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第十九話 雑務

いつかはあなたのいる街に行くかもしれません。

 私はギルドで目が覚めた。あれから色々なことがあった。公爵様が陣頭指揮を取って不正を働いていたり、人身売買に関与していたりした貴族たちを軒並み捕縛していった。


 ちなみに人身売買のトップは第四王子だったらしい。王宮内の勢力関係とか次期王太子の選定とかそういうごちゃごちゃがあったらしいけど私には関係ないから知らない。


 地下から助け出したユーク君とそのお姉さんのユーリさんは公爵と同じ陣営の貴族の子どもだったらしい。人質みたいな扱いだったそうな。ユーク君はリーダーシップとかやってたみたいだから将来有望かなあ。


「おい、その、ありがとな」

「どういたしまして」

「助かったのはオマエのお陰だ。貴族たるもの恩は忘れない。ちゃんと返してやるから待ってろ」

「ええー、いいよ、そんなの。たまたま助けただけだし」

「助けられたのには変わりない」


 とか何とかすったもんだがあったけど、機会があれば遊びに行くのでもてなしてって事で話がついた。ユーリさんは良かったわねって笑ってたけど。


 ビリーとリリィはスラムに戻る……かと思ったらそのまま冒険者ギルドで働くらしい。というのもラルフをはじめとして冒険者ギルド内にも裏切り者というか工作員がいる事が判明して、粛清の嵐が吹き荒れたのだ。と言っても単なる解雇とか罰金とかそんなレベルだけど血風は吹かなかったよ。


 エレノアさんもベルちゃんさんも忙しそうにしていた。攫われて来た子どもたちの身元確認と親への引き渡し。大体の子は裕福な商人とかの子どもらしく戻ってきた子どもと涙の再会をしていたりしてた。


 問題は身寄りのない、スラムから攫われた子たちである。このままスラムに住み続けさせるのはなんか違うし、かと言ってすくい上げる施設も資金もない。


 困りきった冒険者ギルドはエレノアさんに全てを投げた。うん、まさに放り投げたというのがピッタリだったよ。エレノアさんはベルちゃんさんを引っ張り出して、各方面に捩じ込みに行ったわけだ。


 今回助けられた大店おおだなや貴族の下働きとして、それでも捩じ込めなかった子達は冒険者ギルドの見習として雇用するという道筋で。これによりベルちゃんさんは一気に忙しくなったみたい。教育係って大変だよね。


 私はコネもないから街中の溜まった依頼を引き受けてる。今まで受けてくれる人がいなかったんです、何卒手伝ってください!ってベルちゃんさんに言われちゃったらね。


 街中での溜まった依頼は引っ越しの手伝いだとか溝掃除、草むしり、ペットの散歩、猫探しなんかだった。あ、手紙を届けるってのもあったな。


 引っ越しの手伝いはそこまで難しくない。重い家具とかを私が率先して転移テレポートしたり、細かい位置調整で念動サイコキネシスしたりするだけだもの。お陰で念動の細かい力調整が出来るようになったよ。


 溝掃除は障壁バリアで汚水やヘドロを一気に押し流して、固めて火をつけた。あ、私の発火パイロキネシスじゃあ直には燃やせなかったので、発火→紙束→枯れ木みたいにやって炙りました。臭いすごかった。


 草むしりは特に超能力使うことも無く地道にやってた。だってこういうのなんか楽しいんだもん。私の性に合ってるのかな。なんか成果が目に見えてるのって楽しいよね。研究所のテストは画面にはなんか結果映ってたらしいけど、私からは見えないし。


 ペットの散歩。テレビで見てから憧れてたんだけど、連れて歩くのは犬ではなくてデカいトカゲ。ワニとかじゃないけど、なんか怖い。すれ違う犬が吠えてくるのは仕方ないと思う。でもこの子はそれに反応して食べようとするのよ、その子。それを止めるのが一番大変だったなあ。


 猫探し。これは迷子になった猫を探して捕まえるんだけど、これがまた大変。猫って色んな隙間通って立体的な逃走路を築くからね。生体反応とか追尾できる能力とかあったら良かったんだけど当然そういうのもないし、割とどうしようかと思ってたんだよね。


 で、結局どうしたかっていうと街中を彷徨って探しました。こういうの、地道な作業が大切なんだけど、さすがに肉体的に疲れたよ。三日探して私じゃダメだったからビリーとリリィに応援頼んだら五分で見つけてきた。私の三日間はなんだったんだろう。リリィちゃんが動物に懐かれやすいらしい。なるほど?


 手紙を届ける。これは王都からこのエッジの街まで来ている衛兵さんたちのものだった。あ、不正を働いていた衛兵は斬首されました。これは当然の事みたい。街を守るべき衛兵が街の人たちに危害を加えていたのだから。


 で、善良な衛兵さんたちが足りなくなって王都から応援が来たらしい。急いでいたらしくて家族に説明出来なかった人がいたのだとか。


 私はたまたまそういう話を聞いて、私の裸を咎めてくれた門番の衛兵さんに「王都なら行ったことありますから手紙ぐらいなら届けますよ?」って口を滑らしちゃったんだ。そしたら衛兵たちからたくさん手紙を預かってきた。全部王都の冒険者ギルドに持って行けば良いというので、カバンに一切れのパンとナイフ、ランプを詰め込ん……嘘です。手紙をいっぱい詰め込んで王都へ連続転移したよ。


 あ、そういえば公爵様も送っていった方がいいかと思ってついでに聞いてみたんだけど、代官屋敷でやらなきゃいけない仕事が沢山あるとかで代わりに手紙を預かりました。


「報酬は多めに出すから時々こういう仕事もしてくれんか?」


 公爵様に言われたのでまあ報酬次第で受けようとは思います。王都まで行くのもそこまで苦にはならないだろうし。


 という訳でエッジの街を出発して王都へ。転移の距離が心做しか増えてるみたいで半日くらいで王都に着いた。門から入らないと手続き上色々問題があるということで、門をくぐって王都に入る。相変わらず人がたくさんで目眩がしちゃう。


 私のいた研究所は山の中だったからね。まあそれ以前に研究者と警備員、後は同じ実験体しかいなかったんだけど。ともかく冒険者ギルドを目指そう。前の時は公爵様の御屋敷に直行だったからなあ。

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