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第百九十二話 寝坊

ヒルダ様とヤッピの年齢差って一回り以上あるんだよなあ……

「ヒルダ様らしくないですよ。魔法でドーンとやらなかったんですか?」

「だって、激しく動いたら、胸が見えそうになってて。ほら、テオの他に見せたくないし」

「お互い見せるほどの量ないじゃないですか」

「うるさい! あんたは少しはあるじゃないの。一緒にしないで!」


 ヒルダ様は無詠唱で騎士たちを片付けていく。私は防御に徹してるんだよ。障壁バリアを抜いて攻撃が飛んでくることは無さそうだし。


 最後の一人を倒し終えたところでヒルダ様ががっくりと膝を着く。割と体力の限界だったんだろう。


「無理するからですよ」

「多少は無理しないとテオの横に並べないもの」

「あの人の横に並ぶの割と至難の業だと思いますよ」

「平然と並んでおいてよく言う」

「私は並んでるんじゃないです。立ち位置がそもそも違うので」


 戦闘してるテオドールの隣にいるんじゃなくて、戦闘とかそういうのはテオドールに丸投げする立場だ。ヒルダ様はむしろテオドールを陰に日向に支える役目だと思うんだよ。


「ヒルダ様は役割分担が出来てると思いますけどね」

「気休めはやめなさい」

「いやだって、あのテオドール……様に領国経営とか出来ると思います?」

「テオなら難なくこなすわよ!」


 それは嘘だ。私は初対面の時からこいつに政務は任せられないって評価だったし、その評価は未だに変わっていない。というか呪いの宝石の効果が無くなってからバカ度が増した気さえする。いや、バカ度というか脳筋度というか。


「いや、絶対無理ですって。真面目に経営やるのに飽きて野山を演習とか言いながら飛び回るのが関の山ですよ」

「見てきたように言うのね」


 だってあいつ、エッジの街の森林暴走オーバーランに嬉々として駆けつけたからね。考えるよりも身体動かす方が好きなんだよ。


「さて、傷も塞がりましたし、私らの部屋に行きましょう」

「仕方ないわね。この部屋では寝れそうにないし」


 実際、ヒルダ様のベッドは大量の血と肉片でいっぱいだった。木門で切り刻んだらしい。吹っ飛ばすくらいにしとけばいいのに。あ、鎧が重かったんですか。だから継ぎ目を狙って風の刃でねえ。


 ヒルダ様を連れて戻ってくるとジャクリーンとヤッピはすっかり意気投合した様子。まあヤッピも元々は下町の商人の子だからね。それにやけにこういう子を惹きつけるカリスマ性もあるんだよ。


「ヤッピ。大丈夫?」

「はい、キューが居てくれたので。ヒルダ様は大丈夫でしたか?」

「ええ、キューに治してもらったから大丈夫になったわ」

「それってヤバかったってことですか!?」


 ヤッピとヒルダ様の会話にジャクリーンがどうしていいのかオロオロしている。ジャクリーンとしてはヤッピという地方都市の領主みたいな日頃話さないような存在と仲良くなっただけでも奇跡なのに、今度はヒルダ様だ。


「あ、あの、私、ジャクリーンといいます。この城のメイドです。貴女様のお名前はなんと言いますか?」

「あら、ご丁寧にありがとう。私は東大陸から来た公爵夫人のヒルダよ」

「ひうっ!?」


 ヒルダ様の自己紹介にジャクリーンの身体が跳ね上がった。余程驚いたのだろう。


「まだ公爵夫人にはなってないじゃん」

「いいのよ。この旅から帰ったらテオが公爵位を継ぐ事になってるんだから」


 あー、やっと親父さんもテオドールに後事を託す気になったのか。となるとエドワード様は公爵の補佐というところかな。まあヒルダ様が主導権握るんだろうし、間違いは起こらないだろう。


「とりあえず朝までまだ時間ありますから寝ましょう。この部屋は私が結界を張っているので大丈夫です」

「爆裂魔法や騎士の全力攻撃すらも防ぐ結界魔法なんか聞いた事ないんだけど」

「ヤッピ、こんな言葉を知ってる? こまけぇこたぁいいんだよ!!」

「もういいわ。それよりもヒルダ様がベッドに寝るんなら私らはソファにでも」


 そう言ってソファで寝ようとするヤッピをヒルダ様が抱き締めた。


「年頃の娘が遠慮するんじゃないわよ」

「年頃の娘って、ヒルダ様も見る感じ同い歳くらい」

「わーわーわー! 早く、早く寝ましょう。夜更かしは美容の大敵ですから!」


 そんな感じで有耶無耶にしながら私らはみんなでベッドに入った。幸いにして胸部に特殊装甲を持っている人は居なかったので狭い思いをすることもなくみんなでベッドにもぐりこめた。


 ちなみに客間のベッドが大きいのは泊まるはずの来賓が複数のメイドさんとかとイチャイチャ出来るようにと配慮されているためらしいよ!


 ……嘘です。大は小を兼ねるということで子ども用のベッドを他に用意したくないからなんだとか。まあそりゃあ年若くても王子とかなら親について外交に来たりするケースもあるのかもしれないもんね。


 翌朝、小鳥の囀りと共に起き上がる、なんて事はなかった。ドアの前で誰かがドンドンと扉を叩いてる。そのリズムじゃもう一回遊べないドン!


 他の三人はぐっすり眠っているので念の為に音遮断障壁を付けておこう。私は扉の前まで行って障壁を解除した。


「なんですか、朝っぱらからどんどんと。太鼓の達人にでもなったつもりですか?」

「おお、おはようございます。私、メイドのものでして。皆様が朝ごはんに起きてこられなかったのでどうされたのかと様子を見に来たのです」


 朝ごはん! そういうのもあるのか。そりゃあまああるわな。とりあえず私だけ扉から出よう。


「昨晩色々ありましてみんなまだ寝てるんです。皆さんの分の朝食を私が代わりに受け取っても?」

「あ、はい。捨てるよりはいいので構いませんが」

「じゃあ案内してください」


 メイドの後について行って朝食の並んでいるテーブルに来た。他の方々は既に朝食を終わられた様で、私たちの分だけがお皿とともにそこにある。スープとかは来てから注がれるらしい。ちなみにメニューはパンにハムエッグにコーンスープらしい。うん、朝ごはんって感じだ。


「スープは鍋ごと貰っても?」

「……後で返していただけるのでしたら。よろしければ部屋まで運びますよ?」

「いえ、必要ありません」


 私はスープの鍋からパンから焼きたてから少し冷めたハムエッグまでアイテムボックスにしまい込んだ。

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