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第百八十三話 脱衣

もう、何から脱いでも良いでしょ?

なかなかやりますね。でも麻雀ってのは運だけじゃ勝てないんだよっ

 やはり、ヒルダ様の審美眼にはこの服たちは不足しているようだ。まあデザイン的にもそこまで見るものもないし。


「まあそれでもないよりかはマシなんですけど、で、どれにしますの?」


 あの、なんでヒルダ様は私にどれにするか聞いてきたんですか? ヤッピのドレスなんだから本人に聞かないとダメなのでは?


「何を言ってるのですか。ヤッピ領主は藍色のドレスを作るのでしょう? ならばここにあるドレスから選ぶわけないでしょう」

「えっ? じゃ、じゃあ、誰のドレスなんですか?」

「それはもちろん、キュー、あなたに決まってますわ」


 嵌められた! わ、わ、私もパーティに出るの? ドレスを着て? いやいや、待って待って待って! 私、冒険者。元の世界では暗殺とか潜入工作とかやってた工作員! ドレスを着るような身分じゃないよ!


「あなたがいないとヤッピさんが生命を狙われたらどうするの?」

「えっ!?」


 ヒルダ様の口からとんでもない言葉が発せられた。ヤッピの生命? ちょっと待って? どういう事?


「新しく領主に就任したとはいえ、前の領主の元で甘い汁を吸っていた奴らはまだ残ってるでしょ? 掃除はだいぶ出来たみたいだけど」


 それはまあ、スターリングさんが頑張ってたからね。


「これからこのマリナーズフォートが改革していくのは間違いないんだし、それをされるとまずいと思ってる人間は依然としている訳よね」


 そりゃあそうだ。マリナーズフォートを改革して人身売買が起こらないようにするのがヤッピの使命であり、目標なのだ。


「じゃあそいつらが人身売買を続けるためにはどうすればいいと思う?」

「ええと、領主に諦めさせる?」

「そうね。賄賂を送ったり、蜂蜜罠ハニートラップを仕掛けたりして、弱みを握って脅したり、いっその事殺してしまって首をすげ替えたりするわね」


 ヒルダ様の発想が怖い。あー、まあ、ヒルダ様も権謀術数の中で暮らしてこられた人だもんね。他国と渡り合う為にもそういう知識は豊富に持っているのだろう。


「まず賄賂だけど、ヤッピの家が商家だからこれは取られないわね」

「そうなの?」

「だって、賄賂を渡すというのは一度じゃなくて継続的に取り入って重用されるってのが前提だもの。でもヤッピにはそんな事しなくても実家があるから」


 あー、つまり、利権に食い込めないって話なのね。まあヤッピならお父さんのリッピさんの伝手があるもんなあ。そのつながりでペペルさんも居るし。


「次に弱みを握る。これはより一層無理ね。ハニートラップだってヤッピさんは女だもの。あなた、女が好きとかそういう趣味はないわよね?」

「あ、はい、ありません。その、こう見えて頼りになる男性が好きっていうか」


 なんかヤッピがモジモジし始めたぞ? もしかしてこの反応、好きな男が居るんやな? 誰よ誰よ、お姉さんに言ってみ?


「いや、そんな、その、身分違いですし、その、お仕事も頑張ってくださってますから。邪魔はしたくないなって」


 仕事頑張ってて身分違い? ヤッピって貴族になったよね? なのに身分違いってどういう事? 自分が貴族になっちゃったから下町の少年とかは身分違いになっちゃったとか? いや、ぶっちゃけヤッピーは自分が貴族になったって感じじゃないよね。となると相手が貴族? この街で貴族って……まさか!


「ヤッピ、ヤッピ」

「何よ?」

「やっぱり助けられた時に?」

「キュー!? なっ、なっ、なっ、なんで、バレて……」


 私は耳打ちしてあげたのに大声でバラしちゃったのはヤッピだよ? いやまああの人は真面目が取り柄だし良いのでは? まあ保護者の反対は火を見るより明らかなんだけど。


「話を続けるわよ。ヤッピさんは保身とか考えてないから弱みも握れないし、就任して間もなくだから失態も無いのよね」

「まあこれからだもんね」


 ヒルダ様は静かに目を閉じてはあ、と息を吐き出して言った。


「なら残りは暗殺しかないわね」

「暗殺、私、殺されちゃうんですか?」

「まあそれが手っ取り早いでしょうね。新しい領主に誰がなるのかは分からないけどヤッピほどには潔白じゃないと思うし」


 身も蓋もないけど、ヤッピはこの街が好きだし、この街で暮らしてる子どもたちの味方だ。もちろん他の国から来た人も尊重している。清濁併せ呑むってほどでは無いから悪いものは許せないだろう。


「なるほど。その一番のアレが今回のパーティなのね」

「そうよ。王都からも人が来るという話だし、狙われるのは間違いないわね」

「それ、どうやって防ぐんですか?」

「だから言ってるじゃないの。あなたが、ドレスを着て、一緒に居るのよ」


 あー、それで私のドレスに繋がるのかあ。…………無理! 無理無理無理無理! 私にゃドレスなんて似合わないってば!


「キューは私の事護ってくれないの?」

「いや、そういう訳じゃ」

「私たち友達だよね」

「うん。まあヤッピは友達だね」

「私の就任の時も色々手伝ってくれたよね」


 まあ、私がやらかしたからヤッピが領主になったとも言えなくもない。手伝ってくれたというか押し付けたよね?みたいに言われてる気がする。


「私、キューのドレス姿観たいなー」

「却下! せめてそれなら護衛の服装に」 「あら、あからさまに護衛の服装してたらボディガードってバレるでしょ? そしたら残党を釣れないじゃないの?」


 ヒルダ様? もしかしてヤッピを撒き餌にして釣るつもりなんですか? 私もついでに撒かれるの?


「まあまあ、先ずは試着からしてみましょう。ね?」

「うふふ、キューさん、肌綺麗ですからきっと似合いますよ?」

「ホントよね。あー、私、子どもの頃着せ替え人形とか欲しかったんだよね」


 この世界にも着せ替え人形とかあるの? ちょっと驚きなんだが。いや、待って? それはともかくとしてここは逃げるしか。転移……するには巻き込んじゃう。あ、やめて、脱がさないで、お嫁に行けなくなっちゃう! 行くつもりないだろうって? それはそれ!

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