蹴始(episode176)
出て来た人が色々揃ってて千客万来です。
せっかくだからポーションをいくつか作っていくことにした。まずは回復ポーション。モンスターに襲われた時に使ってください。流石に片腕切断とかは無理だけど、出血とかぐらいの傷なら塞げます。
次に麻痺解除のポーション。植物モンスターには麻痺を誘発するものが多いのでそういう自然系のダンジョンに行く時には必須です。事前に飲んでおくことである程度の耐性を得ることが出来るので事前に飲む分と万一の時用に二つは用意しておきましょう。
あと、毒耐性のポーション。お偉いさんになると毒を盛られることもよくある事です。しかし、このポーションさえあればある程度の毒は中和してくれます。もちろん毒を持つ蜘蛛系や蛇系の魔物対策にもなります。
最後に魔力回復のポーション。魔法は本来魔力を消費するもの。ええ、消費するはずなんです。何故か私はぽんぽん使えてますが。この世界ではそんなものなのか、それとも私がおかしいのかは分かりませんが。ともかく、長丁場の冒険をしていると魔力が枯渇することはあるものです。これはその魔力の自然回復スピードを早めるお薬。通常一晩寝ないと回復しない魔力を活動しながら回復させることが出来ます。えっ、馬小屋? そんなところで寝るんですか?
とまあ四つ程ポーション作ってから気付きました。これ、使い途なくない? いや、確かに回復ポーションは便利だけど、この世界、病院でしか使いようがないし、何より急に治ったら危なすぎる。
というか麻痺とか毒とか私らの世界ではポピュラーだったけど、こっちでは特殊なシチュエーションだよ。あと、魔力? これ、私しか魔法使えないのに魔力回復してどうすんだよ!
はぁはぁはぁ、ええと、とりあえず、軽い感じの毛生えポーションと消化促進ポーション作っとくか。いや、何の役に立つのかは分からないけど。未涼さんが作っといてって言うから。
じゅげーむじゅげーむごこーのすりきれー。ねればねるほど色が変わって、こうやって……うまい!(てーれってれー)
いや、うまいじゃねえんだわ。味見とかしてないし。いや確かに飲みやすい様には苦さはないようにしてあるんだけど。大して甘くもないんだよなあ。もうちょい砂糖とか配合したら甘くなるかな?
さて、そんなこんなでキックオフミーティングの日。未涼さんが何人かの人を集めていた。まずは四季咲のジジイと諾子さん。パトロンになってやるから参加させろってうるさかったんだよね。まあ諾子さんがいるから何とか抑えてくれるんだろうけど。
続いて右記島からは胡蝶さん。諾子さん繋がりで招待させていただいた。というか胡蝶さんから「招待状届いてないんですけど?」なんてにっこりと微笑まれたら「お前の席ねえから」なんて返すことなどできるわけない。
十条寺からは友子さんとガンマさん。今回は美鶴さんは欠席である。お酒出ないって言ったら来ないって。いや、実際はガンマさんが来るから遠慮したらしい。ガンマさんの方が強いんだって。マジかよ。
妖世川からはアナスタシアさんとアンネマリー。二人とも来るって言ってた。それぞれに担当区域が違うから外交の手段として見ておきたいと言ってた。アンネマリーは最近家内での序列が少し上がったらしい。
古森沢からはタケルと凪沙。夫妻でのご登場です。……えっ、また夫妻じゃない? こまけぇこたぁいいんだよ! あと、くりくりって目をした美少女が一人いた。歳の頃は私より少し下くらいだろうか。ラフな格好でホットパンツがよく似合っている。どことなく諾子さんに似てる?
「あなたがお兄ちゃんが言ってたティアさん? ふーん、おっぱい大きいね! 凪姉とどっちが大きいかな?」
初対面なのに馴れ馴れしいな。まあでも凪沙の事を凪姉なんて呼んでるんだからそれなりに親しい人なんだろう。となれば自ずとその正体は判明してくる。
「あなたがサクヤさん?」
「はい! 古森沢サクヤです! お兄ちゃんと凪姉がお世話になってます!」
元気よく右手をあげて答えてくれた。とてもいい子だと思う。なんか私の胸にダイブしてきたし。ダイブ・イントゥ・ザ・バストだよ。
更にはラティーファさん。……だけじゃない!? あら、ファティマさんにナディアさんもいるじゃあないですか。いつの間に来たのか。
「来たわよ、ティア」
「あなたの晴れ舞台ですもの。無理言って出てきたわよ」
なんと、わざわざ私のために来てくれたのか。これは感動な。私は一人一人とハグをして旧交っほど昔でもないけど温めあった。なお、ファハドさんも来てたよ。ハグはしてないけど。ちなみに本当の四人目はまだ決まってないそうで。あの三人ともいつでも戻ってきて良いのよって勧誘するのはやめてくれます? 私、これから企業のためのキックオフミーティングなんで。
鷹月歌からは裕也さんの名代として黒峰さんが。隣にはメアリー嬢がいる。ついでにいえばその流れなのかクロエさんも一緒に居る。特に招待はしてないけど、プランシャール家ならまあ見劣りはしないし。
「皆様、お忙しい中お集まり頂きありがとうございます。これより、ユグドラシルのキックオフミーティングを開催致します!」
司会は保乃さん。人前で喋るのは得意なんだとか。でもこれだけのメンツの中で良く喋れるなと思うよ。わたしは緊張しちゃってダメだろうな。
「ではまず当社代表より皆様に挨拶を。ティアさん。お願いします!」
うぉい! 聞いてないよ! 未涼さんは早く行きなさいとばかりに促してくる。まあ究極な話、みんな私の知り合いみたいなものだから特には緊張とかはないんだけど。嘘です。みんなの前で話すのと一対一で話すのはまた別の話です。とりあえず壇上に上がらないと。落ち着け、落ち着け。
ぎこちない動きをしながらも壇上へ。うわー、みんなの視線が私に集中してるよ。いや、もう見なくていいから!
「え、ええー。ただいまご紹介に当たりましたティアです。ご存知の方ばかりと思いますが改めてよろしくお願いしま」
ゴツン! あ痛っ、マイクに額ぶつけた。おおお、ダメージデカい。衝撃音もデカかった。