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第百七十七話 出立

ヒルダとテオドールがはなればなれに!

 テオドールと私が国内周遊に行くらしい。らしい、というのは最初はテオドールとヒルダ様が二人でらぶらぶちゅっちゅしながら新婚旅行やるって話だと思ったんだけど、どうやらリストにあった奴隷たちが王都に続々と運び込まれて来るらしい。ヒルダ様はそれの受け入れと照合、そして帰るまでの衣食住の世話をしなくちゃいけないんだって。


「納得いきません! それならなぜ、キューはテオの傍に居られるんですか!?」

「私が居たいって言った訳でじゃ無いんだけど」

「じゃあ変わってください。私がテオと一緒に行きます!」


 ちなみに私がテオドールと一緒に行くのには理由がある。私が一緒なら転移テレポートで割と簡単に王都と出先で行き来出来るからだ。テオドールの安全を考えた苦肉の策だ。いや、私は転移の手間だから一人で行きたかったんだけど、王様が国内視察の権限を与えたのがテオドールだったから仕方ない。


「すまんな、ヒルダ。我慢してくれるか?」

「もちろんです、テオ。でも寂しいですからこまめに帰ってきてください」

「もちろんだ。我が王国民たちの受け入れを頼む」

「お任せ下さい!」


 ヒルダのやる気も出たところで私らは準備を始める。まあ確かに一晩ごとに戻ってくればいいんだが、それなりに航続距離ってもんがあるからね。えっ、本当は簡単なんだろうって? あー、まあその辺はテオドールには内緒って事で。じゃないと三度の食事も家で摂るとか言い出しかねない。


「王城より客が来ております」

「通してくれ」


 王城よりの客。それは第二王子のエルリックだった。


「いやこれはテオドール殿。先だっては我が兄が失礼をした」

「いや、気にしていない。それよりもなんの用事かな?」

「ふむ、我らと手を組む気は無いか?」

「手を組む?」

「その通り。わざわざこの国に来たのはパフォーマンスの為だろう? ならば一人や二人くらいは取りこぼしても文句は言われまい?」

「……何が言いたいのだろうか?」

「追及して欲しくない奴隷も何人か居るという事だよ。大人になろうと言っているんだ。妥協点を見つけるのが大人というものだよ」


 あー、まあ貴族派のエルリックとしてはそういう考えになるのかもね。国民を貴族が助けるなんて以ての外。自分の出世に利用するだけのこと。そんな事を思ってるのかもしれない。


 テオドールは確かになんか怪しい宝石に操られていた時は民を蔑ろにしていたが、本性が善性だったんだろうか、呪いが解けてからは民に対してかなり優しくなった。ヒルダ様が自慢げに話していたからなあ。


 そんなテオドールが民を虐げる相談を受けたとしたら、自分の利益のために国民を売り飛ばせと言われたとしたらどうなるだろうか。


「エルリック殿、一つ聞いておきたいのだが」

「何ですかな? 利益の分配率についてですかな? 私は四分ほどで構いませんよ。六分はテオドール殿が取っていただいて」

「どちらが好みか、を伺いたくて」

「どちら、とは? 二択ですか? 男か女かという事でしたらやはり女が」


 テオドールは腰に帯びていた剣を抜いてエルリックの首筋に突きつけていた。


「刎ねた首をそのまま柱に吊るすのと、中身を抉りとって髑髏されこうべ盃にするのとどちらが好みかと聞いている!」


 エルリックはそれで初めて首筋に剣を突きつけられている。いや、もっといえばその気になっていたら自分の首が胴体とさよならバイバイしていたということが理解出来たのか腰を抜かしてその場にへたり込んだ。


「ふん。殺す価値もない。見なかったことにしてやるからとっとと行け」

「は、わ、わ、わ、わ、わ」


 腰が抜けているのか立ち上がれずに這うようにして部屋から出て行った。粗相をしてないだけマシなのかもしれない。


「全く。しかしこれでこの城は危ない場所になってしまったか」

「大丈夫です。私とて公爵家の妻。黙ってやられたりしませんもの!」

「いや。それは信頼してるのだが……ううむ」


 とは言ってもテオドールの出発を遅らせる事など出来ようはずもない。というか逆に言えばエルリックが逆恨みをするならテオドールを狙ってくるだろうということは分かる。なのでヒルダ様とテオドールが離れていた方がいいかもしれないとは言ってみる。


「ふむ、それもそうかもしれんな。わかった。ではヒルダにはマリナーズフォートの街に居てもらうというのはどうだ? 国民は少し遅れてもいいからそちらに送って貰うということで」


 テオドールがエルリックの話をして、マリナーズフォートの街に移動させることを言うと国王陛下がまた頭と今度はお腹も抱えていた。毛根だけじゃなくて胃薬も必要なのかな? 回復ポーションあるよ?


 ヒルダ様をマリナーズフォートの街に転移で連れて行って、帰って来てからテオドールと一緒に出発することに。なんか王城から帯同者が一緒に来るらしいんだけど。


「どうも初めまして。サレファと言います」


 来たのは女性のメイドさんだ。いや、今から旅に出るんだけどなんでメイドさん?


「一応武芸は身につけておりますし、魔法の腕もそこそこあります。武装メイドの中ではそれなりに強いですよ」


 なんだよ、武装メイドって! ああ、いや、国内を見て回るのに監視の目がつくのは仕方ないと思ったんだけど、もっとこう糸目の男とかそういうのが来るかなって思ってたんだよなあ。なお、おっぱいはそこそこ大きい。だからテオドールの趣味ではないと思う。


「なんか凄く不遜なことを考えているようだが、胸の大きさよりも大事なのは人間性だからな」

「まさかあのテオドールに人間性を解かれるとは思わなかったよ」

「貴様、いつもいつも一言多いのだ!」


 みたいな漫才を繰り広げながら旅路についた。なお、サレファさんには私の転移は魔法ということにしてもらって実演もした。まあそんなに頻繁には使わないよ。王都から私が来たことの無い道だし、何より途中の村とかに居る可能性もあるからしらみ潰しに探さないといけないからね。ふぁいと、おー!

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