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教練(episode192)

ステフと仲良くなりました。

「まずは一つ一つ説明して欲しいわ。水はどこから出てきたの?」

「どこからって言われても……大気中?」


 実際は大気中にある微弱な何かが私の体内の魔臓と反応して生まれてるんだけど、それをやると魔臓から説明しないといけない上に解剖させてとか言われそうなので却下だ。


「なるほど。大気中にある水分を集めて水としての形にしたのね。なかなか面白いじゃない。それで、その形に形成したのは?」

「いや、なんか可愛いかなって」

「自由に形を変更出来るのね?」

「あ、うん、まあ。余程複雑な形でなければ」


 水の形を変える、というのは水門でも割と初歩の魔法なのだ。というか慣れれば今みたいに詠唱無しでいける。魔力操作の練習にもなるので割と頻繁にやっている。


 別にアパートがペット禁止だから無聊を慰める為にやってたんじゃないよ? あー、でも今の家は洋館だから猫とか飼ってもいいのか。


「あなたは今、水を操ったけど、火も操れるのよね? 他には何が操れるの?」

「何がって言われても……木火土金水一応全属性操れるけど」

「モッカドゴンスイ? チスイカフーじゃないの?」


 なんかカタカナっぽく言われると概要が掴みにくい……ああ、地水火風か。タケルにやらせてもらったゲームの属性は大体そういうのだったな。後は聖属性とか光属性とか闇属性とか時間属性、空間属性とかもあったな。再現出来るのかね?


「まあそこは思想の違いとかそういうのじゃないかな? 少なくとも私が教えられてきたのはそういうものだから」

「教えてくれる人がいるの? それを習えば私にも出来るようになる!?」


 今までで一番の食いつきだ。やっぱり自分で使ってみたいんだろうな。いやまあタケルや凪沙、それに諾子さんの時みたいに私が傍にいれば使える可能性はあるんだけど。


「ええと、じゃあ試してみる?」

「いいの? いえ、できるの?」

「試してみないと分からない。出来る可能性はあるよ。まあ私のそばじゃないとダメだろうけど」

「よく分からないけどあなたのそばならいいのね? やるわ!」


 という感じでやる気満々なステフだった。私は自室に戻る。ステフも用意をしてから来ると言っていたんだけど。


「お待たせ!」


 ステフはなんというか、古式な魔法使いスタイルでやってきた。マハリクマハリタな感じ。いや、どっちかと言うとピリカピリララの方か。


「その衣装は?」

「もちろん私物よ。こんな事もあろうかと持ち歩いていたの」

「……もしかして私の能力の事ある程度予想ついててこの船に乗ることもわかってて?」

「うふふふふ、ご想像にお任せするわ」


 思ったよりもヤバそうな扉が開きかけていたのでそれ以上の追及はしない事にしました。よし、魔法の実践だ。


「じゃあまずは属性を調べるね。手を握るけどいい?」

「ええ、最初はお友達からって事で」

「何の勘違いをしてるのか分からないけど、魔力を流すだけだからね」


 まずは私の得意な水門の魔力を流す。割とスムーズに流れてるが水門じゃあ無さそうだ。となれば隣りだよね。金門の魔力で……うわっ、一気に流れる!? こりゃあ間違いない。この子は金門だ。


「なんかすごく身体が火照って来たんだけど」

「うん、わかったよ。あなたは金門だね」

「金門……ゴールデンゲートってこと? まあ確かに近所にあるけど」


 どうやら金門と縁が深い様で。いや、なんか違う気もするけど。まあ本人の資質なんだろうね。堅実とかそういうやつ。


「じゃあとりあえず金門の基本の金属強化からかな」


 私は彼女のステッキを手に取った。この金属は鉄では無さそうだ。アルミニウムとかそんな感じ? 熱には弱そうだ。


「鉄だと重いからアルミで作ったのよ。持ち運びには良いのよね」

「そうですか。でも衝撃には弱そうですね」

「当たり前じゃない。杖は打撃武器じゃないのよ?」


 いや、向こうの世界では杖持ちは杖で相手の攻撃捌きながら魔法撃ってたりしてたけど。いや、そもそも杖持ち自体が旧世紀の遺物って感じだったんだけどさ。なんかスタイルにこだわる人ってどこの世界でもいるよね。


「ええ、じゃあこのステッキですが、これを強化してこの氷の塊を殴ってもらいます」


 氷の塊は今私がつくりました。いや、この程度は朝飯前だからね。夏場の暑い時期はクーラー代が勿体ないから氷作って凌ごうとしたけど、結局部屋の中の湿度が上がって余計に暑くなり、クーラーに頼ったなんてオチは心の中に秘めておくよ。


「こんな氷の塊なんて殴ったら私のステッキが壊れちゃうわよ!」

「そうかなあ? 金門〈強度強化エンチャント〉」


 私はステッキに魔力を流し込む。ある程度固まったのでそのまま振り下ろす。バキンという音がして氷が砕けた。あ、砕けた氷はスタッフが美味しくいただく……訳ないじゃん。ちゃんと海に捨てたよ。


「すごい」

「まあ金門ならこんなものでしょ。とりあえず詠唱破棄は慣れないとダメだからちゃんと詠唱教えるね。ええと、どうだったっけ?」


 エンチャントなんて秒で出来るから先生に教えてもらって以来ほとんど使ってなかったんだよね。思い出せ、思い出せ、私!


 思い……出した!


「じゃあまずはそのステッキを持って、私の後から同じ言葉を使ってね。……金属に眠る強さよ、今、我が前にその本来の強さを取り戻せ。汝は鉄、汝は鋼、堅き金属の姿を示せ! 金門〈強度強化エンチャント〉」

「金門〈強度強化エンチャント〉!」


 詠唱を真似てくれたからかしっかりと強化には成功した様だ。魔力がステッキに流れ込んでいくのが見えた。


「はい、じゃあ殴って」

「は、はい!」


 ステフは思いっきり振りかぶってステッキを叩き付ける。魔力の濃度から言えば普通に大丈夫だと思うんだけど。バキン、と音がして氷が砕けた。まあ砕けた度合いはそうでもなかったんだけど。


「やった、やりました! 出来ました!」

「うん、初めてにしては上出来だね。それじゃあ次は肉体強化かな。これがあれば護身用にはなるよ。まあ私のそばじゃないとダメだけど」

「護身用の意味ないね、それ」


 確かに、と私たちは一斉に吹き出した。

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