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種明(episode191)

話のわかるステフ

「改めまして、ステファニー・キリアンと申します。父は一応ゲオルググループの重役の末席に居ます」

「はあ、どうも。ティア・古森沢です」

「八洲八家の古森沢ですか」

「よくご存知で、まあ私は末端だし、養子ですし」


 まあ流石に異世界から来ました! 戸籍は貰いました! じゃあ説明出来ないもんね。


「古森沢が養子に迎える程の才能、ということですか」


 んん? って思って聞いてみたら古森沢は昔から才能のある子どもを養子にしたりしてたらしいよ。私、身内なのに知らなかった? いや、でもタケルもサクヤちゃんも実子らしいから身近になければ気付かないよね。凪沙? 凪沙に必要なのは養子縁組じゃなくて婚姻届だよ!


「たまたま拾ってもらったのでその恩を返さなきゃってだけです。それで本題は?」

「ああ、すいません。実はパラソルグループに渡りをつけて欲しいんですよ」


 パラソルグループ? どこかで聞いたような……ああっ、メアリーちゃんとデイジーさんか!


「どうして?」

「どうしてあなたがパラソルグループのお嬢さん方と知り合いだと知っているのか、ということですか? こう見えて私どもの家は情報を取り扱っておりますので」


 てことは私が古森沢の人間ってことは既にわかった上で驚いてみせたって事? うわー、なんか怖くなってきた。


「あら、あなたのお友達の右記島でも楓魔を飼っているでしょう? それと似たようなものです」


 楓魔を飼ってる、という言い方には引っかかるが確かに胡蝶さんもこういうの得意そうだ。


「それにあなたにはゲオルググループが以前ご迷惑をかけた様ですので」


 は? 私がゲオルググループに迷惑をかけられた? いや、うーん、そんなゲオルググループとか聞いた事なかったし。


「赤鷺金融。覚えてないかしら? 確か手芸屋さんを襲ったのよね?」


 おばあちゃんの手芸屋!? そ、そういえばあの手芸屋を襲ってきた米連邦のマヌケが居たような気がする。


「確かその時にマシンガンの弾丸を水の壁が受け止めた、とかそういう白昼夢でも見たかのような報告が上がってきていたのよね」


 まずい! 魔法の事がバレてる? い、いや、でもそれはタケルが変な感じで誤魔化してたような……あ、いや、誤魔化した先はおばあちゃんだけだわ。


「最初に聴いた時はどこかで開発されているっていう超能力兵器の一端かと思っていたんだけど、どうもそういうのとは違うみたいだし」

「そ、そうなんですか」

「それでね、さっきあのお部屋であなたがロープを焼き切ったのを見ちゃったのよね」


 はわぁ! 焼き切ったって確信していらっしゃる! ま、まあ、微かに焦げた臭いはしただろうからなあ。


「さて、詳しい話を聞かせて貰えるかしら?」

「あのー、黙秘権は」

「もちろんあるわよ?」


 あるの? こういうのって黙秘権はないんだからねっていうのが普通だと思ってた。


「単なる私の知的好奇心だもの。教えて貰えないなら仕方ないで諦めるわ」

「ええと、見返りは?」

「私個人に出来ることならまあ。と言っても何が出来るのかは自分で考えてみて」


 これ、教えた後から「私には無理ね」って言われたらアウトなんじゃないかな? でもゲオルググループとか言ってたし、諜報機関とかも持ってるみたいだし、それなりには得はあるのかな?


「分かりました。まあ話せる範囲で良ければ」

「本当? ありがとう。あ、そうだわ。一応教えておいてあげる。ドナはまだ諦めてない。男どもを解放してリベンジさせるつもりよ」

「リベンジ? 誰に?」

「あなたよ。決まってるじゃない。まあもっともあなたじゃなくて身内に行く可能性もあるんだけど」


 つまりタナウスさんとイオタさんが危なくなるってこと? まあ個人的にはそこまで親しくないし、しかもイオタさんがボディガードなんだから大丈夫そうな気はするんだけど。


「それっていつ頃?」

「早ければ今日の晩御飯。遅ければ明日ね」

「昼は?」

「当番は私だもの。もっとも協力を持ち掛けられたらその限りでは無いけど」

「断らないの?」

「実家を持ち出されるとね。ドナの家はゲオルググループの中枢、ゲオルギウス家だもの」


 どこの世界にも断れないしがらみというものがあるのだろう。私だって貴族の子女だったんだ。家同士の関係で断れなかったこともある。


「わかった。情報感謝する。ええと、それで私の超能力ちからなんだけど、なんて説明したらいいかな?」

「原理が全く分からないのよ。無から有を生むっていうか」


 無から有を生む、か。魔力がわかんないとどうしてもそういう理解になるよね。まあ、この世界の人間には魔臓がないって話だから生み出される力の意味がわからないんだろう。


「ええと、じゃあ説明すると、いわゆる魔法と呼ばれるものよ」

「あのね、私は八洲のアニメとか特撮とかはよく見てるし、小さい頃はプリティできゅあきゅあなヒロインに憧れたりしたわ」


 まああんな風にビームは撃ったことは無いなあ。やろうと思えば出来そうだけど。熱線魔法とか何の役に立つのかわかんないし。


「仕方ない。これから見せるものは内緒にしてくださいね」

「神に誓うわ」


 私は確実に顔を歪めてしまったのだが、それは八洲の独特な宗教観のせいだということにしておきたい。だって神ってあの神だよ? 神様ポンコツだよ? いやまあ調和神様ならまだわかるけど。


「こほん。ええと、じゃあまずテーブルの上を見てて」


 私は指先から少量の水を出す。それだけで彼女は驚いていたが、まだまだこれからだ。その水を形を変形させて動かす。モデルは小さなネコだ。ネコと和解せよみたいな。


「ふわっ!?」


 水がネコの形を作り出していくと彼女は前のめりになるくらいに食いついてきた。一生懸命に触ろうと手を伸ばしてくる。いや、お触りは禁止ですよ?


 そのままとてとてとテーブルの上を歩かせて、端っこでクルッとターン。そして再び私の元へ。ソロモンよ、私は帰ってきた! 違うか。


「すごい、すごいは、ファンタスティックよ! とうなってるの!」


 ステフは大変お気に召したご様子だ。とりあえず落ち着くのを待って話をしたい。

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