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擬態(episode189)

あー、ヤラレチャウ〜(棒読み)

「なんだよ、今の光は!?」

「まさか夜這いがバレてたってのか?」


 夜這いというか集団での強姦未遂だと思うので犯罪だと思うんだが。あー、八洲ではその昔、女性の寝所に三日続けて通って夜明けにお餅食べて帰るってのが結婚のしきたりみたいな貴族の風習があったらしい。まあその当時の貴族女性は外を出歩いたりしなかったそうだけど。


 それはさておき、相手は四人居るからかとても強気だ。一人は床をのたうち回ってるけど。


「いい加減に黙れ!」


 男の一人が転がってる奴を蹴りつけた。あ、お腹に入ったのかそのままうずくまってる。


「相手は一人だ。囲んで抑えつければ何とかなる!」

「ダニエル、オレを一番にやらせてくれよ!」

「ジョエル、お前の女好きはわかるが一番はスティーブだ」

「いや、そこに転がってんじゃねえか! ありゃダメだろ」

「ちっ、肝心な所で役に立たねえ」

「蹴ったのはダニエルだろうが!」


 漫才を繰り広げているのか私を誰から殺るかで揉めてるのか? 誰が最初でも殺ってしまえばそれで終わりと思う……いや、「殺る」じゃなくて「犯る」か!


「とりあえず抑えつけて手足縛っちまおうぜ」


 ご丁寧にガムテープとロープをご持参してくださったみたいだ。そのまま抵抗しないで縛られるがままにしておく。


「悪く思うなよ。ドナがお前に恥をかかせてやれってよ」


 ドナ! やっぱりあの女が黒幕だったか。いやまああれだけあからさまだったらそれは馬鹿でもわかるよね。


「言いたいことはお終い?」


 そう言ったつもりだったが、口から出てきたのは「ひひはいほほはほひはひ」みたいな意味のわからない言葉だった。ガムテープ喋りにくい。


「何言ってんのかわかんねえよ。まあ悲鳴あげても助けに来るまで時間がかかるだろうけどよ」

「おい、スティーブ! 早く起きやがれ!」

「イテテ、ひでぇよダニエル。やっと目が慣れてきた。このアマ!」


 スティーブは事もあろうに私に蹴りを入れてきた。いや、水魔法で衝撃は和らげたけど。


「さて、それじゃあ味見させてもらおうか」


 そう言うと奴は私の服を引き裂いた。あー、これ、割と高かったんだけどなあ。


「おほぉ! おっぱいが零れ落ちて来たぜ」

「こりゃあすげぇや。早く代わってくれよ」

「ばか、まだ触れてもねえんだからよ!」


 そろそろいいかな。じゃあシャッタードン! カシャカシャカシャと音がして連続でシャッターが切られる。もちろんフラッシュも炊いている。


「なんだ!?」

「カメラだと!」


 フラッシュの光からカメラの位置を割り出したのは残りの一人だ。棚に置いてあった撮影モードのスマホを手に取ろうとする。だが、そんなこと出来るわけがない。


「なんだ? 見えない壁が」


 当然ながらガードは完璧。そろそろ良いかな。火門〈赤熱身体ヒートボディ〉あっという間にロープとガムテープが燃えおちた。服は燃えないのかって? そこはそれ、ちゃんと場所を制御したんだよ。


「さて、反撃のターンだね。あなたたちの強姦未遂の写真があるけど抵抗する?」

「そんなもん、お前を倒して犯して口封じしちまえばいいんだよ!」

「そうだな。ここは太平洋上だし。証拠も海にドボンだ」

「死体はちゃんと焼いてやるぜ。キャンプファイヤーでな!」


 どうやら人としての一線を越えるつもりらしい。いや、私のいた世界はそういうの日常茶飯事だったから別に怖くもなんともないんだけど。


 昔の人は言いました。殺していいのは殺される覚悟のあるやつだけだ、と。違ったかな?


「死ねぇ!」


 いや、最初から殺す気で来るんかい。もしかして死体愛好家ネクロフィリアってやつ?


 というかどっかの企業のお坊ちゃん程度のやつにやられるほど……おっと! 割と腰が入ってんな。もしかして今までもこんなことやってたんかな? まあやってなけりゃ多分四人全員来るとかはなかったよね。


「くそ、この!」


 とは言っても私どころかどこかのボディガードたちとか薔薇連隊ローズレジメントの人達とか果ては楓魔忍軍ほどの強さもない。


 すれ違いざまに腹に蹴りを入れて、残った奴らは顎に掌底を当てて脳を震盪させる。三人目の人はさすがに避けたので、そのまま首に腕を巻き付かせて絞め落とす。魔法使わなくてもこれくらいなら制圧出来るよ。


 ……嘘です。こっそり金門の強化反射神経とか使いました。まあ脳に影響が来ない程度に。脳汁も血流もバンバン出るからね、あれ。


 ドアの向こうから「ヤバくない?」「逃げなきゃ」なんて声が聞こえてくる。様子を見に来たんだろう。もうショーが始まってると思ったら違うものが始まってたらそりゃあびっくりするよね。


 私はそのまま船内を歩いて船長室のドアをノックした。


「おや、こんな夜分にどうしました?」

「船室の方で襲われました。抵抗したので私は平気ですが現場の確認をお願いします」

「むむ? 分かりました。すぐに一緒に行きましょう」


 船長さんはそのまま私の部屋に一緒に行ってくれた。その途中でスペアキーを取りに行かせたら、スペアキーが盗まれてることに気づいたんだと。いや、もっと早く気付こうよ。


 私の部屋の前ではさっき逃げたはずの女たちがドアの前で騒いでいる。何やってんだ? あ、もしかして男たちを助け出そうとした?


「何をしているのです?」

「大変よ! 男たちが倒れてるの!」

「そこはこちらのお嬢さんの部屋では?」

「この女が連れ込んだんじゃないの? 知らないわよ!」


 どうやら私が彼らを自ら招いたということにしたいみたいだ。私はどれだけビッチなんだよ!


「違います。私が寝ていたら彼らがスペアキーを使って入って来たんです」

「そんな訳ない! 証拠でもあるっていうの!?」

「ええ、ありますよ?」


 私が証拠があるって言うとポカーンとした顔で見られた。いや、証拠なくて騒いでるとでも思ったの? 私はそんなにバカじゃないよ? 私は入口の封鎖を解いて部屋の中に入った。船長が後に続く。何故かドナたちも入って来た。

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