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霊薬(episode183)

強いぞー、赤いぞー、レッドドラゴン〜(レッドドラゴンとは言ってない)

 法国ガリア八洲大使の妖世川ロンド。年齢は五十を少し過ぎたくらい。若年の頃より欧州各地の大使館に赴任していて、八洲に帰ってくることの方が少なかった人物だ。この度、法国にて不幸にも爆弾テロが発生し、それに巻き込まれる形で負傷した。幸いにして一命は取り留めたものの、欠損が酷く大使の任を全う出来ないという事で帰国が許された。


 患者のステータスん説明するとこんな感じ。もちろんステータスボードとかそういうのがある訳じゃない。鑑定能力もそんな出方はしない。これらはみんなカルテに書いてある事である。


 ちなみに症状としては右腕損壊、左脚損壊、右脚膝下喪失、左掌消失、肋骨破損、頭蓋骨骨折、右眼球損傷……本当に良く生きてたなって感じである。


「今は麻酔で眠らせていますが起きると痛みでもがきます。ですが鎮痛剤を使いすぎる訳にもいかずに」

「麻酔の使い過ぎも良くないんじゃ?」

「そこは薬を使わない麻酔などもあるので」


 そういうのもあるのか! 人間の体は不思議だなあ。まあ案内されて本人を見てみよう。


 霊安室の様な場所に寝かされてカプセルの中で培養液みたいなのに浮かんでるのが恐らくは患者なのだろう。周りの液体は再生を促すための液なんだとか。これはここの薬剤スタッフが研究中の代物らしい。少なくとも悪化はしてないからそれなりには効いているのだろう。


 ちょうど液体に浸かっているので私はそのまま水門の魔法で体内を走査した。一通り見てみたが内臓などは傷付いてないらしい。奇跡かな? いや、これはこの液体の効能なのかもしれない。


「とりあえず欠損を治さないといけないんですね」

「そうです。猶予は一週間でどうでしょう?」

「出来ればもう少し欲しいですね。十日ぐらいかなあ」

「分かりました。では十日後に」


 私と外科の下っ端なのかそれなりの地位の人なのか案内してくれた人との会話である。まあ期限の延長を受け入れてくれたのでそれなりの地位の人なのかもしれない。


 外に出るとクロエ嬢がいた。ついでに言えばボディガード三人衆もいた。


「まあ、ティア様、それに胡蝶様も」

「どうもクロエ様。どうしてここに」

「ええ、こちらにロンド大使が入院されていると聞いたのでお見舞いに。というかティア様はどうして?」

「その大使殿の治療をする事になりまして」

「まあ、それは、ええと、本当にこの度は我が国の問題で皆様にご迷惑をお掛けしまして」


 クロエ嬢が申し訳なさそうに頭を下げてくる。慌てて顔をあげさせる。


「いやいや、悪いのはテロを起こした人間であってクロエさんじゃないでしょ」

「そうです。クロエ様が気に病まれることでは無いのです」

「ありがとうございます。掛かる費用はプランシャール家がもちますのでうちに回してください」


 どうやら妖世川からの払いとかは気にしなくても良さそうだ。他にも見舞いに来たのはアーリャさん。


「この度はロンド様の治療をしていただけるという事で」

「お知り合いですか?」

「はい、欧州方面に行く妖世川の者は一度はお世話になっています。とても優秀な方でしたから。私も何度か手を差し伸べてもらいました」


 まあ、年齢差もあるから恋愛感情とかは無いけど恩はあるみたいだし。そういや妖世川ってんならもう一人居たよね。


「アンヌでしたら今仕事で法国に行ってますよ。ロンド大使の代わりですって」


 あー、見舞いに来ない薄情者ではなくて仕事の穴埋めをしてフォローしてんのか。しかしまあ爆弾テロがあった様な国に良く行けるよなあ。貧乏くじでも引いたか?


「十条寺の者を護衛に付けると言っておりましたので恐らくは心配はいらないかと」


 まあ十条寺の誰が行ってるかにもよるけど、ガンマさんなら問題無いだろうね。ついでにテロの鎮圧までやっちゃいそう。


 さて、それでは私もやるべき事がある。先ずは回復魔法を掛ける事だ。だが、手足の欠損となると上級回復魔法だろう。この間女神様ポンコツに止められたよなあ。


 とりあえず中級の回復魔法でも大丈夫かどうか試してみる。培養液に手を翳して、培養液を媒介にして回復魔法を叩き込む。おおっ、この培養液、回復魔法の通りがいいぞ? まあ威力にブーストが掛かるってほどでも無いんだけど。


 しばらく回復魔法注いでみたけど見た目には変化なし。少しは生命力戻ってる気はするけど。


「どう、治せそう?」

「うーん、これ、やっぱり再生薬作らなきゃですね。ちょっと家に帰ってきます」

「この病院に私のラボもあるけど?」

「あー、ちょっと魔法的な事なので帰った方がいいかなって」

「教えてくれたら特別に部屋を作るけど?」


 なんか胡蝶さん、グイグイ来るんだけど!? あれ? こんなにグイグイ来る人だっけ? もっと物静かな方かと思ってたんだけど。これが右記島の血というやつなんだろうか。


 とりあえず胡蝶さんから逃げて来て自宅に戻ると未涼さんにポーションの生産を頼まれた。なんでも消化促進ポーションは至急欲しいんだそうな。あー、はいはい。作っときます。


 手慰みに消化促進ポーションを幾つか作った後に自室の床に魔法陣を描く。これは回復魔法の威力を高めるための魔法陣だ。参考までにと教えてもらったのだ。


 もちろん当時はこれが錬金術に役立つとは思ってなかったし、今でも効果が出るのかは分からない。でも再生ポーション作るならやれる事はやるべきだろう。


 再生ポーションの材料を鑑定する。頭の中に錬金術の公式が浮かび、アンブロジアの他にも必要な材料が浮かんでくる。


 色々あるけどだいたいはその辺で揃えられそうだ。なんか材料だけ見ると料理作ってるみたいなんだよね。


 この世界では手に入りにくいのは二つ。一つは魔力を大量に含んだ水だ。まあこれは私が水魔法で出せばはい終了なので特に問題は無い。


 問題は「龍の血」である。龍というのはドラゴンなんだろう。いや、レッサードラゴンぐらいならゴールド級の冒険者なら倒せそうな気はする。これがエルダーとかエンシェントとかならまあ勝ち目は無いだろう。だが、こっちの世界にドラゴンって居るの?

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