席とはいえ、最高のお披露目の場だ。


「幾つか用意してございます。今すぐ持ってきますので王城、いえ、王都まで連れて行ってくださいませんか?」


 とりあえず一も二もなく了解した。王城の中でなくて良いのかと聞かれたが、こういうのには手順があるのです。と言われてしまった。色々あるのねえ。

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