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現場(episode190)

ステフのフルネームはステファニー・ドーラではありません(笑)

 私はすたすたと歩いて床に落ちてある鍵を拾い上げる。そう、この部屋のスペアキーだ。正確にはこの部屋だけじゃなくてこっちの女性部屋全体のスペアキーがじゃらじゃらついてるんだが。


「そ、それはスペアキー!?」

「盗まれたと思ったらこんな所に……」

「私が呼んでたらこんなもの使う必要無いですよね?」


 ドナの顔が歪む。この役立たずどもがとか思ってんのかな?


「もしかしたら、そうよ、私たちの方に夜這いに来ようとしてあなたからスペアキーを受け取ろうとしたのよ!」

「私が? スペアキーを? どうやって?」

「そんなこと私が知るわけないでしょう!」


 もはやヒステリーだよね。まあドナ以外の二人はなんか何にも言わずに黙ってるみたいだけど。


「まあ、たしかに、そういう見方も出来なくはないな」


 船長さんは立場上無闇に乗客を疑えないのだろう。乗客が上客だからというのもあるのだろうが。一応私、妖世川のツレだからこっちも疑えないんだろう。板挟みってやつだ。それを解消してあげるべく私はスマホを取り出す。


「はい、じゃあこの写真はどうですか?」


 写真を見せる。写真の内容は私が縛られてガムテープを口に噛まされて男たちに襲われてる図だ。余程の変態プレイ出ない限りは自ら進んでこんな事はしないだろう。


「あなた、縛られるのが好きなの?」


 そんな訳あるか! まあ船長さんはこれに証拠能力を見出してくれた様で。


「ふむ、たしかにこれは強姦未遂ですな。しかし、ここからどうやって抜け出したのですかな?」

「そうよ! プレイの一環だったから簡単に解けたんでしょう?」


 まあそこは突っ込まれるよね。仕方ないから実演することにしました。


「あー、船員さん。私の手足を縛って口にガムテープ貼ってもらえます? いや、ガムテープあまり好きでは無いんですけど」


 船員さんは戸惑ってはいたが、船長さんが許可を出して私を縛り始めた。あ、この縛り方はあの馬鹿共よりしっかりしてる。というかこれ、本当に解けないな。


「ふう、これでどうですか? 絶対に解けない自信がありますよ!」


 なんて清々しい笑顔。というかなんでこんなに上手いんですかね? いやまあ、海の男はロープワークが仕事の一部だから上手いというのは聞いたことあるんだけど。


 やる事は一つだ。火門〈赤熱身体ヒートボディ〉。私を縛っていたロープが一瞬で蒸発した。そりゃあまあ瞬間的だけど二千度レベルの熱だもん。


 もちろん外に引火しないようになってるよ。まあ元々が貴族子女の誘拐対策用だからね。その後誘拐時に使われるのは魔力封じの手錠になったんだけど。こういうのはいたちごっこだよね。犯罪も取り締まる方も日進月歩だよ。


「ロープが消えた!?」

「馬鹿な、どうやって」

「何よこれ、詐欺じゃない!」


 まあ世の中には理不尽なこともあるものですよ。ボイスレコーダーがあればさっきのやつらの言葉も聞かせられたんだけど。さすがに一台のスマホにそんなに役割を押し付ける訳にもいかないからね。こういう行動予測していたら準備も出来たんだろうけど。


「さて、これで彼女の疑いは晴れた訳ですな。それではこの者たちは私たちの方で取り調べをさせてもらいましょう。連れて行け!」


 若い男たちがぞろぞろと船員に引っ立てられていく。その時だった。ドナが叫んだ。


「待ちなさい!」

「どうしたんですかな、お嬢さん?」

「私たちを誰だと思っているの? 私たちは米連邦に君臨するゲオルググループの重役の子どもよ!」


 あ、親の名前出しやがった。正確には親の名前というか会社の名前なんだけど。どうやらこの中ではドナの親が一番上みたいだ。


「存じ上げておりますよ、ドナ様。ですがそれはそれ、これはこれでございます。私の船で好き勝手していい法はありませんな」

「なんですってぇ!」

「それに、今それを出されたということはこの男たちとあなたはグルということになりますが、どうなのでしょうな?」

「あっ……」


 今更に気付いたというのかドナが顔を青ざめる。他の二人はとっくに我関せずという顔をしていたんだけどね。どうやら偉そうにしているだけでドナのおつむの程度はあまり良くはないらしい。


「覚えてなさい! ステフ、ミシェル、行くわよ!」

「失礼します。おやすみなさい」

「いやー、災難だったね。ウチのツレがゴメンね」


 ステファニーさんとミシェルさんは私に謝罪のようなものをしながら去って行った。ドナはともかくあの二人とはまだ話が出来そうである。


 全て片付いてからタナウスさんとイオタさんがやってきた。


「やあ、災難だったみたいだね」

「今更ですか? イオタさんはボディガードなんだから助けに来てくれても良かったのでは?」

「いやー、ガンマの姉御にティアさんはボディガード必要ないからタナウスさんの方を全力で護れって言われてたんすよ」


 ガンマ! 帰ったら〆る! いや、たしかにガンマから見たら私の戦闘力は五十三万とかそんな感じで見えてるんかもしれんけど私としてはか弱い女の子のつもりなんだけどなあ。……鼻で笑われそうではある。


 その後男たちは船内の船艙せんそうで縛られて転がされてるそうな。食事はドナたちが交代で運んでるらしい。これは船長の温情なんだとか。そりゃあむくつけき男が運んであげるよりも知り合いの女が運んだ方が良いだろうしね。


 まあこれは炙り出しも兼ねている。女たちが男たちとグルなら縛ってるのを解いてやったりするだろう。まあそんな馬鹿な事をやりそうなのはドナだけなんだろうけど。


「ちょっといいですか?」


 翌日の朝食後、ステファニーさんが私のところに話し掛けに来た。ドナは一緒では無いみたい。ミシェルさんは男たちに朝食を運ぶ当番なんだそうな。


「あなたは確かステファニーさん?」

「はい、ステフと呼んでください。お話がしたいのですけど良いですか?」


 穏便にお話が出来そうということで私の部屋に案内する。あ、部屋はちゃんと替えてもらったよ。あの部屋ではもう寝られないもん。

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