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友姉(episode178)

バックアップ(ふぁいるのっとふぁうんど)

 ユグドラシルの本部は自宅の洋館に置かれてるんだけど、しばらくはうちじゃなくて四季咲と鷹月歌のビルを拠点にすることになった。なんでかって? それは私の洋館の交通の便が悪いからだよ!


 いや、売ってるものが売ってるものだから交通の便は少しぐらい悪くても足を運ぶ人がいると思うんだけど、大勢に押し掛けられると私の気が休まらないからね。


 なお、販売に当たっては四季咲と鷹月歌の募集したスタッフが活躍してくれてる。こういう時に店舗を回せる人が居るのはいいね。ちなみにバイトも募集しています。若い力を求めてるよ! 時給は奮発して二千円だ。


 商品のラインナップとしては毛生えポーションと消化促進ポーションなんだけど、段階的に効力が低めのやつから並べてある。原液を薄めまくってるだけなんだけど。そりゃあまあ、普通に作ったら一発で解決しちゃうようなポーションだもんね。こういうのは継続的に勝ってもらわないと。


 もちろんそれなりに価格もお手頃だ。一番安いので千円台だからね。あ、もちろん試供品も幾つか取り揃えております。


 とりあえず売り場の視察に来たんだけど、それなりには混雑している。瓶とかのデザインはタケルの知り合いのイラストレーターさんにお願いした。なんか萌え絵とかそういうのが得意な人なんだって。タケルの人脈もすごいよね。


 ちなみに私一人が作ると手間がかかるので、私が作るのは原液のみだ。それを極限まで薄めて薬効を失わないようにしながら瓶に充填していく。瓶に充填する装置とか莫大な金が必要だったんだけど、そこは四季咲と鷹月歌が先を競って出してくれた。


 なお、四季咲には毛生えポーション、鷹月歌には消化促進ポーションのそれぞれ原液をサンプルとして渡すことになっていたので渡してあげた。まあ成分分析してどんな結果が出るのかは分からない。私だって自分の魔力を分析した事ないんだもん。


 未涼さんはCFOとして飛び回ってる。銀行との折衝や外国人投資家との面談など色々詰め込まれている。いつの間にやらアンネマリーが働かせろと押しかけてきてたので通訳として未涼さんに付けた。ついでにガンマも誘ったらホイホイついてきたのでこっちも未涼さんのボディガードに。今未涼さんに倒れられたら困るからね。


 右記島がこっちに興味を示していたので胡蝶さんにもサンプルを渡してあげた。渡した時には宝物を扱う様にしていたのでやっぱり胡蝶さんも右記島の人間なんだなって思ったよ。こちらも分析をしてるみたいだけど、どういう結果が出るのかは分からない。


 広報は特にしていない。とりあえず口コミって事でそれなりの人物には話してるけど、それでもかなりの客は入っている。店舗の従業員指導には保乃さんが頑張ってくれてる。なんだかんだで人当たりいいからね、あの子。


 私はといえばアンブロジアの栽培をやっている。土に植えなくても蓮みたいに水に浮かべてたら育つので巨大な水槽に私の魔力水を混ぜて満たして、その上にアンブロジアを置くようにした。株分けもしたよ。上手くいってて良かった。


 このアンブロジアの生育が一番の秘密かもしれない。下手したら不老不死薬ですら簡単に作れてしまうからね。内緒の内緒。私だって作る気ないしね。


 とりあえず今作ってるのは再生薬。まずは指の欠損かな。とりあえず生えてくるかどうかを実験しないといけない。指詰めた人とか紹介してもらおうかな?


 まあ、まだ錬金術のレベルが足りないのか材料が足りないのか分からないが再生薬は形になってすらいない。そのうちそのうち。まあ病気ぐらいは治せるようにしとかないとね。風邪とか肺炎とか破傷風とか黒死病とか恐水病とか。


「ティアいる?」


 そんな中で私を訪ねて来たのはジョキャニーヤさん。しかもメアリー嬢も一緒だ。まあボディガードだから当たり前なんだろうけど。


「随分と珍しいね。まあ上がってよ」

「わーい、ありがとう。私、百花堂のショートケーキね!」


 なんでジョキャニーヤさんは私がさっき買ってきてもらったケーキの名前を知ってるのだろうか。


「突然お邪魔して申し訳ありません。ちょっとご相談がありまして」


 ショートケーキを頬張ってるジョキャニーヤさんに比べて若干浮かない顔のメアリー嬢。なんか思い詰めて居るような感じである。


「実はデイジー姉様の事なんですが」

「誰?」


 正直初めて聞いた名前である。いや、過去に聞いたことがあるのかもしれない気がそこはかとなく感じられるんだけど、大して覚えていないということはそこまで重要な名前ではなかったはずだ。しかし、今メアリー嬢の口からは「姉様」というセリフが出ている。となれば鷹月歌の関係者かそれとも社交界で知り合ったお嬢様なのか?


「あの、実の姉なのですが」


 …………ああ! 裕也さんと結婚する予定で来たもののメアリー嬢に横から掻っ攫われて拗ねて私は恋に生きるわって言いながらハリウッドで何回か結婚と離婚を繰り返してるっていう例のお姉ちゃん?


「その、間違っては無いんですがもう少しこうなんというか、手心をというか……」


 正しい返しは「痛くなければ覚えませぬ」とかそんなのかもしれないが、今はそういう話でもない。


「それで、そのお姉さんのデイジーさんだっけ? その人がなんかあったの?」

「はい、その。なんというか。子どもが生まれるらしいのです」


 おお。それはおめでたい。


「それがその、大変危ない様子で。母子のどちらかを諦めなくてはならないと」


 ええっ!? 母子のどちらかをあきらめる。それは前の世界でもそこまで珍しいことでもなかった。まあ私らの世界では死産だろうが産んだ後に蘇生すれば何とかなってたって例もあるんだけど。そういうのは高位の術師しか出来ないからなあ。私ももちろんできない。


「それでメアリーはとうして欲しいの?」

「私と一緒にお姉様に会って何か解決策がないかを探って欲しいのです」


 ううーん。医療行為は専門外だけどパラソルグループの令嬢ってことはそれなりの医療スタッフがバックアップについてるんだよね? まあそれなら大丈夫かな。

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